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無名サイトのつづき

ゆめタウン読みという概念

先週末はマイルガチャ山口宇部空港行きを引き当てたので、せっかくだから萩でも行ってみようかと思ったら旅行前日に(空港へのアクセス線である)京急線の踏切事故があり迂回を余儀なくされたり、道中のドタバタがあったり、そうかと思えば復路の羽田着便が台風により欠航し急遽もう一泊する必要から延長戦が開始されたりと色々あった。これらの出来事はそれはそれで面白かったのだが、それは当記事の本題ではない。本題はもっと別にある。

……山口に都合2日ほどいて目に付いたのは、国道沿いに林立する大型ショッピングモールの数々である。だいたいあの辺りは関東でもお馴染みの巨大モールの代名詞であるイオンモールの他に、地場(四国・中国地方)の雄であるフジのフジグランだとか、同様に中国・九州地盤のイズミのゆめタウンなんかが各々に出店しその覇を競っている。

で、当然国道沿いを流しているとそれらが嫌でも目に付くのだが、特にゆめタウンは見かける度にとても気になって仕方が無かった。それは、店構えでも賑わいぶりでもなくもっと別の理由からである。

 

名前が変なのだ。

 

www.izumi.jp

名前が変というのはどういうことか──ゆめタウンを訪れたり、そもそも見たことのないという地方の人にはちょっとわからないだろう。そういう人は上記のリンクをクリックしてみてほしい。

そこに現れるのは「YOU ME」で「ゆめ」と読ませるロゴマークの存在である。

正直、最近は慣れてきたが、最初に中国地方を訪れて最初にこれを見た時の率直な感想は「気持ち悪っ!」であった。なんというか、到底承服できない悪寒のようなモノをこのロゴと読みには感じたのである。

では何故初見で気持ち悪く感じたのか。その理由は考えてみれば単純である。この読みは英語の「YOU」と「ME」という単語を使用していながら、片方は「ユ(ユー)」という英語読み、そしてもう片方は「メ」というローマ字読みを採用しているのだ。つまり、英語読みとローマ字読みのハイブリッドなのである。通常、このような読み方はしない。だからこそ「気持ち悪い読み方」なのだ。

図にするとこうなる。

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通常、「YOU ME」という文字から予測されるのは英語読みの「ユーミー」もしくはローマ字読みの「ヨウメ」である。図で言うと、水平に読んでいることになる。というか、通常はこの組み合わせ以外に選択肢は存在しない。しかし、ゆめタウンはこの図を斜めに突っ切っているのである。これは通常ではあり得ない読み方である。

しかし、英語ではないが実はこれに近い読み方というものが存在する。国語の時間に習った覚えがある方も多いかもしれないが「重箱読み」及び「湯桶読み」というものがそれである。

これらは音読みと訓読みを取り混ぜた読み方のことで、重箱読みの場合は「重」が音読みで「箱」が訓読みの組み合わせである。

さて、音読みというのは中国から漢字が伝わった際の読み方をベースにしたものであり、いわばルーツは中国語にある。一方の訓読みというのは日本国内で独自に発展したものであり、日本語(和語)といえる。……なので、通常は熟語の読み方というのはルーツ同士の組み合わせ(音・音読みとか訓・訓読み)で表されるのだが、そこから外れるものが重箱読み(音・訓)だったり湯桶読み(訓・音)とされているのだ。

これら重箱・湯桶読みは上記の基本的なルールから外れているということもあり、日本語の規範的な読み方ではないとされているが、一方で現代では十分に定着していることからかことさらに違和感を覚えることは少ない。

さて、こう考えてみると、ゆめタウンの読み方というのは重箱・湯桶読み的な読み方なのではないかと思えてくるのだ。まず、「YOU ME」というのは、英語読み・ローマ字読みどちらも可能である。ただし、日本国内においては(それこそ単語を覚える時でもない限り)既に英語読みがある英単語をわざわざローマ字読みすることは通常ない。それはローマ字表記自体が日本語をアルファベットで表す為のものだからである。そういう意味では、本来これは「ユーミー」が最も自然な読み方であろう。しかし、先に述べた通り、実際には「ユメ」であり、「英語読み+ローマ字読み」になっている。これは漢字の熟語を「中国語読み+和語読み」している重箱読みと実は同じ構造なのではないか、ということである。

先に述べた通り、重箱・湯桶読みというのは現在は慣例上特に問題にならないが、日本語の規範の面から言えば外れた存在である。そりゃそうだ、中国語と日本語のチャンポンなのだから違和感があって当たり前なのだ。そしてそこにある気持ち悪さというものは、きっとゆめタウンに感じる気持ち悪さと同じようなものだったはずである。

そして、重箱・湯桶読みはその特異性故にこうして通常の読みとは独立した特殊な概念として存在している。ならば、それらと同様に「英語二単語以上の語で英語読みとローマ字読みが混在する特異な読み方」のことをここにゆめタウン読み』と定義してもいいのではないかと、そんなことを思うのである。

……問題はゆめタウン以外にそんな変な読み方してる類例があるのかという点なんだけど。