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無名サイトのつづき

レンズについて[第11回] : TAMRON SP AF 14mm F2.8 Aspherical IF

レンズについてシリーズ

ミノルタ時代、αマウントの純正最広角レンズは単焦点であれば20mm(魚眼を入れれば16mmフィッシュアイ)であり、ズームであれば前回紹介した17-35mmのワイド端の17mmであった。この状況はソニーになってもあまり変わらず、相変わらず16-35ZAの16mmが純正最広角である。

ではサードパーティ製レンズまで広げるとどうなるかというと、ここには言わずと知れたSIGMA 12-24mmが輝いており、これがαマウントで手に入る最広角ズームレンズということになる。というか、最近になってキヤノンEF 11-24mm F4L USMが出るまではどのマウントであってもあれが最広角ズームレンズであった。

では、αマウントにおいて社外も含めて「単焦点で」最広角レンズは何か? その答えが、今回取り上げるTAMRON SP AF 14mm F2.8Aspherical [IF]である。(同じ14mm F2.8のスペックはシグマにもあるけど) そういやこのコーナーでサードパーティー取り上げるの初めてだったりする。

超広角、それも単焦点となると、数あるレンズの中でもかなりマニアックな部類に入る。このレンズはタムロンの中では高性能シリーズに属するSPレンズだが、実売価格がどうだったかはともかく、当時のサードパーティーのレンズとしてはかなり強気のスペックと定価だったようだ。

※話は脇道に逸れるが、いつものケンコートキナーコニカミノルタレンズスペックリストといい、タムロンの旧製品情報といい、基本スペックだけでもいいのでweb上に残してくれているメーカーはとてもありがたい。この辺が最悪なのがシグマで、例えばEX銘の有無で光学系や外装すらガラッと変わっているものあるのに、まるで旧製品は忘れたい過去であったかのように一切の情報がない。このため中古でレンズを見かけてもどのような素性か公式な手がかりがweb上にはない。最近のモデルについては少し掲載されるようになったが、少し前はこれすらなかった覚えがある。

もちろんメーカーは新品売ってナンボなので、サポート以外の旧製品情報など必要なしというのもそれはそれで姿勢として有りだとは思うが、個人的には寂しいものである。

さて、例によってこれもハードオフでジャンク棚に並んでいるのを購入したものだが、このレンズに関してはジャンクとしてはそこそこの値段を支払ってしまった。だが、αマウントのこのレンズはその後も年に一度見かけるか見かけないかくらいのタマ数なので、探しても出てこないという意味では買える時に買うのは悪い判断ではなかったかなと思っている。

ちなみに購入時は専用の革製かぶせキャップがなかった。このまま持ち歩くのは怖すぎるし、かといって汎用キャップは使えそうにないのでダメ元でタムロンに問い合わせたところ、なんとまだ在庫があったので結局追加で購入した。かぶせて紐で縛るタイプなので速写性はよくないが仕方がない。

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α900TAMRON SP AF 14mm F2.8Aspherical [IF]

このレンズの見た目の特徴は一目で分かるその突出した前玉である。超広角レンズはどれも一目見ただけで「超広角!」と主張してくるスタイルのものが多いが、このレンズもそうしたレンズの一つだ。フードは超広角レンズとしてはわりと一般的な金属製の花形フードで、鏡筒一体型であり取り外すことは出来ない。これを取り外したらそれこそ前玉を守るものは何もないので、逆に固定式の方がありがたいくらいではある……。

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このせいで当然ながらねじ込み式のフィルターは使用出来ない。レンズ後玉側にシートフィルターのホルダーが付いているのて、なんらかのフィルターが必要であればそこに差し込むようになっている。

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ピントリングは前後スライド式で、AF/MFを瞬時に切り替えられるようになっているが、αマウントの場合はこのポジションにしてもボディ側フォーカスクラッチが切れないのでそれらのクラッチを切るボタンと併用することになる。そうしたキーのあるボディであればMFも操作自体はそこそこ快適だが、このような超広角はAFでバシバシ撮るのが個人的には楽でよいかと思う。AF時ピントリング非回転(フリーになる)は当時の純正レンズ以上であり鏡筒が短いこのレンズには必須の仕様と言えるだろう。

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吸い込まれそうな前玉である。フードが固定式なこともあって拭き掃除はしにくいが、実際恐くてブロワーでホコリを飛ばすくらいしか出来ない。ちなみにこの時期のタムロンレンズのお約束として、距離窓部分に貼ってある銘版シールはこの個体でもやっぱり浮き気味である。あまり耐久性のない粘着剤を使ってしまったようで、同時期の同社マクロレンズなどでも中古サイトで「銘版浮きアリ」といった注釈を見かける。

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さて、このレンズであるがタムロンではもうとっくに生産終了となっているが、実はよく似た光学系のレンズが某社にあり、しかもまだ現役で販売されている。このため、Lightroom等でそのレンズのプロファイルを当てると歪曲なんかが良い具合で補正されるので今回の作例はだいぶそれに頼っている。また、今回の作例についてはやや誇張気味なものも含めて、いつもよりもかなり現像で弄っているものが多い。

なにせデジタル時代以前の超広角である、正直に言って無理をしていると思われる部分は多々ある。ちょっとでも強い光源があればどこかしらにゴーストやフレアが出るし、下手すれば太陽が画面外でもちょっとした反射を拾うことすらある。そしてそれらも今時ちょっとないくらい見事な五角形だったりする。(このレンズはAFレンズとしては今時珍しい五枚羽根絞り) 一昔前の超広角レンズということで、たとえ直射日光がなかったとしても何らかのゴーストは出て当然というくらいの気持ちで付き合うべきだろう。なにせこの画角ではハレ切りしようとしたら指が写ったなんて笑い話も十分あり得る。やればやったでもちろん効果はあるが、神経質になりすぎるといつまで経っても撮れないので程々で諦める気持ちも肝心である。

歪曲はいわゆる陣笠歪曲というやつで、周辺部に直線を持ってくると真ん中からへの字に曲がる。最近の超広角レンズでは後補正のし易さから素直な樽形歪曲を残すのがトレンドのようなので、そこから見ると一種異様な写りである。

だが、これも歪み補正など存在しないフィルムカメラの時代になるべく光学的に歪みを補正した結果だと思えば仕方のない話である。強い樽形歪曲を残すよりも(完全にまっすぐには出来ないとしても)可能な限り補正するとなれば当時としてはこちらの選択が正解であろう。

もちろん周辺の流れもあるし光量も落ちる。流れについては絞ればマシにはなるが全域ガチガチにシャープになるというほどでもない。その辺りの許容範囲は人にもよるだろう。

というわけで、減点法でレンズを採点するのであればケチの付けようはいくらでもある。しかし、このレンズの楽しみはそうした減点法では味わえないところにある。とにかく視覚を超えたパースに驚きながら段々この画角を我が眼としていく、その瞬間にこそこのレンズを使う楽しみがあるのだ。

この使い方からすると、変に逃げ道(?)がない分単焦点の方がモアベターであるし、明るくて寄れるというのもプラスである。思いの外寄れるので前玉の激突に気をつけよう。

なお、超広角レンズ一般の決まり事として、パースがつきやすいので水平垂直およびカメラの向きには普段以上に気を使う必要がある。ピシッとシンメトリー構図を撮りたいのであれば、落ち着いて深呼吸してからでも遅くはないだろう。パースのせいであとから傾き補正をしてもいまいち不自然になったりするのだ。

作例の一部で感じて頂けると思うが、このレンズ青空を撮ると妙に映える。とにかく実際の天気以上にブルー系の色が綺麗なのである。故に空の露出を優先して、暗部はあとからRAWで起こすくらいの使い方もまた一つの手ではないかと思う。超広角というとHDRみたいな勝手なイメージもあるし。

……不自然で違和感のある強烈なパースも、慣れてくるとふとした瞬間に、突然コレで世界中全てを撮れるかのように感じることがある。その瞬間は後から考えたら単なる気のせいかもしれないのだけれど、そうした高揚感というか、これを使いこなしているんだ! という実感が湧く、ハイにさせてくれるレンズなのだ。

たまにはこんなのもいいでしょ?