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無名サイトのつづき

フィルムカメラはじめました2

前回記事の通り、安かったからという理由でNikon F2を買ってしまった。

考えてみればそういう理由でカメラを買ったのはこれで数台目になる。というか、最近になって買ったカメラを遡ってみるとF2→K-01→GR Digital4→XZ-1と、購入理由はすべて「思ったより安くて手が出せそうだったから」である。それ以外の理由で買ったのはα900(2011年購入)まで遡る。ある意味では一貫した姿勢であると言っていいのではないだろうか。

冗談はさておき、ニコンの梅田サービスセンターでチェックしてもらったところ信じがたい事に機関系好調とのお墨付きをもらった我がF2。となれば試し撮りをしたくなるというのが人情というものであろう。

ただ、モルトがNGなのはわかっているし、そんな中いきなりクソ高いポジを通してもし光線漏れでも起きていたらパーなので、その辺りは慎重に事を進める。

ちなみに、表題はフィルムカメラはじめましたとあるが、実際のところフィルムカメラが初めてかというとそんなことはない。α900を買う前、まだ大学生の頃にはやっぱりジャンクで拾ったα-7000で撮っていたりもした。その頃はまだ100円ショップでDNPセンチュリアが売っていたのでそれを通し、現像も100円ショップの現像のみ100円を活用していた。そうするとしめて200円でネガの完成なので、あとは家の複合機でスキャンすればデジタル化もおしまいである。日本における写真趣味の最底辺そのものであったと今にして思う。

あれから五年以上が経ち、コニカミノルタを引き継いだDNPはあっという間に撤退し、そうかと思えばコダックが潰れる世の中になった。当時でさえはっきりしていたフィルムへの逆風は、よりはっきりしたと言っていいだろう。具体的に言うと、カメラ趣味でない人の記念写真需要がコンパクトデジカメないし携帯で満たされるようになった結果、かつてのDNPセンチュリアのような安フィルムが消滅してしまった。

もちろん、DNPセンチュリアの100円というのは当時にしてもかなり破格だったのでそれと同じレベルを求めると業務用をヤフオクで箱買いとか、期限切れを探すとかになってしまうのだが、正直そこまで撮るというわけでもない。そういうわけで、何件か回った中で一番安かったコダック Profoto XL ISO100-36を5箱購入。5箱も買ってしまったのは、ひとえに購入単価を200円まで下げたかったからである。

というわけで、ニコンのサービスセンターで聞いた通りにフィルムを装填し、いざ初陣。

ちなみにフィルムの装填自体はまだ一回目だが思っていたよりは楽。まぁライカとかニコンFとか見てると儀式っぽいが、裏蓋開くタイプならそうそう面倒でもないというわけで。

とはいえ、フィルム一眼レフでちゃんとフィルムを通した事があるのはα-5000,7000,7700iだけなのでフルマニュアル機はこれが初めて。幸い当時に比べればだいぶカメラにも慣れているので、操作部材の意味さえわかればとりあえず写真を撮るくらいは出来る。

使い始めてすぐにわかるのは、とにかく重たいということ。なにせF2フォトミックASは単体で850g弱、そこに組み合わさるAi135/2sも堂々の860gである。実に1.7kgのヘビーな組み合わせをひたすら手持ちで撮りまくるのは趣味を通り越して一種の修行であるように思えてくる。

この組み合わせで1.5Lのペットボトルより重いのだから、写真を撮るだけだというのにダンベル持ち歩いて運動しているようなものである。手巻き時代のMFカメラにはロマン要素としてのモードラは必需品だが、少なくともこの組み合わせで使っている限りはこれ以上重量増になる要素があるかと思うと意識が遠くなる。もちろん今F2用のまともに動くモードラなんて買ったら機材重量と反比例して急速に財布が軽量化されるのは間違いないので、そういう意味では好ましいことなのかもしれないが。

実際の撮影感であるが、それぞれについて感じたことを述べてみたい。

まずファインダーであるが、これはまぁMF時代のカメラであるし腐ってもF一桁であるので十分に見える。もちろんジャンクなのでゴミとかがあちこちに入ってはいるのだが、そこは元ジャンクということもあり目くじらを立てるつもりもない。レンズもよいので、それなりに快適だった。もちろんまだ現像が上がっていないので実際ピントが合っていたかはわからないのだが。

ただ、スプリットでのピント合わせはやっぱりやりづらい。マット面で合わせるのは頑張れば出来るというレベルなのであまりやりたくない。とはいえ日の丸構図から崩そうとすると必然的にマット面を見ることになり、その場合スプリットはズレるのであんまり精神衛生上よろしくない。使ったレンズがピント激薄間違いなしのスペックなので尚更である。

次に露出だが、正直これが一番辛かった。フォトミックASファインダーは+○-の三点LED式の露出表示なので、まず適正露出に合わせるまでがつらい。どうやらF2では中間シャッターや中間絞りも使えるようなのだが、取り急ぎは一段ずつの変更にとどめていたので、メーターが指す適正露出に合わないこともままあった。たとえばオーバー気味の表示なので一段絞ると適正を飛び越えて今度はアンダー気味の表示に飛んでしまうのだ。おまけに、どの程度ズレているかはわからない。

なおかつ、シャッタースピードは指先一つで回せるような位置ではないので必然的にカメラを持ち変えることになる。AE機であればシャッターはオートにして露出補正オンリーで使うのも実用的だが、今回使ってるのはフルマニュアル機なのでシャッターも絞りも動かさなくてはならない。まぁネガ使ってる時点で露出補正もクソもないのだが……。

つまり、このカメラで写真を撮るための一連の動作を文章に直すとだいたいこのようになる。

撮りたい被写体があったら、ピントをだいたい合わせて構図を決め、ピントを追い込む。絞りをある程度勘で決めたらメーターを覗き込んで、露出の過不足を直すためにいったん構え直してシャッタースピードダイヤルを弄る。たいていこうしているうちにピントリングに触れてしまいピントがずれたりするので改めてファインダーを覗いたら再び露出とピントを合わせ、息を止めてシャッターを押す。落ちない。……巻き上げを忘れていたりする。ファインダーから目を外して巻き上げる……。

……決してつまらなくはない、むしろこれはこれで楽しいのだが、ずっとモヤモヤした気持ちを持ちながらシャッターを切っていた気がする。

正直言って、スローである。確かにスローそのものではあるが、世間で喧伝されるような「ゆっくり自分の心と向かい合ってシャッターを切る喜び」みたいなものは微塵も感じなかった。正直昨今の書籍やwebサイトというのはフィルムカメラを擁護する上でそういった精神論に逃げすぎであると言わざるを得ない。

とはいえ、これがAFAE自動巻き上げであると今度は何故デジカメを使わないのかという話になるので、この辺りがちょうどいい落としどころなのかもしれない。というわけで明日は現像から上がってくる、はず。光線漏れが起きていないことを祈ろう。