インターネット

無名サイトのつづき

インターネットは繋がらなくなった

2000年からの10年間、つまり00年代というのは、それまで限られた人が楽しむものだったインターネットを、生活必需品に塗り替えてしまった10年ではないかと思っている。

実際のインターネットの普及はもう少し前から始まっているのだが、こと日本においては90年代末までは一般家庭レベルでは常時接続というものがなく、今では死語となったテレホタイムに繋ぐほかは従量課金で細々と楽しむしかなかった。恵まれている人達はISDNで常時接続を実現していたが、それにしたって精々128kbpsの、今となって信じられないような速度である。もはや神話の時代の話なのではと思えるほどであるが、10年くらい前には確かにそういう時代があった。そういえば11時になるとネットゲームの鯖が重くなったり、人がガラリと入れ替わったりするあの感覚というのを肌で感じた人ももはや少なくなってしまったのかもしれない。今にして思えば当時のインターネット環境は今以上に昼夜逆転の元であった。みんな眠そうにしていたが、目は輝いていたように思える。

常時接続の先駆けとなったYahoo! BB(なお個人的にはそのやり口も含めて大っ嫌いだ)が2001年で、その後はDSLブームとも言える状況から、固定回線は光回線化へと進み、気が付けば現在では、モバイル回線でも二桁Mbpsクラスの速度が当たり前になっている。昔話ばかりするようであるが、かつて夢見た世界がここにあると言っても良いだろう。

そうしたハードウェア的な変化はもちろんわかりやすいのだが、10年以上経ってみて、インターネットのソフト的な部分もずいぶん変質したように思えることにふと気が付いた。

まずブログ(ウェブログ)でない個人サイトというのがだいぶ死滅してしまった。かくいうこのサイトも前身の時代はわざわざhtmlで書いて作っており、死んでもブログなんかにするものかと気張っていたのだが、結局力尽きてしまった。なので今は一回死んだ扱いにして今はブログとしてぬけぬけと更新している。確かに面倒といえば面倒だからこうしたツールに頼るのも手だなと今は考えている。人間変わるもんである。

次に、そうしたブログがある程度市民権を得た割には、やや変質して定着したという点がある。ウェブログという形式が日本に伝わった当初、似たような物扱いだったこれまでの日記サイトに対して、新しいとされていた要素の「トラックバック」と「コメント」は結果としてコメント欄だけが残った。観測範囲が狭いだけかもしれないが、もはやトラックバックを有効に活用しているサイトというのはほとんど見かけない。コメント機能が残ったのは当時のweb日記サイトにも掲示板やらweb拍手やらのフィードバックシステムがあったので馴染みやすかったのかもしれない。

そして、ありとあらゆる出来事はまず検索ページからキーワードを駆使して探るようになった。これは後述の出来事と卵と鶏の関係が成立しそうなので、何故そうなったのかは後に譲る。

そんな中、知人との会話で「そういえば最近、webサイトにリンクやリンク集がなくなった」という話になった。そういわれてみればその通りだ。昔のwebサイトにあったものが今はどんどん消えてなくなっている。掲示板がなくなったのはブログにおけるコメントに集約されたとしても、かつてリンクというのは同好の士や、オススメのサイトへと巡る為の大切な架け橋だったはずなのに、ずいぶん少なくなってしまった。

当のこのサイトも、基本的に他のサイトへのリンクをしていない。個別記事において他サイトさんの記述を参考にしてその記事に個別にリンクすることはあっても、そのサイト自体をリンクするということはしていない。かつての自分のサイトではしていたというのに、である。

どうしてなのかなと自分でも考えてみたのだが、一つ考えられるのは、検索が発展した今となっては、個別の記事でも十分に人が来てくれる可能性があるからではないかと思う。 一方、かつてのwebサイトの集客というのはいかに人の集まるサイトからリンクされているかで半ば決まってしまっていたのだ。 

つまり、極論というのを承知で言えば現代のwebサイトは検索サイトにさえ繋がっていればいい世界になった。

そう考えると、インターネットはハイパーリンクによって相互に繋がりあう構造であり、ワールドワイドウェブの名の通り蜘蛛の巣状であると教わってきたが、それらはもはや昔話で、今となっては現実的にはハブアンドスポークに近いのではないかと考える次第である。ここでいうハブというのは、検索サイトや各種SNSなどのwebサービスが該当するであろう。スポークは放射状に伸びていくつかは繋がっているにしろ、以前のようなメッシュを構成することはなくなってしまった。少なくとも、webサイトという単位では。(もしかしたらこの横糸を代替するのがSNSという存在なのかもしれないがとりあえずは省く)

そんなわけで、いつの間にかインターネットは、少なくともwebサイトは相互に繋がらなくなっていたんだなと思ったのだ。つまり、インターネットは繋がらなくなった。