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インターネット

無名サイトのつづき

レンズについて[第6回] : MINOLTA AF 100mm F2

どのようなコレクターの世界でも、プレミア品というものがある。

コレクターというのは、他人が持っていないものを欲しがるものなので、こと限定品や色違い、試作品などの特に数の少ないモノに関しては、時々正気を疑うような大枚を叩いたりする。カメラの世界でもそれは同じで、特に舶来モノになると(端から見てるとたいして違わないような)ささいな差異に対して、それこそ目の玉の飛び出るような金額が支払われている。

幸い、自分はいまのところそうした舶来モノのカメラに縁がないが、しかし現在メインで使っているミノルタαシリーズのレンズ中にも、明らかにプレミア値がついているものがいくつか存在する。たとえば以前紹介した28mm F2なんかも当時の定価(62,000円)からすれば、現在でも5万前後で取引されているのだからプレミアと言って良いだろう。

今回はそんなレンズの一つ、AF 100mm F2である。

このレンズが何故プレミアなのかというと、やはり上記の原則通り、単純に数が少ないことが挙げられる。同時期に並行して存在したAF 85mm F1.4やAF 100mm F2.8macroと微妙に被るスペックが災いしたのか、このレンズはNewタイプに更新されることもなく一代限りで消えてしまった。確かにこの二本、どちらも方向性は違うがAマウントを代表する銘玉とあっては、それと比較してこのレンズはなんとも中途半端な立ち位置である。

このレンズは一部では開放F値が同じF2の28mm・35mmと合わせてF2三兄弟と呼ばれたり、同じ100mmの焦点距離を持つ100マクロ・100ソフトと合わせて100mm三兄弟と呼ばれたりする。そしてどれもそれなりのレア度を誇るこの括りの中でも、最もタマ数が少なくて入手が難しいレンズである。

最短1mと特に寄れるわけでもなく、細身ではあるがズッシリと重い鏡筒、それでいて開放F2どまりと、スペックからすると85mmの下位互換にも感じてしまう。このため、当時は85mmを選んだ人の方が多かったのか、このレンズは本当に滅多に市場に出てこない。出てきても当時の定価並の金額を付けている場合がほとんどである。自分も、最初にこのレンズを買い逃してから次に納得できる価格のものを見つけるまでかれこれ三年かかったが、その間に中古屋に出てきたのは片手で数えられるほどである。

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α900 + AF 100mm F2
では、このレンズが単純に数が少ないだけのたいしたことはないレンズかというと、そうとも言えない。マイナーなレンズなのでネット上にもレビューは少ないが、使った人はだいたい褒めているという、知る人ぞ知る的な扱いのレンズなのである。

スペックについてはいつものようにケンコーのサイトを参照なのだが、先述の通り寄れるわけでもなく、また重さについてもいわゆる「ガラスが詰まっている」感じのレンズなので見た目よりも重く感じる。サイズとしては100mmマクロと余り変わらず、フィルター径も同じ55mmである。余談だがフードも100mmマクロのものと全く同じで、シルク印刷のみが異なる。

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三年間探し回ったのはあまり高い金を出したくなかったからなので、格安購入ということもあり外観は若干ご活躍の状態である。ただ、オークション等でこれよりもボロボロの物が似たような値段で落ちているのを見たこともある。これは半年以上前に購入した物だが、ジャンク扱いの保証ナシ品としては異様に強気の値付けであった。足下見やがってという気もしたが、これを逃したらもう手に入らない気もしたので思い切って買ってしまった。現にその後、同等の値段で見かけたことはない。

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αシリーズは全体的に迷光の防止に気を遣っているレンズが多いので、このレンズも後玉にはフレアカッターが設けられており、その内側にもキッチリと植毛処理がされている。このことからも、結構本気のスペックのレンズだったことが窺える。

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ほぼフィルタ径ギリギリまで詰まったレンズはいかにも光をたくさん取り込んでくれそうで、写りにも期待を持たせてくれる。85mm F1.4はフィルタ径72mmの代わりに、太く短いのでそういう意味でもこのレンズとは好対照の存在である。

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ジャンク扱い品なので、若干ホコリが混入したりしているが、手を付けるのが怖くて直してはいない。

さて、さっきから値段の話ばっかりしてきたが、実際の写りはどうなのよということで、今回も作例はFlickrにアップしておいた。実際の写りは確認していただくとしても、やはり巷の評判は本当だった、と思わせるだけの写りである。

思ったよりも寄れないのが辛いところであるが、近接からシャープで、ボケ味も好ましいものである。この時代の製品なので特に謳っていないが、どうやら円形絞り採用のようだ。流石に高輝度の被写体に向けるとパープルフリンジが出たりするが、それは年代を考えると致し方のないところであろうか。

開けてよし絞ってよしの万能中望遠として、開放から安心して使える。85mmとの対比では、こちらの方がよりスナップ向きであるかなと感じた。ポートレートは慣れもあるのだろうが、個人的には85mmを選ぶかな、という感想である。ただし、どちらにどちらを使ったとしても満足の行くカットが上がってくること請け合いだ。

ただ、85/1.4を持っていてどうしても……という程かというと疑問が浮かぶし、スナップでの万能ぶりを活かすのであれば100マクロが強力なライバルになり得る。さらに言えば、同じ100mmでも100ソフトのような飛び道具もないので、やはり消えるべくして消えてしまったレンズなのかもしれない。現に、このレンズの後継レンズは今も現れていないし、同等のスペックを持つ現行品ももはやキヤノンのEF 100mm F2くらいしか存在しない。(フォーサーズの50mm F2やマクロプラナー100mm F2はマクロなので除外。DCニッコール105/2もDC機構付きなので特殊レンズと言って良いだろう)

そう考えると、ある意味悲劇のレンズと言えるのではないだろうか。個人的には買って良かったと思っているのだけど、定価以上の値段を出して買うようなものではないし、85mmや100マクロをもしお持ちであれば、そちらを使いこなすことでカバー出来る領域だと思うのだ……。

写りは大好きなんだけど、人に勧めづらいというのはF2三兄弟共通の悩みである。せめてこ後継スペックの製品でも出て、プレミアが少しでも落ち着いてくれればいいのだが。今のところは望み薄か。