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インターネット

無名サイトのつづき

ハイパー操作系とペンタックスが目指したもの その5(完)

また間隔が開いてしまったが、ハイパー操作系についてのお話。

フィルム時代に開発されたハイパー操作系は、デジタルカメラの時代ではまた別の意味を持つこととなった。それは、電子接点を持たない旧KマウントレンズやM42レンズを使用する際にAEを実現する為の機能として、再度ハイパーマニュアルが実装され、脚光を浴びたことにある。

故にかつてのハイパー操作系と現在のハイパー操作系に求められるものはやや異なっているのだが、それにはペンタックスにおけるKマウントの仕様変更も大きく影響している。

そもそもKマウント自体、かつてはユニバーサルマウントを標榜し、またそれらの路線を撤回したあともプログラムAEやAFへの対応時にマウントそのものは変更せず、電子接点の拡張で発展してきた経緯がある。故に、膨大なMFレンズの資産がそのまま使用出来るという特徴を持っている。

この辺りは、同様な経緯を辿ったニコンFマウントでも同様であるが、あちらが不変のFマウントと持て囃される(割に実際の互換性はそう高くない)のに、実際高い互換性を保ち続けているKマウントを評価する声はそれに比べると少ないのが現状である。確かにM42からKへと一度変更されているのだが……。(流石にアサヒフレックスまで遡る必要はないだろう。なお多段アダプタ装着で使用自体は可能)

さて、このKマウントであるが、細かく見て行くとKだのKAだのKAFだのKAF2から3だの細かなバージョン違いが多数存在するのだが(それでもFマウントの仕様を把握するよりは楽な作業だ)、実はこれらの別以外にも、AF時代の末期から絞りリングの位置情報を伝達するメカが省略されており、その結果として電子接点を持たない旧レンズでは絞りがどの位置にあるのかカメラボディ側からはわからなくなってしまっている。

これが何を意味するかというと、基本的に現代の一眼レフカメラは開放測光なので、レンズ自体の絞りは常時開放であり、絞り値が開放以外に設定されている場合はそこから何段ずれているかを計算して露出を表示している。これにはレンズの開放値はもちろん、現在そこから何段絞る設定になっているかがボディ側からわからなくてはならない。しかしこの連動メカが省略されてしまうと、今の設定絞り値が分からないので結果露出計が動かないのである。

これは同様に絞り値連動爪を捨てたFマウントでも同様で、あちらは絞り値連動爪のない廉価機種でCPUのないMFレンズを使った場合、露出計を作動させないという道を選んだ。高級機種では連動爪が残っている為露出計を使用した撮影が可能である。

一方のペンタックスでは、この問題を解決する方法として既存機能であったハイパーマニュアルが転用されたのである。

旧レンズでハイパーマニュアルを動作させると、設定した絞り値で絞り込み測光が行われ、その測光値でプログラムライン上の適正にセットされるようになった。もちろん、現代のレンズ(DAレンズ等)であれば絞り込み測光は不要なので絞り込まれずに瞬時に適正露出にセットされる。(連動メカ以外の方法で現在の絞り値を伝達している)

これはデジタル一眼レフの普及に伴い(当時は廉価に手に入った事から)過去のレンズが見直されつつあった流れにも乗って、オールドレンズ使用の為の便利な機能としてすっかり受け入れられた。もっとも、絞り込みしっぱなしというわけにもいかないからなのか、グリーンボタン押しっぱなしで常時露出追随というZ-1の頃の挙動に戻ることはなかった。

かくして、Kシリーズの頃にはハイパーマニュアルと言えば誰もが「オールドレンズを快適に使用する為の機能」と認識するに至ったのだ。

そして、そうした認識でK20D等を使っていたが故に、Z-1Pのハイパー操作系のあり方には深い感銘を受けたのである。

確かに現代のハイパーマニュアルはオールドレンズ使用の為の便利機能かもしれないが、そこに至るまでの歴史を紐解けば、それは既存の露出の概念をもう一度見つめ直そうとした真摯な姿勢が浮かんで来る。

ちなみに、こうした露出モードに関する新しい考えを持ち込む姿勢は現代のペンタックスにも息づいてる。最も分かりやすい物では、感度優先モード(Sv)や絞りシャッター両優先(TAv)が挙げられるだろう。

これまでのカメラにおいてはフィルム感度は装填した時点で固定の為、露出というものは絞り値とシャッター速度のシーソー関係であった。しかし、感度が随時変更出来るデジタルでは、シーソーというよりもトライアングルの関係になっている。三すくみのようでもある。

こうした変化に対して、カメラメーカーは保守的というか、現在においても露出決定はあくまでも絞り値やシャッター速度が主で、感度は従であるという考え方が主流であるように思える。そうした姿勢の表れとして、ISOオート自体は用意していてもISOダイヤルを絞りやシャッターダイヤルと同等の扱いで操作の中心に置いたカメラはほとんど存在しないのが実情だ。(そういう意味ではNEX-7の3ダイヤルは画期的だったがあの操作性は一代で消えてしまった)

こうした中でペンタックスは感度を積極的に露出決定に活用しようという考えがあるようで、NEX-7のように独立した操作部材こそ設けないものの、先に述べたような「ダイヤルで感度が変えられる感度優先モード(Sv)」や「絞り値とシャッター速度を両方優先して感度でそれらを保障する絞りシャッター両優先(TAv)」などのモードを近年の機種に実装している。

特に絞りシャッター両優先(TAv)は当初は何に使うのか分からない機能などと言われたものだが、実はこの機能はオールドレンズを使用する際に都合が良いことから、現在は他社ミラーレス機などでは標準的な機能になっている。 つまり絞りは実絞り、シャッターは手ブレしない速度にセットして感度オートで適正露出をキープすればあとはダイヤルや絞りリングに触れずとも適正露出の写真が撮れるのだが、これは見方を変えればまさに絞り値とシャッター速度を両方優先しているAEである。

もっとも、他社では特に名称がなく俗に「Mモード時ISOオート」とか呼ばれているし、少し前の機種だと存在しない事も多い。例えばα900ではMモード時はISOオート不可である。α7系では可能になっているのを確認している。

なお、余談だがこのTAvモード、K-3などの機種ではモードダイヤルに専用ポジションがあり切り替えられるようになっているが、K-01にはモードダイヤルに該当するポジションが存在しない。

このため、てっきり機能自体が存在しないものとばかり思っていたのだが、実際は「モードダイヤルがMモードかつISO設定をオート」にすると画面上のアイコン表示がMからTAvへと切り替わる。確かに理屈上はそういうこと(Mで絞り値とシャッター速度が固定されていて感度がオートなのでTAv)なのだが、存在しないと思っていただけに初めて見たときは衝撃的であった。マニアックすぎるのではないだろうか……。

なお、こうしたペンタックスの取り組みは今や同グループとなったリコーのカメラにも少しずつ組み入れられており、現行のGRではハイパーマニュアルもどき(Mモード時に露出補正キーで適正露出に一発セット)やTAvモード、それに選択式のプログラムラインも実装されている。ハイパーマニュアルもどきについては予めプログラムライン上・絞り優先・シャッター優先のどれに戻すか選べる辺りも本家同様である。なお、残念ながら現行のハイパーマニュアル準拠なので押しっぱなしAE追随はしない。

というわけで、現代でもハイパー操作系自体は形を変えながらも生き続けている。当初は露出の概念を再構築するための機能であったのではないかと推察する次第だが、時代と共にその位置付けは少しずつ変化していったのはこれまでに述べた通りである。

ただ、それと同時に現在においても、新たな露出の概念の構築に最も貪欲なのはペンタックスであるように思える。

カメラに慣れてしまうと、つい絞り優先などの慣れたモードがあればもう他に何も要らないのではみたいなことを考えてしまうのだが、ハイパーマニュアルにおいて露出計を使う事の意義も含めて新しい露出の考え方を提案し、現在も新たな道を模索しているペンタックスには改めて敬意を示したいと思う。 こうした基本的な部分を改めて考え直しているメーカーはそう多くはないのではないかと思うのである。

だからこそ個人的には、押しっぱなしでAE追随のZ-1同等のハイパーマニュアルの復活が必須ではないかと思っている。やはりあれがAEと非AEの融合という意味では完成形であると思っているのだが。