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無名サイトのつづき

雪を見に行く[後編]

というわけで、愛車コルトのために購入したスタッドレス ピレリ ウインタースノーコントロール・セリエデュエについて。装着から今までいろいろなところを走ってきたのでだいぶ特徴をつかめてきた。その上で感想をまとめてみようと思う。

ちなみに、メーカーの説明文を読む限りでは「市街地走行のためのウィンタータイヤ」という位置づけなので、M+S表記が付いているいわゆるスタッドレスではあるものの、どちらかというとオールシーズンタイヤに近い製品のようだ。

年末から今日までのこの数週間、市街地だけに限らず日本全国津々浦々……とまではいかないものの長野の山奥の温泉地や、乗鞍越えをしにいったり、兵庫や福井に雪道を探しに行ったりと様々な道を走破した。また、この三連休はたまたま用事があって帰省していたのだが、ちょうど関東が10年に一度クラスの大雪に見舞われたということもあり、その辺りについても存分にテストすることが出来た。

まずは、肝心の凍結路・積雪路の性能について。

これはコルトが単なるFFということもあって、正直に言えばAWDインプレッサに数シーズン落ちのスタッドレス(ダンロップ DS-2)を着けていた時の方がずっと安定感はあった。というか、インプレッサの場合はあまりハンドルが取られたり滑ったりしないので、雪道ならではの運転感覚というのが感じにくいところがあった。これはインプレッサの前に乗っていたプレオ(こちらもAWD)でも同じ。

それでも、スタッドレスに最低限期待されるグリップ力は兼ね備えているという印象。けっして何処へでも入っていって自由自在に走れるというような性能ではないが、雪道走行のセオリーにさえ気をつければ突然の降雪に見舞われても生きて帰ってこれる、そんなイメージ。

路面状況別に話をすると、ブロックが小さいことともあり新雪は苦手気味だった。特にUターンの時などに駐車場に頭を突っ込んで切り返す時など「この程度で?」と思えるような深さの雪でスタックしかけたり、上り坂などでインフォメーションが希薄になることがよくあった。どちらにしろFFの乗用車で新雪に深入りするとすぐ亀の子になるのであんまり突っ込まない方が良い。

凍結・アイスバーン路面では思っていたよりも遙かにグリップする。乗鞍を越えるルートはほぼ全面的にアイスバーンだったのだが、思いのほかコントロールがしやすく、限界はあるもののかなり安心して走って曲がって止まった。凍結+パウダースノーなどの状況では他のスタッドレスとあまり変わらない感覚で走れると言って良いと思う。

今日の関東のあちこちで見られたような、シャーベット路面はどうかというと、アスファルトがチラホラ見えているような場面では非常に快適に走れる。これはスタッドレスなら当たり前だが、サマータイヤだとけっこうおっかない場面でもある。ただ、発進でホイルスピンすることがたびたびあったのはいただけない。初期グリップ(?)が希薄なようだ。

ちょっと心許なかったのが、山道に多い、新雪路+轍だけシャーベット化しているような路面。正直に言ってこういった路面への耐性は氷雪路を主眼として設計されたスタッドレスに二歩くらい譲るという感想である。たとえば今日は同志みちを抜ける予定だったが、途中で積雪が深くなってきて諦めた。途中で何度かグリップを失って体制を崩したのもそうだが、少しでも登り勾配があると「滑りながら前に進んでいる」という状態になってしまう。タコメーターの動き方とか、アクセルを踏んだ感じからも完全にはグリップしていないのがよくわかった。市街地の発進でも感じたことだが、イマイチ路面の掴みが悪いのがこのタイヤの欠点だと思う。

ただ、丁寧にアクセルを踏めば滑りながらもなんとかグリップしてくれるので、スタックにさえ気を付けばなんとか生還出来る。実際、今日も何度かヒヤリとした場面はあったが、スタックしかけてもほとんどの場合は前進後進を繰り返してやれば脱出出来た。

このように、正直氷雪路の性能としては「一応走れる」という辺りに落ち着くと思う。どんな道も快適に走れるというようなタイヤではないのははっきりしている。では特筆すべきところはないダメタイヤなのかというと、そうでもない。

それはドライ路面での圧倒的なパフォーマンスである。メーカー自身もスピードレンジが高い事をウリにしているが、実際ちょっと具体的に書けないような高速域でもスタッドレスにありがちにグニャグニャした感じがなく、レーンチェンジもサマータイヤ感覚。ロードノイズもそれほど大きくない。峠道で振り回すような事は流石にしていないが、正直サマータイヤと運転感覚が変わらないので、一年中着けっぱなしにしてもいいのではと思わせる。ちなみに燃費もサマータイヤと変わらないどころか、勝っている時すらある。(比較対象のサマータイヤは同サイズのダンロップ エナセーブEC202・いわゆるエコタイヤ)

まとめると、年に一度雪が積もるか積もらないかの地域に住んでいて、かつ降雪地域にも何度か出掛けるという人にとっては最適なタイヤだと思う。

ただ、自分はまさにそういうユーザーだと思っていたのだが、実際は細めの県道や山奥の温泉地なんかの本格的な雪道にも足を伸ばす方なので、そういった場面では不足も見えてくる。そう考えると凍結路はともかく積雪路の性能はちょっと……というのが正直な感想だ。ただしこれは、AWDの車ばかり二台乗り継いだ後に初めて乗るFF車での比較なので、差し引いて考えた方がいいかもしれない。

どちらにしろ、ホイール付きで4万円というのは悪くないコストパフォーマンスだし、ドライの性能がいいのはとても嬉しい。月末には女神湖に行く事になっているので、そこで完全な氷上での性能もチェックしてみたい。以上レビューの少ないタイヤなので、何かの参考になれば。