第9回目となるこのシリーズ。今回は、9回目にして初めてのズームレンズを取り上げてみたい。というかこれまで全部単焦点だったのか……。
さて、現代において、ほとんどの人は標準ズーム(50mmを挟んで広角から中望遠までをカバーするズーム)レンズを撮影の主力機材としているのではないだろうか。
そもそも世の中に溢れるコンパクトカメラのほとんどはそうしたズーム域のレンズを採用しているし、一眼レフカメラにおいても最初の一本となるキットレンズは標準ズームである。つまり、標準ズームとは最もメジャーかつ汎用性が高いレンズの一つと言えるだろう。そして、そうした標準ズームの中でも、開放F値が2.8通しのズームは高級品として憧れの存在となっている。
この明るいF2.8通しというスペックは、カメラメーカー及びレンズメーカーでは看板とも言えるスペックであり、各社共に素晴らしいレンズの数々がしのぎを削っているのだが、ことAマウント用の純正レンズとしてはミノルタ時代からソニーに至るまでの間に複数種類存在している。
・α900 + AF ZOOM 28-70mm F2.8 G(フードはノンオリジナル)
このレンズは当時のミノルタの高級レンズシリーズであるGレンズの中で初めての(そして結果としては唯一の)標準ズームであった。なおフードについてはこの記事(1・2)で解説している通り自作のノンオリジナル品である。サービスセンターで有料販売していたという花形フードではない。元のフード形状はそちらの記事に詳しいが、非常に浅くて有効性が疑問視されるような筒型フードである。
また、このサイトの熱心な読者であればご存じかもしれないが、このレンズは一度故障してMOTカメラサービスとかいう修理業者に修理に出したところ未だに修理から返ってきていないし修理状況の問い合わせへの回答もない。現時点で修理開始から2.5年が経過しており問い合わせ回数も10回を超えている。
なのになんでここにあるかというと二本目買い直したからである。
思い出すと気分悪いのでその話は置いといて、スペックはいつものようにケンコーのスペック表参照。
スペック表からもわかる通り、このレンズも他のF2.8通しズームの例に漏れず大きくて重い。このレンズの特徴を簡単に言い表すなら
- 大きい
- 重い
- 寄れない(最短0.85m)
- AF遅い
……の四重苦レンズである。あと標準だとフードしょぼいとか中古で探すとよくコバオチしているとか色々あるのだが、とりあえずこの四点に我慢が出来るかどうかがこのレンズを気に入るかどうかの境界線と言って良いだろう。
金リングが誇らしげなGレンズだけあって金属鏡筒で、表面もレザートーン塗装が施されている。ピントリングは現代の目から見ればやや薄いが、必要十分なものである。
まぁ大きいのにも重いのも画質優先という理由があり、そもそもこのF2.8通しというスペックを選ぶ以上、大きさと重さについてはある程度織り込み済みというユーザーが多いだろう。だいたい現行Vario-Sonnarなんてこれより更に100gも重いのだ。
つまり同等クラスと比較すれば、このレンズが突出して大きくて重いというわけではないのだが、一方でスペックなりの大きさ重さは覚悟しなければならないという話である。
なお、このレンズはズーミング及びピント合わせで鏡筒がほとんど伸びず、重心が変わらない。正確にいうと、ピントでは数mmだけ伸び、ズーミングでは鏡筒の中で前玉ユニットが伸び縮みし、外枠となる鏡筒の長さは変わらない。(昔のトキナーとかがいうところのプロテクター鏡筒のような構造) このような構造はAF ZOOM 17-35mm F3.5G等にも見られ、同世代のGズームは鏡筒が伸びないレンズで揃えられているがそこに何かの意図があったのかは不明である。
また、特徴的なのがフレアカット絞りと呼ばれる移動式かつ可変式の絞りである。任意に動かせる通常の撮影用の絞りとは別に、もう一つの虹彩絞りが仕込まれている。上の写真でもよく見ると通常の絞りの手前側にもう一組絞りがあるのが確認出来るかと思う。
このフレアカット絞りは28mm側で最も絞られた状態になっており、ズーミングで移動しながら径も変化していく。そしてだいたい50mmくらいで見えなくなる。もちろん撮影用の絞りではないので常時それよりも径は大きい。
これにより、フレアの原因になる迷光を効果的にカットしているとのこと。実際のところこのレンズが特別逆光に強いかというとそうとも感じないのだが、凝った仕組みであることは確かである。径が可変する絞りが二組あるレンズというのはこのほかにSTFくらいしか知らない。もっとも、あちらは手動絞りと自動絞りを独立させているのでこちらとは搭載の目的が異なる。