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無名サイトのつづき

ノウとハウ ~非創作同人誌を作ろう~ その2

前回の記事に引き続いて、非創作の同人誌を作る場合のやり方について。

さて、前回「題材はなんでもいいしニーズなど気にする必要はない」と書いたが、実際のところ、書きたいものがある人はその程度のアドバイスで十分で、後はほっといても題材には困らないものだと思っている。伝わるかはともかく何かを伝えたいというのであればそれで十分であって、あとはその表現の形をSNSに発表するのかブログに書くのかそれとも本という形にするのかというその程度の違いだけである。

では何故本というものがハードルが高く感じられるのかといえば、それは端々にお金が掛かるという点にある。そもそも現物を作る以上は最低でも印刷代やコピー代は必要だし、逆にそれを配る上では買い手には対価として金銭を要求することになるわけである。こういうやりとりに気後れする人は多いと思うし、また売れないことに対するリスクも大いに不安要素として存在すると思われる。

今回は、そういうリスクをゼロにすることは出来ないまでも、なるべく小さいリスクで行う方法も考えつつ実際の制作手順について触れていきたいと思っている。

3.どのようにして書くのか
さて、実際の制作手順として、ともかく内容を書かなくてはならない。ここからは過去の手順について振り返りつつ解説するので、こういう例もあるという程度に参考にして頂けたらと考えている。

さて、コミックマーケットをターゲットイベントにする場合、開催時期は夏(お盆の時期)と冬(年末)である。よって、締め切りというのはここから逆算することになる。後述する入稿方法であれば前日ギリギリまで作業をすることも可能ではあるのだが、ひとまず締め切りとして参加日の1-2週間前には完成原稿を印刷所へ送れるという辺りを目標にすべきであろう。もちろん、早いに越したことはない。

※ちなみに参加申し込みは既に済ませているものとする。直近になってから出られるというものでは決してないのであしからず。この辺りはイベントにもよるので適宜確認して欲しい。一つ言えるのはコミックマーケットの場合当落確認してから内容を考え始めると結構つらいことになる。

ちなみにこれまでの本では、後ろから数えていくとラスト一週間がレイアウトや写真等の作成・撮影、その前の一ヶ月が実際の本文執筆、それ以外の時間は全てテーマに関する資料集めと通読という感じであった。ただしこのスケジュールはカメラについて書くという内容からテスト撮影以外は部屋で完結するが故のスケジュールでもあり、書きたい内容によってスケジュールの構成は様々に変わっていくものだと思う。

実際の本文の執筆にはテキストエディタを当初使用していたが、やはりある程度文章を弄れた方がイメージが掴みやすいことと、バックアップが常時取られているという安心感から、ほとんどの場合GoogleDocumentを使用していた。といっても使っている機能としては先の自動保存以外は文字数カウント機能くらいである。ただ、突然出先で思い付いてスマートフォンから走り書きを追加したり、ちょっとした空き時間に読み返して推敲したり出来るのはやはり便利なものである。

[参考 C91時のスケジュール]
2016年8月(C90終了直後) → 次回テーマ出し
2016年9月~11月 → 参考資料捜索・カメラ収集・テスト撮影(当落通知10月末)
2016年12月 → 執筆開始~入稿・頒布
12月の詳しいスケジュールは当時のメモがあるのでそちらを参照。

なお、書く内容についてはある程度気をつけていることがあるので、それについても簡単に触れておく。この記事では繰り返し「内容は伝えたいことがあるのならばなんでも良い」と書いてきたが、個人的には頒布する以上は他にはないもので楽しんでもらいたいという思いもある。

このため、一応初参加する前の会のコミックマーケット等には一般参加者として見て回ることで、まるっきり被るようなところがないか、他のサークルはどのような部分をウリにしているのかを簡単にリサーチしている。リサーチって言うとなんだか格好が良いが、要するに買い物に行って他の人ってすげーんだなーと打ちのめされに行っただけとも言う。また、現地で直接競合するものではないが潜在的な競合先としては商業出版物も相手である。もちろんこれはこちらが一方的に喧嘩を売る形になる。

こうした中から、制作する本のコアは「プロ・アマ共にあまり手を出していないが、内容としてはフックのあるもの」とし、そういう中で書けそうなものとして「ちょっと古いAFフィルムカメラの本」というテーマが決まったのである。

さて、内容についてはもしイラストや漫画が描けるとかなり取っつきやすくなるのだろうが、それが出来ないので逆にハードにすることにした。パロディ同人誌の有名なフォーマットの一つとして「非常にくだらないことを論文形式で書く」というものがあるが、あれに習ったものである。よって、文体もやや堅めにしてレイアウトなどもとある技術寄りの雑誌のフォーマットに寄せている。

こういう小細工というかパロディが許される雰囲気があるのも、同人誌という形式のよいところなのではないかなと思う。

4.本の形にしよう レイアウト編
というわけで、文章は書き上げたものとする。ここからはいよいよ本の形にする為に、いくつかのステップを踏んでいく。まずはDTP(デスクトップパブリッシング)である。

かみ砕いて言うと、どのような体裁の本を作るかのレイアウト作業である。それこそ写植やアナログの時代であれば切った貼ったの作業だったらしいが、現在ではPCがあればデスクトップ上で完結する。まことに良い時代になったものである。

さて、本の形にするわけなので、レイアウトは多種考えられるが、過去制作した本の場合は元ネタの雑誌のフォーマットに従って、横書き二列でB5サイズというレイアウトを採用している。この辺りはセンスが問われるので、パロディ元があるのであれば徹底して研究してみるというのも一案である。

ここで使用するソフトだが、有料DTPソフトでは「Adobe InDesign」が有名だが、フリーソフトとして「Scribus」があり、また本来は別目的のソフトだが「Adobe Illustrator」や「Microsoft Word」及び「Excel」で組版しているという話も聞いたことがある。現在はほとんどの印刷所でPDF入稿を受け付けている為、最終的にPDF形式での出力さえ出来ればいいので、各種試して使いやすいソフトを選べばいいのではないかと思う。

ちなみに、過去の発行物ではScribusを使用しているが、これはただ単にフリーでDTPソフトがこれしかなかったからである。元は海外ソフトだがインターフェースは日本語化されており、解説サイトも多いので数日も触っていれば簡単なレイアウトは組めるようになるだろう。日本語縦書きが扱えないなどの問題点もあるとのことだが、いまのところ簡単なレイアウトであればこれで不自由はしていない。

使用する写真や図版等は撮影したりスキャンしたりする必要があるので、適宜事前に行っておく。もしカラー等でブツ撮り写真を入れるのであれば、簡易的な撮影ブースくらいは用意しても損はないだろう。

あとは本文を流し込みつつ、各部のバランスを見ながらレイアウトを行っていく。文章に図が付きページ番号が付き書式で飾り付けられていくと、不思議と「本を作っているんだ!」という高揚感が沸いてくるのだから不思議なものである。

電子データが完成したら、ひとまずここでpdf等にしておいて、一通りチェックしておくのをオススメする。PDFに書き出して提出してしまうともう修正は効かないが、この段階でチェックをしておけばまだ間に合う。誤字脱字、レイアウトの崩れ、どれだけ気を付けていても案外出てくるものである。印刷後に地団駄を踏むよりはこの段階でチェックしておくべきだろう。

5.本の形にしよう 印刷orコピー本を作る
電子データが完成したら、いよいよ「リアルな本」としての印刷工程に移る。

さて、ざっくりと言って同人誌にも形態の違いがあり、ここでどちらかを選ぶ必要がある。一つは「コピー本」と「印刷本(かつてはイコールオフセ本だったが今は他もあるのでこう呼ぶことにする)」である。

コピー本はその名の通り「コピー機で印刷した本」である。メリットはその手軽さとコストにある。大量のコピーを作る場合はキンコーズなどに代表される出力サービスを使うことが多いようだが、最悪コンビニのコピー機や自宅のプリンターでも出力出来て、また一冊ずつ作ることから極小ロットの発行部数に対応させることも出来る。

装丁に関しても凝ったモノからスピード勝負のホチキス止めまで自由自在で、この部分で手作り感を生かすことも出来る。そして何よりのメリットが「自分で印刷して製本するのでギリギリまで作業が出来る」ことである。

ただし、印刷品質や見栄えという点ではやはり印刷した本にはかなわない。カラーコピーだとやはりコピー特有の凹凸感のある仕上がりになるし、モノクロコピーでは階調感に制限がある。

ただし、初期投資が安くロットに自由が効くという点では少部数での発行がしやすいため、第一歩としてこちらを選ぶというのはもちろんアリだろう。

印刷本には更に二種類ある。

一つは版を起こすオフセット印刷、もう一つは製版せずにデータから直接印刷するオンデマンド印刷である。いわゆる印刷というのは前者であり、後者は「とても品質の高いコピー本」みたいなものでもあるのだが、その品質はコピー本を遙かに超えオフセットに迫るものも存在する。また、どちらも印刷所での対応になるので製本までがセットである。

この二つの違いだが、ぶっちゃけると印刷品質と小ロット対応の違いで使い分けになる。印刷品質からいうと漫画であればトーンの再現性等に割とはっきりした違いが出るようだが、文字ばっかりの本であればその辺りではあまり差が出ない。製品写真で「コピー本では出ない階調がオンデマンド以上では出る」という感じである。写真集など、印刷品質を重視するというのであればオフセット印刷を検討するというのも一つの手だろう。

次にロットの問題である。オフセット印刷は製版する以上、ある程度の量を生産することに長けている。オンデマンド印刷は逆にオフセットでは高価になりすぎる小ロット印刷での強みがある。ざっくり各所で見積もりを試してみた結果、100~300部以上ならオフセットの価格が安くなるが、逆に言うと100部を切るようだとオンデマンドの方が安くなるようである。頒布するジャンルや本の内容にもよるだろうが、数百部といった売れ行きが期待できず、それでもきちんと印刷され製本された本という形態にこだわるのであればオンデマンド一択であるように思える。

ただ、先に述べたとおりいくらオンデマンドでも10部や20部といったロットではかなり一冊当たりの価格は高くなる。そういう意味では、オンデマンドの適するロット帯というのは案外狭くて原価と頒布価格がそこそこバランスするのは50-100部くらいというのがこれまでの経験則である(もちろん仕様で多少前後する)。

ちなみに、C91での実績は既刊再販、新刊合わせてトータル80部弱といったところである。自分用見本誌と準備会提出分を除いて売り切ることには成功したが、オフセットだと元が取れないというまことに微妙なラインの実売なのである。

先に述べた通り極小ロットは印刷原価が非常に高く付くので下手をすれば売る毎に赤字になってしまうからあまりオススメは出来ない。そういう意味では、50部売り切るつもりか、そして100部以上売り切る事が出来るかどうかで印刷形態はある程度決まってくると言えるだろう。

この辺りをうまく見極めれば、比較的少ない投資額で楽しむことが出来る。原価が安ければ損益分岐点も下がるので、在庫を抱えて純損失みたいな話にもなりづらい。もちろん、売り切るかはともかく損益分岐点は越せる程度に売れるのが前提の話ではあるが。

というわけで、毎回需要が見えない中で何部刷るか決めるというのは非常に難しい問題なのだが、迷ったら複数回で売り切るつもりで多少多めに刷る方が良いかもしれない。というのは、再販希望者が居たとしてもあとから小ロット追加印刷でそれに対応することは非常に難しいのである。下手をすれば既刊なのに新刊より高い値段を付ける羽目になる。

なお、同人誌の値段付けについては、色々議論が分かれるところなのでここではあまり深くは追わないこととする。ただ、基本的には一冊売る度に赤字になるのはあまり健全な姿ではないと考えている。個人的な目安は完売せずともある程度売れれば印刷原価が無理なく回収できる程度の値付けである。

入稿方法は印刷所にもよるが、先に述べた通りだいたいのところでオンデマンドでのpdf入稿を受け付けている。納期はオンデマンドであれば入稿した週には発送してくれるというのが一般的だが、早期割引があったり、入稿翌日には出荷してくれる印刷所があったりとサービス面の違いもある為その辺りはじっくり選んで欲しい。どちらにせよ締め切りは確かに存在するので、その締め切りに十分な余裕を持って間に合わせることを心掛けたい。

……入稿が済んでしまえば、あとは泣いても笑っても手元に本が届き、それをイベントで頒布するのみである。次回は最終回としてイベント参加についての簡単な解説を行うこととする。

ノウとハウ ~非創作同人誌を作ろう~ その1

昨年2016年は初めて同人誌的なものを作って売ったりしたのだけど、一般的に言ってこのような行為はハードルが高いと思われているし、実際やるまではそう思っていた。

実際にやってみるとそうでもなかったのだが、しかし「非漫画」「非創作」の同人誌を作る上では、その第一歩を踏み出そうにも手がかりになる情報があまり多いとは言えないことにも気が付いた。というわけで、少ない経験ではあるが、実際にどのようにして作って売ればいいのかという部分について個人的な考えを含めつつも明らかにしてみたい。もちろんこれが正解というわけではなく、一つのやり方のご紹介である。

0.何故書くのか
と、その前に実際に本を出してみるまでのことについて書いてみたい。ここを見ている人で、「同人誌」という言葉で真っ先に思い浮かぶのはなんだろうか。たいていの人が「R18のいわゆるスケベブック」か、あるいは原義に近い「同好の士が自作を持ち寄って制作する本」辺りを思い浮かべるのではないかと思う。

どちらにせよ、同人誌という言葉には一次・二次問わず「創作」という言葉もついて回る。よって、そうしたクリエイティビティが無ければ作れないものだという認識が根強く存在するように思えるし、実際に長いことそう考えていた。

しかし、コミックマーケットをはじめとした現代の同人誌即売会では、「非創作」の潮流として情報系と呼ばれるジャンルも存在する。これらは書き手の伝えたい情報を書き綴ったもので、「書き手自身がそれが好き」であるが故のウルトラニッチの開拓や、既存の商業出版物では困難と思われるような内容が多数存在し、書き手の情熱が迸る、創作分野とはまた違ったアツさを感じるジャンルである。

こうした「自分の好きなモノの本」を多数目の当たりにし、またその書き手の方とも知り合うことで、同じように本を作ってみたくなったというのがそもそもの執筆の動機であった。

1.何を書くのか
さて、本稿では「非創作」「非漫画」「非18禁」の同人誌を作る場合についての説明である。情報系と呼ばれるそれらは、コミックマーケットのジャンルで言えば「評論・情報」辺りになる。この中で、過去作った本というのはカメラについての本である。コミックマーケットの場合はカメラの場合はメカミリ(メカ・ミリタリー)として厳密に言うと評論・情報とは別の区分けになる。だいたい島にして0.5~1ブロックくらいの勢力(C91実績ではだいたい20サークルくらい)であり、決して規模としては大きくはないが、さりとて同士が全くいないわけでもないという、そのくらいの規模感である。

ただ、写真に関する内容というのは結構バラけており、前回(C91)のコミックマーケットの場合いわゆる人物写真でコスROMなら一日目、メカミリなら二日目、評論として申し込んでいたところは三日目での参加であった。また、それ以外にも各趣味での写真集(旅行や交通、特定地域に関してのものなど)もあるわけで、写真に関すること含めるのであればそれなりの勢力が存在しているといって良いだろう。

というわけで以下の解説は実体験ベースでの話になるので「情報系のうちメカミリの中のカメラ」での話になる。ただまぁざっくりと言えば評論の中に入るので、評論の中の他のジャンルであってもこれから始めようとする人に多少は参考にはなるのではないかと思っている。また、これまでの記述の中で評論・情報というのはあまりにもざっくりとしたジャンル分け過ぎるのではないかと感じるかもしれないが、実際のところは何らかの情報を伝えるものであれば何でもアリの異種格闘技戦なジャンルである。

どのような内容が情報系(評論)かどうかという目安としては、そういう方面に強いComic ZINの通販ページ辺りを見てみれば雰囲気はつかめるのではないかと思う。見れば分かると思うがホントになんでもアリなのである。

しかし、何でもアリが故にそこには書き手の情熱が色濃く反映される。また、商業誌では絶対に成り立たないような内容も数多く含まれており、ある意味では最もエッジの効いたジャンルの一つでもあるのだ。というかそもそも商業出版物にするとしても何に載せるんだよコレみたいなウルトラニッチが存在するし、役に立つものから立たないもの、必要とする読者が何人存在するんだみたいなものまで多数発行されている。だがそれでいいのだ、商業出版物じゃなくて同人誌なんだから。

2.誰に向けて書くのか
というわけで、ジャンル的には何でもアリの中なので、何を書くかはハッキリ言って自由そのものである。逆に言えば、自分が詳しかったり誰かに伝えたかったりする内容があるというのであれば、それについて書くのが一番であろう。予めニーズが存在するかどうかはあまり考えなくてもいいと思う。基本的には書き手の情熱が感じられればそれを面白がる人は一定数はいると考えている。もちろん程度問題はあるが……。

よって、この「誰に向けて書くのか」という問いは何処かにいるであろう同好の士ということになる。コミックマーケットを例に挙げれば、あれだけたくさんの人が来るイベントなので、絶対数はともかくとしても、誰かしらは面白がってくれる人がいるというわけである。

さて、ここで初めて同人誌を作り、発表するにあたって選択肢がある。一つは本稿で述べるような「イベントに合わせ、イベントで販売する」形式。そして他には「実物としての本は作らず、電子データとして作成し、配布もイベントではなく販売サイト等を通じて配布する」形式である。どちらにもメリットとデメリットがあるが、ここでは前者をお薦めする(もちろんこの複合や折衷案もあるが、リアルイベントとリアルな本を作るかという観点において対比することとする)。

イベントのメリット
 ・現物が本という形で完成する
 ・買ってくれる人と直接会うことが出来る
 ・集客力が大きい
 ・同ジャンルの書き手が集約される為、刺激になる
イベントのデメリット
 ・現物の生産コストと在庫リスク
 ・地方在住の場合は交通費も馬鹿にならない
 ・締め切りが存在し、そこまでにはなんとかしないといけない
 ・同ジャンルの書き手が集約される為、嫌が応にも比較される
 ・最低限のコミュニケーション能力は要求される

データ販売のメリット
 ・現物を生産するコストがかからない
 ・故にカラー・高解像度図版等の仕様を投入出来る
  (これらの仕様は小ロット生産だと特にコストに響く)
 ・在庫リスクが存在しない
 ・事実上締め切りが存在しない
 ・販売期間がイベントとは比べものにならないくらい長い
 ・誰ともコミュニケーションを取らなくても作って売れる

データ販売のデメリット
 ・集客力の弱いジャンルだとそもそも目に止まらない
 ・オンライン上では、イベント当日以上にライバルが多い
  (当日その場にいるメンツ以外も同列に並ぶことになる)
 ・個人的な体感ベースだが、データ販売でも売れるのは
  リアルイベントでの実績があるサークルの本という傾向が強く
  イベントに参加せずデータ販売オンリーという形態は宣伝面が弱い

これはあくまでも個人の感想に過ぎないし、いわゆるスケベブックではまた違うのかもしれないが、簡単にまとめるなら「初期投資が要るが販売のハードルは低いリアルイベント」対「初期投資が小さくて済むが販売面での困難が多いデータ販売オンリー」といったところだろうか。

もっとくだけた言い方をすると、イベントというのは一種のお祭りであり、あの場に来る人というのは面白そうなことに対する感度が異様に高くて、かつ財布のヒモは緩みまくってるナチュラルハイの状態である。そういう人に対して、周囲の競合(そして同好の士であり戦友でありライバル)も含めて、同人誌だけが並んでいる中でそれを売れるというのは恵まれた環境だと思える。何故なら、会場を一歩出た瞬間に同じ値段で出来る他の娯楽がライバルとして立ちはだかるのだから。

同人誌というのは、「薄い本」という言葉に代表されるように、個人制作の少量出版物である為分量に比した価格としてはどうしても高めになってしまう。体裁もオフセットフルカラーからコピー折り本まで様々である。ただ、あの場所のあの雰囲気はそれらのマイナスを吹き飛ばすパワーがあると思っている。

そしてもちろん、周囲に同好の士が居るという状況は非常に心強いことである。なもので、よっぽど誰とも会いたくないというのでない限りは一度はイベントに出てみて、そしてあの場の空気を味わってもらいたいと思っている。故にここでは「イベントに来る人に向けて書く」ことをオススメしたい。参加イベントはとりあえずオールジャンルで規模も大きいコミックマーケットを想定して進める。

……と、いうわけで、本稿ではコミックマーケットへの情報系同人誌での参加までの心づもりについて書いてみた。次回はより具体的な内容として、参加申し込み方法や実際の執筆~レイアウト、そして印刷とイベント参加において解説を加えていく予定である。

ちなみにそもそもなんでこんな事を書いているかと言えば、少しでも同好の士が増えて欲しいからである。

具体的に言うと、絵も描けない話も作れない、ただ与えられた何かを消費するだけ……という創作を諦めた、非クリエイティブ側を自認するようなオタクにも、創作でなくとも何か武器があれば作り手側に立てるのだと、そういう思いでこれを書いている。

もちろん情報系も一種のクリエイティビティの発露には違いないのだが、オタクの間でのクリエイティブさというのは「ゼロから何かを作る」創作能力とイコールだという風潮が根強く存在している。しかし、非創作の「自分の書きたいことを調べて、書く」ということもまたオリジナルの行為であり、ひとつのクリエイティブの姿である。そういうわけで、創作を諦めた人にもクリエイティブさを諦めて欲しくはないのである。

そしてその結果、もっとぶっ飛んだ本があの場に並ぶ、そういう未来を願っているのだ。

2016年の振り返りと2017年の目標

昨年の記事の答え合わせというか、振り返りとして。昨年の目標は下記のようなものだった。

・都民農園セコニックに行く →未達
オホーツク海にあざらしを見に行く →達成
・伊東温泉ハトヤホテルもしくはホテルニューアワジに行く →未達
・島に行く →達成
・何らかの方法で本とかを作ってみる →達成

まず都民農園セコニックには相変わらず行っていない。行ったから何があるというわけでもないのはずっと分かっているので何かのついでに行こうと思っているのだが、しかしあの辺に行く用事は一切無いということも段々分かってきた。なものでこれはずっと喉に刺さった小骨のように残り続けるのだと思う、これからも。

オホーツク海にあざらしを見に行くことはわりと早々に達成出来た。海豹界の聖地とも言うべきオホーツクとっかりセンター、通称OTCに訪問することが出来たからである。なおこの時の旅は毎年北見で行われる寒空の下屋外で焼肉を焼いて食べるイベントに参加したりと色々狂っていた。人間ほぼノープランで北海道行ってもなんとかなるものである。

ハトヤかニューアワジは本当に行きたかったのだが、行くことが出来なかった。というか、「昭和の観光ホテル」に行きたいと思っている。別の機会で訪れた指宿いわさきホテル(アフターバーナーが現役稼働するなどマニアの一部で有名なホテル)とかは本当に最高だったので、この辺りを攻めていきたいと考えている。

島に行くという目標については、伊豆大島にノープランで行ったりしたので、次はもう少し離島なんかに足を伸ばしてみたいと考えている。船旅とかもあこがれるところである。ただ、これは休みが長くないと出来ないことなのでなかなか難しくもある。

そして、最後の本を作ることに明け暮れた一年だったと言ってもいいかもしれない。実際実働としては夏と冬のコミケ前後一ヶ月に集中して作業しているのでずっとかかりきりだったというわけでもないのだが、体感的にはやはり今年為したことはこれであったように思える。おかげさまで初参加初完売から自サークル立ち上げ、完売までを経験して多くの得るものがあった。内容的に長く続けられるようなものでもないのでキリのいいところでやめるつもりだが、ともかく第一歩を踏み出せたことは有意義だったと考えている。

これを受けて、2017年の目標は下記の通り設定したいと考えている。

・都民農園セコニックに行く
・昭和の観光ホテルに行く
・本を作ることを軌道に乗せる
・身を落ち着ける

論点としては結局最後である。こればっかりは今のところどうにもならないのだが、まぁ書いておけば何か意識も変わるだろうとそう考えている。まずはそういうところから、なんとかなっていくのだろうと思う。そうすればたぶん幸福にもなれるのだろうと。

2016年買ったカメラとレンズ

毎年の恒例行事。

とはいえ今回は冬コミに出るなどした為、全く進まないことこの上ない。そういうわけで12/31に駆け込み更新というわけである。

……と思ってたのだが、今年実はあんまりカメラとレンズを買ってはいない。例によってよく分からないジャンク類は買い込んでいるのだが、ここで紹介するようなちゃんとした(?)カメラやレンズはほとんど購入していないのである。

というわけで、一時期は前後編にまで分かれていたことすらあるこの企画としては珍しくだいぶシンプルになったが、一方でカメラ購入の病が完治したわけではないということも察して頂けると思う。

SONY RX10
・HASSELBRAD HV + SONY Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM

……はい、こんなもん買ってました。メインとしてはこの程度だが、これだけで例年の数本分くらいのネタ要素が詰まっている。元はと言えばα99IIはもう出ないだろうという読みの末に買ったのだけど結果から言えば大外しというわけで、このせいでα99IIは買えていないという。

果たして来年はどうなるのか。そんなことを考えているところで。

進捗日記

冬コミでも本を出すことにしたので、どういう感じで作業していたかの作業メモを書いてみる。ほぼ週末にしか作業していないので日付は飛び飛び。

11月以前
だいたいテーマは決まって必要な資料を集め出す。
少しずつ書いてみるが、この時期は連続しての執筆はせず適当に書き散らかして後から繋げるブロック工法で少しでも興味の沸いたところから進める方法を採る。もっとも、この方法で作った部分はだいたい捨て石になるのが経験則。

11/23
流石に完成を優先しなければならない時期に来たため内容を絞り直す。
案の定これまで書いてきた部分をだいぶ整理し、一から書き直す。
内容をミノルタαシステムの7の付く機種という骨子がここで完成。
ベタ書きで約13,000文字。α-7000初期仕様の項目まで到達。

11/27
外出の為執筆せず。進捗なし。

11/28
α第一世代の完成(第一章相当)まで到達。
切った貼ったの編集の為文字数14,628。

12/03
α-7000の項がだいたい書き上がる。
続くα-7700iの章を書こうとしたら
祖父の遺品であるα-7700iがよりによってこのタイミングで壊れる。
文字数23,929。

12/04
α-7700iの項に入る。
文字数26,456。

12/05
早くもα-7700iの代わりが見つかり執筆は続く。
そろそろ締め切りがやばくなってくる。
文字数28,506。

12/11
そろそろ本格的に締め切りのことを考え始める。印刷所も決めていない。
前回のオンデマンド印刷はどうも相場より高いような気がする。
文字数34,089。

12/12
多少ゴールが見えないでもないかという気分になってきた。
α-707siの項目終わり。残るはα-7とまとめのページ。
文字数47,794。

12/17
だいたいα-7の章を書き終わる。あとは各部の構成を整えることとする。
文字数57,836。

12/18
本文あとがきまで含めて完成。撮影とレイアウトの作成に移る。
文字数69,227。
これに参考文献が加わるので、トータル文字数としてはたぶん7万字くらい。

12/19
前日から引き続いて作業。
写真撮影、DTPソフトのインストール(このタイミングでかよ)、校正レイアウトを一気に進める。表紙が出来てちょっとテンションが上がる。表紙裏表紙と文章の流し込みまで完了、締切日は近い

12/21
詰めの作業として全体のレイアウトを見ながら文章と写真の配置を仕上げていく。写真はリアルタイムに撮影したり資料からスキャンしたりして貼っていく。このため、写真とレイアウトは交互に行うことになる。正直効率は良くないが、配置によってどのような写真にするか考えられるのでこの方式を採らざるを得ない。隙間が空いた部分には適宜文章を削ったり足したりして調整していくため、やはり作業は続く。
全て終わったところでpdfを出力して入稿、Twitterに告知を行う。とりあえずなんとか締め切りには間に合ったので、あとは印刷がつつがなく終わることを祈るばかりである。

12/22
と思ったら印刷所からデータ不備の連絡が来てあちこち書き直したり設定し直したりレイアウト組み直したりでなんとか間に合わせる。ちなみに使用する印刷所の締切限界の日であった。一日余裕見といて良かった……。
最終的な文字数74,700文字。

前回の同人誌作成記事でも作業日程載せたけど、今回はほぼ執筆に丸一ヶ月でほぼ毎週末の少なくともどちらかを潰し、DTPと写真撮影は2日で終わらせたことになる。次回はもう少し余裕のあるスケジュールを組みたいところ。あとは印刷がどうなるか……。

12/23
入稿完了の連絡が来る。27日発送なので28・29日に引取れないと死ぬ。
その頃には休みなので最悪営業所に引き取りに行くのも考えなくてはいけない。
とはいえ、こんなギリギリの真似が出来るのもオンデマンド印刷様々である。
オフセットで少部数はキツいので小ロットしか見込めないような本はコピー本から始めるのがこれまでのセオリーだったと思うが、それもページがかさむとけっこうつらい。そういうわけでオンデマンドの小ロット印刷はとてもありがたい。
三桁刷ればオフセットなのだろうけど、残念ながらそこまで売れるようなもんでもない。また、同人誌印刷でオフセットかオンデマンドかの論点は納期と値段以外だとトーンが綺麗に出るかどうかだったりするが、これも漫画の人ではないのであまり関係がない。

12/28
本が無事届く。佐川で出荷と聞いた時は(この時期一部の佐川の支店では遅れると聞いたので)どうしようかと思ったが、案外平気だった。日本の物流すごい。
そんなわけで、12/30には現地で本を配っていると思う。