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無名サイトのつづき

2016年の振り返りと2017年の目標

昨年の記事の答え合わせというか、振り返りとして。昨年の目標は下記のようなものだった。

・都民農園セコニックに行く →未達
オホーツク海にあざらしを見に行く →達成
・伊東温泉ハトヤホテルもしくはホテルニューアワジに行く →未達
・島に行く →達成
・何らかの方法で本とかを作ってみる →達成

まず都民農園セコニックには相変わらず行っていない。行ったから何があるというわけでもないのはずっと分かっているので何かのついでに行こうと思っているのだが、しかしあの辺に行く用事は一切無いということも段々分かってきた。なものでこれはずっと喉に刺さった小骨のように残り続けるのだと思う、これからも。

オホーツク海にあざらしを見に行くことはわりと早々に達成出来た。海豹界の聖地とも言うべきオホーツクとっかりセンター、通称OTCに訪問することが出来たからである。なおこの時の旅は毎年北見で行われる寒空の下屋外で焼肉を焼いて食べるイベントに参加したりと色々狂っていた。人間ほぼノープランで北海道行ってもなんとかなるものである。

ハトヤかニューアワジは本当に行きたかったのだが、行くことが出来なかった。というか、「昭和の観光ホテル」に行きたいと思っている。別の機会で訪れた指宿いわさきホテル(アフターバーナーが現役稼働するなどマニアの一部で有名なホテル)とかは本当に最高だったので、この辺りを攻めていきたいと考えている。

島に行くという目標については、伊豆大島にノープランで行ったりしたので、次はもう少し離島なんかに足を伸ばしてみたいと考えている。船旅とかもあこがれるところである。ただ、これは休みが長くないと出来ないことなのでなかなか難しくもある。

そして、最後の本を作ることに明け暮れた一年だったと言ってもいいかもしれない。実際実働としては夏と冬のコミケ前後一ヶ月に集中して作業しているのでずっとかかりきりだったというわけでもないのだが、体感的にはやはり今年為したことはこれであったように思える。おかげさまで初参加初完売から自サークル立ち上げ、完売までを経験して多くの得るものがあった。内容的に長く続けられるようなものでもないのでキリのいいところでやめるつもりだが、ともかく第一歩を踏み出せたことは有意義だったと考えている。

これを受けて、2017年の目標は下記の通り設定したいと考えている。

・都民農園セコニックに行く
・昭和の観光ホテルに行く
・本を作ることを軌道に乗せる
・身を落ち着ける

論点としては結局最後である。こればっかりは今のところどうにもならないのだが、まぁ書いておけば何か意識も変わるだろうとそう考えている。まずはそういうところから、なんとかなっていくのだろうと思う。そうすればたぶん幸福にもなれるのだろうと。

2016年買ったカメラとレンズ

毎年の恒例行事。

とはいえ今回は冬コミに出るなどした為、全く進まないことこの上ない。そういうわけで12/31に駆け込み更新というわけである。

……と思ってたのだが、今年実はあんまりカメラとレンズを買ってはいない。例によってよく分からないジャンク類は買い込んでいるのだが、ここで紹介するようなちゃんとした(?)カメラやレンズはほとんど購入していないのである。

というわけで、一時期は前後編にまで分かれていたことすらあるこの企画としては珍しくだいぶシンプルになったが、一方でカメラ購入の病が完治したわけではないということも察して頂けると思う。

SONY RX10
・HASSELBRAD HV + SONY Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM

……はい、こんなもん買ってました。メインとしてはこの程度だが、これだけで例年の数本分くらいのネタ要素が詰まっている。元はと言えばα99IIはもう出ないだろうという読みの末に買ったのだけど結果から言えば大外しというわけで、このせいでα99IIは買えていないという。

果たして来年はどうなるのか。そんなことを考えているところで。

進捗日記

冬コミでも本を出すことにしたので、どういう感じで作業していたかの作業メモを書いてみる。ほぼ週末にしか作業していないので日付は飛び飛び。

11月以前
だいたいテーマは決まって必要な資料を集め出す。
少しずつ書いてみるが、この時期は連続しての執筆はせず適当に書き散らかして後から繋げるブロック工法で少しでも興味の沸いたところから進める方法を採る。もっとも、この方法で作った部分はだいたい捨て石になるのが経験則。

11/23
流石に完成を優先しなければならない時期に来たため内容を絞り直す。
案の定これまで書いてきた部分をだいぶ整理し、一から書き直す。
内容をミノルタαシステムの7の付く機種という骨子がここで完成。
ベタ書きで約13,000文字。α-7000初期仕様の項目まで到達。

11/27
外出の為執筆せず。進捗なし。

11/28
α第一世代の完成(第一章相当)まで到達。
切った貼ったの編集の為文字数14,628。

12/03
α-7000の項がだいたい書き上がる。
続くα-7700iの章を書こうとしたら
祖父の遺品であるα-7700iがよりによってこのタイミングで壊れる。
文字数23,929。

12/04
α-7700iの項に入る。
文字数26,456。

12/05
早くもα-7700iの代わりが見つかり執筆は続く。
そろそろ締め切りがやばくなってくる。
文字数28,506。

12/11
そろそろ本格的に締め切りのことを考え始める。印刷所も決めていない。
前回のオンデマンド印刷はどうも相場より高いような気がする。
文字数34,089。

12/12
多少ゴールが見えないでもないかという気分になってきた。
α-707siの項目終わり。残るはα-7とまとめのページ。
文字数47,794。

12/17
だいたいα-7の章を書き終わる。あとは各部の構成を整えることとする。
文字数57,836。

12/18
本文あとがきまで含めて完成。撮影とレイアウトの作成に移る。
文字数69,227。
これに参考文献が加わるので、トータル文字数としてはたぶん7万字くらい。

12/19
前日から引き続いて作業。
写真撮影、DTPソフトのインストール(このタイミングでかよ)、校正レイアウトを一気に進める。表紙が出来てちょっとテンションが上がる。表紙裏表紙と文章の流し込みまで完了、締切日は近い

12/21
詰めの作業として全体のレイアウトを見ながら文章と写真の配置を仕上げていく。写真はリアルタイムに撮影したり資料からスキャンしたりして貼っていく。このため、写真とレイアウトは交互に行うことになる。正直効率は良くないが、配置によってどのような写真にするか考えられるのでこの方式を採らざるを得ない。隙間が空いた部分には適宜文章を削ったり足したりして調整していくため、やはり作業は続く。
全て終わったところでpdfを出力して入稿、Twitterに告知を行う。とりあえずなんとか締め切りには間に合ったので、あとは印刷がつつがなく終わることを祈るばかりである。

12/22
と思ったら印刷所からデータ不備の連絡が来てあちこち書き直したり設定し直したりレイアウト組み直したりでなんとか間に合わせる。ちなみに使用する印刷所の締切限界の日であった。一日余裕見といて良かった……。
最終的な文字数74,700文字。

前回の同人誌作成記事でも作業日程載せたけど、今回はほぼ執筆に丸一ヶ月でほぼ毎週末の少なくともどちらかを潰し、DTPと写真撮影は2日で終わらせたことになる。次回はもう少し余裕のあるスケジュールを組みたいところ。あとは印刷がどうなるか……。

12/23
入稿完了の連絡が来る。27日発送なので28・29日に引取れないと死ぬ。
その頃には休みなので最悪営業所に引き取りに行くのも考えなくてはいけない。
とはいえ、こんなギリギリの真似が出来るのもオンデマンド印刷様々である。
オフセットで少部数はキツいので小ロットしか見込めないような本はコピー本から始めるのがこれまでのセオリーだったと思うが、それもページがかさむとけっこうつらい。そういうわけでオンデマンドの小ロット印刷はとてもありがたい。
三桁刷ればオフセットなのだろうけど、残念ながらそこまで売れるようなもんでもない。また、同人誌印刷でオフセットかオンデマンドかの論点は納期と値段以外だとトーンが綺麗に出るかどうかだったりするが、これも漫画の人ではないのであまり関係がない。

12/28
本が無事届く。佐川で出荷と聞いた時は(この時期一部の佐川の支店では遅れると聞いたので)どうしようかと思ったが、案外平気だった。日本の物流すごい。
そんなわけで、12/30には現地で本を配っていると思う。

続・なにをいまさらDSC-RX10

さて、DSC-RX10である。いまさらのRX10なのである。

ひょっとしたらベストバランスのコンパクトデジタルカメラなのではないかという予感はしていたので前回は購入後に思いの丈を書き綴ってみたのだが、実を言うと買ってからあんまり使っていなかった。何故かというと、RX10購入の当初目的が旅カメラであることは先に述べた通りだが、夏はコミケで忙しく、その反動としてしばらく何処にも行く気がしなかったことから旅行にも行っていなかったのである。

これではいかんと秋が来てから一念発起してあちこち行ってみると同時に、RX10も各地で使ってみることが出来たので、改めてここに旅カメラとしてのRX10評的なものを書き残しておきたい。

まず、スペックの中途半端さについては前回さんざん書いたのだが、やっぱり何度使っても中途半端である。しかしこれは「意思ある中途半端」であることは先に述べた通りだ。実際旅行に持って行く上で24-200をカバーしていればそうそう撮れないものはないし、広角はスイングパノラマ、望遠はトリミングである程度解決することが出来ることを考えればやはりこれは旅カメラとしてのバランス取りの到達点の一つであろう。

もちろん旅カメラのベストバランスたるスペックはこれ一つだけというわけではなく、他にもいくらでも思い付く。ショートズームながら全域明るいみんな大好きRX100こそが万能カメラであり、もちろん旅にも向く……という論はいつの間にかRX100シリーズが五代目を数えるまでになったという事実を引き合いに出すまでもなく、皆に肯定されるものであろう。

ただ、RX100に比べると、RX10はいわゆる一眼レフらしい形をしているという点が大きく異なる。これはレンズの違いと共に両者のボディサイズの差にも繋がっているのだが、一方で両機の違いは主にレンズ及びパッケージングの違いだけであると言い換えることも出来る。

ではこの中途半端なパッケージングは何処から来たのだろうと考えると、ふと思い浮かぶのがかつての高級コンデジの姿である。デジタル一眼レフがまだアマチュアには高嶺の花だった時代には(アマチュアにとっての)フラッグシップ機は、大柄のブリッジカメラタイプの高級コンデジであった。RX10にはどこかあの匂いがするのである。

ブリッジカメラタイプの高級コンデジは当時のフィルム一眼レフからの乗り換えさえ考慮されていた「本気のコンパクトカメラ」であり「本気のデジタルカメラ」でもあった。ただしこの分野は、やがてデジタル一眼レフ初級機の10万円戦争、そしてそれに連動した20万円クラスの中級機の隆盛により一度は絶滅寸前まで追いやられることになる。

デジタル一眼レフが手の届く存在になって以降、コンパクトデジタルカメラの存在意義のほとんどは小型軽量なカードタイプへ移り、大柄な筐体のカメラは相対的に魅力をなくしていった。そんな中で大柄な筐体に存在意義を持たせる方法の一つが、レンズの高倍率化競争であった。当初は20倍を超えるだけで驚かれたものだが、現代では50倍はおろか80倍超などというズーム比を持つカメラさえ登場している。これらもそうした生き残り策の果てに生まれたものである。

RX10自体はその見た目から、そうした超高倍率カメラと同一視されることもあるが、本質的にはそれより以前の「デジタル一眼レフの代わりに出来る高級コンデジ」であるように思える。

そもそも高級コンパクトや高級コンデジという言葉自体も、その時代によって意味するところは変化している。フィルム時代の高級コンパクトはあくまでもポケットカメラの範囲内で写りや品位を高めたモデルが主流であり、よく言われるように一眼レフのサブで使えるというところがウリであったように思える。そして現在一般に言われる高級コンデジも、この「一眼レフのサブ用途」のカメラであり、そのために大きさ重さでは一眼レフの領域に意図的に踏み込んでいないように思える。

一方で、一昔前の高級コンデジというのは先に述べた通りデジタル一眼レフがあまりにも高価で特殊であった時代にそれらを代替し、写真愛好家の受け皿となるために作られたものである。これらの機種には一眼レフに対する妙な遠慮(?)というものは存在せず、むしろ一眼レフなど不要とばかりにそれ一台で何でも出来ることが存在価値の一つであった。RX10はこのコンセプトが現代に蘇ったと考えれば、この中途半端さにも説明が付くだろう。ただし当時と違って、場合によってはより小型軽量ですらあるミラーレス機の存在がこのカメラの立ち位置を余計にややこしくしてしまっている面もある。

そういうわけで、また長々と説明が入ってしまったが実際の使用感について書いてみよう。まず言えるのは、このカメラあまり電池の持ちがよいとは感じられないが、一方でそれが致命的というほどの弱点にはなっていないという点である。

このカメラの電池はα7シリーズ等にも使われているNP-FW50であり、当然のことながら(?)フルサイズのα7よりは電池の持ちはずっとマシに感じる。もちろんハードに使っていくとそれなりのスピードで減っていくのだが、microUSB端子で充電出来ることがその弱点を補っている。

つまり、モバイルバッテリーであったり、車のシガーソケットから電源を取っておけば多少電池の減りが早くとも事実上なんとかなってしまうわけで、宿や車に戻ればある程度電源を確保出来るシーンが多く、またカメラを電源オンにしたまま休憩なしで撮りまくるシーンの少ない旅行においては、別に専用充電器を持ち歩かなくていい分トータルでは荷物が減ってすらいるわけである。競合機でもUSB充電に対応していなかったり、対応していても専用のUSBケーブルが必要になったりする中でこのスペックは特筆すべきモノであると感じている。

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次に写りだが、必要十分なラインの上のほうを楽々クリアという感じである。これ以上が必要ならば一眼レフやミラーレス機をどうぞというのは理にかなっているし、それらを使うことで得られる結果と引き替えに、荷物の増大は避けることが出来ない。少なくとも24mmから200mmまでをハイクオリティにカバーするというのであれば。

一方で、レンズキャップやフード、そしてその筐体サイズから来る取り回しについてはユーザー側の意識がどちら側にあるかで評価は変化すると思う。「一眼レフよりは小さい」であれば一眼レフ流の取り扱いに不満は出ないだろうし、「うすらデカいコンデジ」であればレンズキャップの取り扱いや筐体サイズには自然と不満を感じることになるであろう。余談だが、別に保有しているGRに関して言えばあのカメラの美点というのはレンズキャップの要らないレンズバリア式だということにあると考えている。つまりGRはコンデジという意識だが、RX10は小さな一眼レフ相当品という意識があるわけだ。もちろんこの辺りの考え方は万人に当てはまるものではないと思っている。あくまでも個人の感想である。ただ、サイズ感についての感想はおそらくこの意識によって大きく変わるだろうことを考えれば、ここに一つこのカメラを評価することの難しさがあると言えるだろう。

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また、これはRXシリーズに共通した美点ではあるが、基本的なインターフェースのほとんどがRX及びαシリーズで共通であり、それらのカメラを使ったことがあれば操作面で迷うことが少ない。もちろんアクセサリーも主要なものは一通り使い回すことが出来る。気が付けばαAマウントから始まりEマウント、そしてRXとフルラインで揃えてしまったが、既存機のユーザーとしてはこういう点は共通であるに超したことはない。

操作面には好みもあると思うが、個人的にはレンズ鏡筒リングでステップズーム、ズームレバーで連続ズームという操作は使っていて納得することが多かった。ある程度焦点距離の感覚を掴んでいる中ではステップズームを多用するが、その一方でテレ端/ワイド端に戻す時にはレンズ鏡筒リングを回し続けるよりもズームレバーの方が手っ取り早かったりする。もちろん微調整にもズームレバーは役に立つ。この二系統の操作が両立することは一体型の特権でもある。

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いわゆる「カメラらしい」形状というのもプラスである。握って、構えて、覗き込んで撮る。一眼レフの代わりとしてはまことに自然である。一方でチルトモニタによっていわゆるコンデジらしい液晶モニターでの撮影ももちろん出来る。そして水準器、連写合成HDR、スイングパノラマといった現代のコンデジにある飛び道具も満載である。その上で望めばα用のストロボだって乗せることが出来る。流石にほとんどやったことはないが。

一方で、ウリの一つであろう絞りリングについては手持ち無沙汰の時に弄ってみる以外、特に必要性を感じてはいない。旅カメラとしてほぼプログラムモードが基本になっているため、この部分は飾りに近いというのが正直なところだ。もちろんこうしたカメラというのはたとえ98%の時間はなんとなくプログラムオートで使っていたとしても、残り2%で素晴らしい被写体に出会ったとき、いかに自分の意図が反映した撮影ができるかがキモである。だからこそ使用頻度は低いと分かっていてもプログラムオンリーではなく撮影意図の反映できるモデルを選ぶのだし、実際にその操作性にもこだわりを見せるわけである。そういう意味では、操作性の面で大きな不満は今のところない。RX100ほどせせこましい印象もなく、至って快適である。

それほどヘビーデューティ仕様ではないとはいえ、防塵防滴を意識したボディは旅カメラの範囲内で天候を気にせず使うことが出来る。小雨程度ならガンガン撮り歩けるし、ずぶ濡れになるようであれば移動どころではなくなるだろう。

また、この項執筆時点で既に五代目を数えているRX100ほどではないとはいえ、RX10も既に三代目まで出ている。RX100系統と違って過去モデルはディスコンにしているようなので今からRX10初代を買うことは出来ないのだが、二代目でフィーチャーされた高速AF&高速読み出しについては旅行じゃ関係ないし、三代目のズーム比の拡大に至っては個人的に気に入っている中途半端なコンセプトの否定でもあるので、特に必要性を感じていない。しかしやれることに関してはもちろん新しいモデルの方が広がっているので、それをどう考えるかで評価は変わるであろう。

総じて感じるのは、RX10は多機能ナイフのような性格のカメラであるということだ。これ一本あればとりあえず何でも出来る。もちろん全方位に100点というわけではないが、その代わりどの要素を取っても合格点は叩き出している。一眼レフとのトレードオフにキッチリと説得力を持たせつつ、独自の立ち位置が完成している。

もしカメラ一台で旅に出るとなれば、手持ちのカメラの中でどちらを持っていくか最後まで迷うのはGRであろう。GRはRX10という多機能ナイフとは対極の位置にあるカメラだ。単焦点大サイズ撮像素子というその個性は、例えて言うならば良く鍛え上げられた脇差しだろうか。捨てるものもあるが、その先に見える切れ味もまた唯一無二である。(ただし、デジタル以降のGRシリーズというのは言うほど単機能のカメラではない。むしろ銀塩GRなどと比べたら何でも出来て目眩がするほどである。これについては気が向いたら述べる)

形もサイズも、もちろんコンセプトも明確に違うこの二台で迷うということは、取りも直さず旅カメラという存在がそもそも不定形であるということを示している。全てを取り込む貪欲さを選ぶか、潔さと取捨選択の先にあるものを掴むか、カメラの選択一つとっても、旅は出発前からすでに始まっているのだ。

そしてきっと、そうして悩み抜いた末に選んだ手段で思い出を残すのも、一つ大きな旅の楽しみのうちなのである。

事後報告 -コミケで本を出しましたの経緯と顛末- [宣伝・当日編]

というわけで、経緯については前回を参照して頂きたいのだが無事原稿は本という形になった。多分語り尽くされていることだとは思うが、自分の書いたものというのが形になって手元に届くというのは、やはり大きな感慨があった。

とはいえ、これまではブログという形式で書き散らかして来た人間が、他人に対して頒布するということはやったことに対する対価を要求することになるわけで、形の上ではプロと同じである。お金を出して買って頂く以上は、やはりそれだけの価値はあると納得してもらいたい。しかし、思いの外印刷費がかさんでしまったのもまた事実である。

なので、価格の決定についてはだいぶ悩んだが、最終的に「印刷原価割れの赤字頒布はしない」という方針に決めた。これは自分が今後も続けていくために必要だと思ったとともに、仮にタダで配ったとしてもタダなら誰もが欲しいというものでもないという理由からである。

さて、今回の本だが基本的に告知はTwitterのみで行った。このサイトを更新してるヒマは正直言ってなかったし、その他の宣伝手段というものも思いつかなかった。何せ内容があまりにも人を選ぶし、そもそもこちらには過去なんの実績もない新参である。であれば、ある程度知り合いを中心に話題になってくれる方がありがたい。今回の目標は「とりあえず知り合いを含めて刷った冊数(ロットの関係で50部)の半分は夏で売り切る(残りは冬で売る)」である。ちなみにこの時点で「この人なら絶対買ってくれる」と思い浮かんでいたのは4-5人といったところである。

宣伝方法についてはいろいろ考えた末で、下記の点について配慮した。

1.「頒布場所の明確化」
2.「内容の明確化」

具体的に気をつけた点としては8月以降はTwitter上のスクリーンネームに「○日目○○」といったサークルスペースの案内を付加した。まあこれは実際に頒布されている方であれば誰でもやっているわけだが、実際に自分でやってみるといよいよこちら側に立てたのかという謎の感慨があった。とりあえずこれで「何処で売るか」伝えるという問題はある程度解決できると言えよう。

次に、「どのような内容か」を伝えることである。これはTwitterに最近になって追加された要素を活用させてもらった。具体的には、RTしてもらうための元ツイートはごく少数に留めるために、まとまった告知を一度作ってある程度RTが収まったら適当なタイミングで自己RT→時間をおいて取り消し→再RTで告知ツイートがバラけるのを防いだ。以前はこの機能(自己RT)がなかったので、一度告知ツイートが流れてしまうと再度同内容でツイートしなおさなければならなかったのである。もちろん画像ツイートを使用し、「表紙」「目次」「サンプルページ」の三枚をpdfが出来た時点で貼りこんでおいた(ただし、本文モノクロなのにこの時点ではカラーで貼ってしまったのでそれは誤解を招いた可能性があり、反省点の一つ)。サンプルページはスケベブックであれば引きの強いページが自ずと決まってくるだろうが、うちの本はそういうもんでもないので、とりあえず主題のページを見開き公開としておいた。また、ツイートの固定機能を使用することで、フォロー関係にない人でもログを掘り返さずに詳細を確認できるよう務めた。

これは買う側の立場での話なのだが、スクリーンネームに頒布場所が入っていてかつRTで「○○出します」というツイートが回ってきたユーザーでも、告知ツイートが固定されていないので後で気になって探してみると該当の告知ツイートが見つけられないということがよくあったのである。見た側がTwitterのお気に入り機能を使えばいいのだろうが、人によってはそれこそ日に数十~数百件fav押しているような人もいるし、お気に入りは検索性も悪いので、告知ツイートへのアクセス性は良いに越したことはないと思われる。

あんまり毎日宣伝ばかりというのも嫌らしいのだが、一方で誰もがタイムラインに張り付いてるわけでもないので可能な限り告知は増やしたい。この辺りのバランスは気を使ったが、開き直って複数回RTすることにした。正直言ってここは答えが出ていない。自分が逆の立場だったらウザいんだろうなーと思いつつもRTボタンを押させてもらった。

なお、幸いなことに頒布前日までの間に、当日買えないということで通販希望を8部頂いた。とはいえ、この8部というのはほぼ前述の「心当たりのある4-5人+α」の方からの依頼であり、逆に言うとここに当日売れないということは他の人にはちっとも売れないんじゃないだろうかという新たな恐怖を感じたというのも正直なところである。結局在庫分10部(8部+本人1部、Azmin氏1部)と当日頒布40部という構成になった。

というわけで、前日までにある程度周知は出来た。あとはいよいよ会場で売るのみである。正直、前日の夜は眠れなかった。遠足前の小学生かよと自分でも可笑しかったのだが、どうにもどのくらい売れるか全く検討も付かないし、また受け入れてもらえるかどうかも分からない。一つ幸いなことがあるとすれば、思ったよりは体積が小さくて部屋に在庫しておいても罪悪感が少なくて済みそうという点くらいである。

そしてやや寝不足のまま、8/14・コミケ三日目当日が来た。Azmin氏は当日朝2時過ぎになっても全く関係ないツイートをしているこちらを見て本当に遅刻せず来るのか不安になったそうだが、そこはなんとか気合で乗り切って無事予定の時刻に新橋駅に集合した。挨拶もそこそこにゆりかもめに乗り込み、向かうは東京国際展示場である。

今回の我々は、基本的に本の判型が小さめということもあり、カメラバッグにまるごと入ることから前日搬入はせず当日朝搬入ということになった。また、それに加えてカメラ関係の本ということもあってカメラを持ち込むことにした。

こちらの本ではZ-1とMZ-Sをフィーチャーしたこともあって、Z-1[限定]にFA☆28-70/2.8という当時のトップモデルの組み合わせ、それとAzmin氏から借りっぱなしになっていたMZ-SとDA40/2.8XSを持ち込んだ。DA40にはフルサイズ(フィルム)でも使えるという意図も込められてはいたが、大部分はカメラバッグの空きスペースの問題からのセレクトである。同様にAzmin氏からも*istとK-30を持ち込んでもらった。あとは個人的にコス撮影やるかもと思って私物のカメラも持ち込んだのだが、結局そのヒマはなく使うことはなかった。すべて電池の入っている状態で展示し、ある程度自由に触ってもらえるようにしておいた。これは本の内容からしても、どうしてもやりたかった展示コンセプトである。

あと、今回Twitterでの宣伝がメインだったということもあって、一応名札を下げておいた。今回は委託ということで間借りする形での出展になっているので、ブースには二人いて、当然面識のない人から見るとこれ書いた奴はどっちだ(誰だ)ということになりそうだからである。というか自分が買いに行くときとかにも売り子さんも含めて複数いるブースだとそう感じていた。ほら全然別の人に内容褒めちぎったりしてなんかこう微妙な空気になるのとかも避けたいじゃない、と。

そんなこんなで。簡単に飾り付けを済ませているとシャッターが開き、いよいよコミケ三日目の開幕である。といっても、三日目というのはいわゆるスケベブックの祭典なわけで、そういうの「ではない」こちらのホールというのは至って平和なものだ。この時間のここだけ見れば、いわゆるコミケのあの人の波というイメージからは少し期待はずれかもしれない。もちろん人通りは絶えないのだが、あのスケベブック島の長蛇の列やコス広場のストロボがもげそうになる人の密度とは全く異なっている。

というわけで、まぁそのうち誰か買いに来てくれるだろうと思っていたら、開場からわずか15分ほどで見に来てくれた人がいた。TLで宣伝RTを見かけて探してきてくれたとのことだった。実際にフィルム時代からのペンタックスユーザーの方で、なんだか泣きそうになりながら最初の一部を手渡したのを今でも覚えている。なんというか、色々報われたような気がしたのである。正直この瞬間に、この後仮に一部も売れなくて○万円の損失が出たとしても、もうそれは些細なことなんじゃないかというのも感じた。冒頭の発言と矛盾しているようだが、どちらも偽らざる本音である。

その後も、考えていたよりもずっとハイペースで、そしてずっとコアな方がブースに来ていただき、一冊、また一冊と買っていただいた。中にはこの本のために来ていただいたと断言して下さる方や、評判を聞いて見に来たと言って下さる方などもいた。正直価格が高めなこともあって、見本紙を見て納得してから買って下さいと繰り返し案内していたにも関わらず、この表紙だけでもう買いますと断言してくれた方もいらっしゃった。半分売れた辺りでもしかしたらの気持ちが芽生えたのだが、その後も気が付くと減っていき、ラスト数部はあれよあれよという間に売れてしまった。結局見本紙として置いといたものさえワケあり扱いでお譲りする事態になってしまった(手書きで「みほん」と書いてしまっていた)。もうまったくもって狐につままれたような気分だが、午後1時30分、見本や隣の方にサンプルとしてお譲りした数部を除いた40部弱が完売してしまったのである。

40部弱の完売というのが誇れる実績なのかどうかというのは、正直に言って分からない。もっと売っているところは、もっと良い物を作っているところはいくらでもある。ただ、何か一つこうやり遂げたという気持ちになったのは確かである。

こうして初めての「作り手側」に回ったコミケは終わった。終わってみればまったくもってあの怒涛の数日間というのはなんだったのだろうかと思う。当初は盆休みがぶった切られて旅行に行けないと嘆いていたことも、今では遠い昔のようである(もっとも、PCトラブルによって貴重な休みが丸々潰れた上に新刊落としかけた件については未だに根に持っている)。

そして現在、次のコミケまで4ヶ月しかないという事実に震えつつ、うっかり巻末に次回予告を書いてしまったことについて頭を抱えているのである。願わくば、またあの場所でお会いしましょう。