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無名サイトのつづき

OBON(作業)

ゴールデンウィークは出かけないことにして車を弄っていたが、お盆はどうかというとせっかくなので二段構えの戦法を取ることにした。すなわち前半は車を弄って後半に旅行に行くという予定で、しかもせっかくなので離島に行こうという話だったのだが、台風が来ているせいで直前まで確定せず非常に危うい状況となっている。船さえ出れば12-13で山形の飛島に渡航予定である。

で、前半三日はビートにオーディオを付けようと奮戦していたら丸三日かかった、というお話。書き残しておかないと忘れる。

この車、元々新車の時点からDINサイズのデッキが付けられるようにはなっておらず、専用のデッキが必要だった。しかしこれは購入時には付属しておらず、またキーレス設置の為にドアパネルを剥がしたところスピーカーも着いていなかった。

ロングドライブなどを考えると音楽は欲しいので、これまではBluetoothのポータブルスピーカー(Anker Soundcore2)などを使っていたが、そもそもうるさい車なのでポータブルスピーカーでは出力が足りない。というわけで、スピーカーの搭載を目指すことにした。

普通であれば適当なスピーカーとDINのデッキがあればいいのだが、先の通りDINサイズが装着出来ないのでここでちょっと変則的な構成にした。ヘッドユニットレスかつアンプ搭載というものである。今の世の中、基本的には音楽データはスマホから飛ばすので、それであればそこからの再生のみを考えればいい。つまりヘッドユニットは必ずしも必要ではない。しかしスピーカーの駆動のためにアンプは必要というわけだ。

で、構想自体は前からあったのでそのための機材もある程度あたりをつけていた。

まずスピーカーだが、どうせクソ五月蠅い車に使うので最高級品は金の無駄ながら、せっかく着けるんならそれなりのものが欲しい。ただしセパレートは配線が面倒だしネットワークのサイズがデカいと置き場に困るのでコアキシャル一択、あとは予算の範囲内で一番マシそうなのを……という選択基準で中古を探し回った。

アンプは比較的小型サイズで2ch鳴ればいいという感じだったがせっかくなのでそれなりのグレードのものをという条件で探したところジャンクのJBL M1が二台販売されているのを発見した。二台あるとビートの他にスイスポもアンプ化出来る(純正ナビでプリ出力がないのでハイレベルインプットが必要)ということで、今回の条件にはうってつけであった。

問題はスピーカーが山形のアップガレージ、アンプが山形のハードオフの在庫だったことくらいである。

そういうわけで新幹線ガチャで山形駅を引いた時にそれぞれスピーカー(カロッツェリア TS-J1610A)とアンプ(JBL M1×2・ジャンク)を購入して家に送っておいた。旅先でこういうことばっかりするのはやめようね。

しかしこれは実はGW翌週の話であり、買って満足してしまった為にこれまでしばらく放置されていた。作業量を考えると面倒すぎたというのもある。しかし盆は事前の予報では台風襲来で天気が悪いという見込みだった(実際は外れた)こともあり、車庫の屋根の下で出来る作業をしようということでようやく重い腰を上げたのである。

というわけで、ビートに関しては下記のようなシステムを考案した。

ソース:iPhone等Bluetooth機器
↓ Bluetooth接続
トランスポート兼プリアンプ:fiio BTR11
↓ 3.5mm to RCA
アンプ:JBL M1

スピーカー:カロッツェリア TS-J1610A

正直1DINさえあればこんな構成取ってないと思うが、そこはまぁ仕方が無い。しかしここからの作業は三日に渡った。

一日目:そもそもアンプがジャンクなのでテスターとか安定化電源とか引っ張り出してきて動作確認。なんやかんやで本体は二台とも壊れてはいなさそうということが判明したので車体側の作業も開始。アンプのためにバッテリーから直配線を引き回し。このついでに端子台やリレーを使って常時電源やACC電源が取れる配電盤を作成開始。

二日目:配電盤作りがメイン。この甲斐あって車内で電源は潤沢に取れるように。スピーカー側作業として内張を剥がしてスピーカーの取付部を確認し、純正配線が来ていることは確認したが整備書と配線色が違うしコンソールには謎配線(のちオプション用と判明)が来ていたり純正配線が断線してることが判明。結局純正配線を切断・加工することに。

三日目:純正配線は切ったら短すぎてギボシ加工が困難だった為切りっぱなしで使えるコネクタを使用して延長。音質? そこ気にするならドアから引き回すけど二度とやりたくないので……(キーレスの時にやった)。ドアパネルは案の定そのままではスピーカーが着かないので現実逃避がてら小一時間先のアップガレージで円形のバッフルを買ってきて加工。ついでにドアパネルも穴開け。前オーナーの時代から穴開いてるからもういいや。そして夜まで作業して完成。

で、ここまでやってもやれることは車内で音楽がそれなりの音質と音量で聞けるようになっただけという話なのだが、しかし最近までそれすら出来ていなかったことを考えれば非常に感慨深い。少しずつ快適な車両が出来てきている今日この頃である。ただしエアコンの効きが悪いせいで真夏には乗らない方が良い。普通に乗ってるだけで熱中症になりかけるので……。

というわけで、台風は来ているらしいのだがこの後島への渡航が控えている。果たして無事島にたどり着くことは出来るのだろうか。

ゴールデン

GWに出かけると写真が残るのであとから見返せばそのとき何してたか思い出せるのだが、出かけないと写真が残らないのであとで見ても何をしていたのは思い出せなくなったりする。

今年は出かけない方を選んだので自分用のメモ代わりに何したか書き残しておくことにすると、主に車を弄っていた。

一号車の方はスピーカー交換で純正スピーカーからsoundstream SS511へ変更。二号車は後付けの集中ドアロックとキーレスエントリーを装着して、これで各二日の四日かかってしまった。あとはそれぞれの動作確認に各一日ドライブをしたらこれだけで六日が消し飛んでしまったわけで、こんなん長期連休ではなく週末でやれよと思わんでもない。とはいえ長期連休に出かけても混み合うし金は使うしなのでどっちが正しかったのかはなかなか判断が難しいところ。

ただまぁ今になって考えるとGWとかシルバーウィークというのは車中泊が出来るギリの気温(暑さも寒さも)で、盆休みはいまや夜中であっても車中泊では暑くて寝られない可能性大なのでGWにこそ車中泊込みの長距離おでかけをしておいた方が良かったのではないかという説もある。まぁ今更言っても仕方ないんだけど。

で、別にオチとかなくて良いんだけど二号車は集中ドアロックとキーレスエントリーが着いて完成したと思ったら途端にパワーウィンドウスイッチがぶっ壊れて窓が閉まらなくなった。三歩進んで二歩下がっているあたりようやくネオクラシックカーっぽくなってきたなぁとこうして感慨にふけっているところである。おそらくは自走不能になってからが本番だとは思うんだけど。

右シフトの憂鬱

メカニカルキーボードで知られるダイヤテックがいつの間にか閉業していたというニュースが届いた。

pc.watch.impress.co.jp

ダイヤテックといえば今のようにゲーミングキーボードや自作キーボードが流行る前からのメカニカルキーボードの老舗であり、特に一時期はここ以外の選択肢がほぼ皆無だったということもあり、特定の世代のキーボード好きであれば必ずこのメーカーを通って育ってきたと言っても過言ではないメーカーである。

で、古くからのユーザーからすればダイヤテックといえばアルプス互換軸のカチカチ(クリッキー)キーボードのメーカーなのだが、一方で閉業を惜しむSNSの声を見る限りではマジェスタッチ以降のCherry軸のキーボードメーカーとしての姿の方が知られているようだった。

というわけでせっかくの機会(?)なのでかつて使用していたダイヤテックのキーボードも絡めてキーボードとその配列についての悩みを書いておきたい。

さて、ダイヤテックのアルプス互換軸とCherry軸モデルは両方使っていた(FKB-109J-XとFKB-91JP)のだが、特に印象深いのは日本国内でのCherry茶軸採用モデルの嚆矢となったFKB-91JPである。このキーボード、当時はCherry茶軸採用ということで話題にはなったのだが、配列にクセが強いということもあって諸手を挙げて歓迎されたわけでもなかった。

ちなみに接続方法と配列が違う黒軸採用モデルとしてFKB-91JUというのもあったが、何故かこの二つではエンターキー右側キーの配置が異なっており、FKB-91JUではあろうことかエンターキーのすぐ右隣にDeleteキーが置かれていた(FKB-91JPは右上角)ため配列的にはFKB-91JPの方が好みである。一体何故こんな変更をしていたのかは正直謎だ。

そんなわけで、先の通りダイヤテックのCherry軸採用モデルでいえばこのあと一般的な配列で発売されたマジェスタッチの方がずっと有名になってしまったし、以降シリーズが続いたのもマジェスタッチの方だった。

ただ、マジェスタッチ登場以前は茶軸のキーボード自体が非常に珍しく、またCherry純正では日本語配列は望めなかったということもあり貴重であり、しばらく愛用していた。しかしそのうち東プレ Realforceのテンキーレス(91UBKカナなし)が安く手に入ったことで乗り換えてしまった。

その後はだいぶ長いこと91UBKを使っていたのだが、Realforceでもっと横幅の小さいモデルが出たらなーなんて言っていたら最近になって実際にコンパクトモデルのRC1が発売されてしまったので発言の責任を取って(?)購入し、さらにそこから一年も経たないうちに格安中古があったことからKeychron Q1 MAXも購入してしまったので現在はQ1 MAXを主に使用している。みな配列は日本語配列(JIS)である。

さて、キーボード好きというとなんかUS配列を使えて一人前みたいなクソくだらない事を言う連中が多くて内心腹立たしいのだが、実際のところJIS配列にこだわっているのはカナ打ちだからで、US配列だとそもそも打てないキーが出てしまうからである。

ついでに言うとカナなしキーボードもなんかこうカナ打ちの存在を否定されているみたいで嫌い(91JUはカナなし使ってたけど……)なのでいつかカナなしキーボードの対極の存在として英字がなくてカナだけが印字されたキーボードを作ることが密かな夢だったりする。念のため言っておくとカナなしを使っていたことからも分かる通りカナの印字がなくてもタイピングは出来るので、この印字というのは思想の問題であり闘争である。

閑話休題。

これまでのキーボード遍歴を見ても分かる通りコンパクトキーボード(最近の言い方で言うと75%キーボード)が好きなのだが、一方で75%にこだわっているのは使用しているIMEのキーバインド等もあってFnキーを利用した英数/カナの一括変換を多用したり、日本語変換の文節区切りや選択にカーソルを多用する打ち方で慣れてしまったからである。

もしプログラマーのように英数だけをひたすら打ち続けるとか、ゲームのコントローラーとして使うのであればHHKBやゲーミングキーボードに代表されるような60%配列も良いのかもしれないが、日本語を打つ限りはFnキーとカーソルキーは外すことが出来ない。これらを備えた最小サイズというのが即ち75%ということになるわけだ。

しかし、カナ打ちかつ75%を求めるというのはその時点で深い業を背負うことにもなる。それが右シフトキーの扱いである。

カナ打ちでは濁音半濁音や句読点や捨て仮名をシフトキーと同時に入力するのでローマ字入力に比べても圧倒的にシフトキーを多用することになるのだが、独学でタッチタイプを習得したため特に右シフトを多用するようになってしまった。そしてこの右シフト多用というスタイルがいわゆる75%キーボードと大変に相性が悪いのだ。

というのも、75%キーボードというのはいわゆるテンキーレスのカーソル部分を詰め詰めにしたものなのだが、必然的にカーソルとシフトキーがエンターキーの下のスペースを奪い合うことになる。USキーボードであればエンターキーの形状が異なるしそもそもキーが少ないのでそれでも成立させやすいのだが、日本語配列だとここの陣取り合戦のせいでカーソルと右シフトとその周辺のキーには色々な配列が生まれ、しかも定番と呼べるパターンがない。

参考までに、これまでに見聞きしたことがあるのは下記のようなパターンである。

  1. カーソル上キーの右隣に小さい右シフトがあるパターン
    採用例:Realforce RC1等
  2. カーソル上キーの左隣に小さい右シフトがあるパターン(※比較的多い)
    採用例:Keychron Q1 MAX・WOBKEY Rainy75 Pro JIS等
  3. カーソルを横一文字に配列するパターン
    採用例:Keychron K3 Max
  4. フルサイズのシフトとカーソル上キーを合併させたパターン
    採用例:Keychron K2 HE
  5. 右シフトがない(!)パターン
    採用例:CORSAIR K65 PLUS
  6. 「ろ」キーの位置を吹っ飛ばしてフルサイズの右シフトにしたパターン
    採用例:Princeton UP-MKGA75
  7. カーソルを小サイズにして一段下げて大きい右シフトにしたパターン
    採用例:FMV Keyboard X(試作モデル)

……これだけバリエーションがあるという時点で、この問題にはどうやら答えがないというのは理解頂けるのではないだろうか。ちなみに現在の主流(?)は2の内側にシフトがあるパターンのようである。

さて、右シフトキーは他のキーとの同時押しになるので、必然的に小指や薬指でタイプしているのだが、出来ればここのサイズは大きい方が押しやすい。しかしこのように日本語配列でカーソルキーを近付けるとスペースの取り合いになるので、右シフトキーがテンキーレスのようにフルサイズのモデルはほとんどなく、そうしたモデルも何らかの妥協をしている。

ここでようやくダイヤテックのキーボードの話に戻ってくるのだが、実はFKB-91JPこそが、この75%(当時はこの表現はなかった)相当かつ右シフトがフルサイズのキーボードなのである。

f:id:seek_3511:20260425224435j:image上からFILCO FKB-91JP,東プレ Realforce RC1,Keychron Q1 MAX
この三つで比べても右シフトのサイズや配置はバラバラである。

つまり配列の面から言えばFKB-91JPが理想と言えるのだが、この配列はあまりにも特殊すぎてこれ以降配列を引き継いだ後継モデルが発売されることはなかった。だいたい75%かつ日本語配列という時点でウルトラニッチな製品だというのに、さらに右シフトを多用することになるカナ打ちのユーザーがどのくらいいるかといえば、もうこれは1%とかそういうレベルの話だろう。

で、FKB-91JPを久しぶりに引っ張り出して触ってみると、やはりRealforce RC1やKeychron Q1 MAXと比べてしまうとキータッチも各部の作りも一段から二段は落ちる。もちろん時代も当時の定価も異なり、そもそもこの二つは2026年現在の日本語75%キーボードとしてはトップクラスの二枚であるから比べること自体にも無理があるのだが、配列しては理想なだけに惜しい。

筐体はペラペラだし古いせいか茶軸のキースイッチも引っかかりを感じる。もっともこれはここ数年静電容量無接点のRealforceやリニア軸のQ1 MAXばかり使っていたからかもしれない。かつて主流だった黒軸や茶軸なども今となっては押下圧が高すぎるとしてあまり人気がないらしいし。というか、ゲーミングという大義名分があるとはいえ今はキースイッチ一つとっても何十という種類があるのだからとんでもない時代である。かつてはアルプス互換軸しかなかったし、その時代のメカニカルの代表格こそがダイヤテックだったのだから。そういう意味でも時代を感じずにはいられなかった。

……もうこうなると理想の配列を実現するには自作キーボードとかでフルスクラッチをやるしかないのだが、一方で世の中の自作キーボードでしか解決出来ない問題と比べるとこのシフトキーの問題というのはあまりにもピンポイント過ぎる。こんなことを解決する為にあれこれやるのはどう考えてもコスパもタイパも最悪である。

結局Q1 MAXなりRC1に慣れるしかないのだがやはりこれを打っていてもシフトの小ささは感じてしまう。そしてただでさえ望み薄だったFKB-91JPの後継機というのはダイヤテックの閉業で完全に望みが絶たれたのだから、この悩みはもう業だと思って抱え続けるしかないのだろう。

AIはドリルじゃなくて穴をくれた

表題の通り。

よくある比喩として顧客が本当に求めているものはドリルではなくて穴だとかいう小咄的なアレがあるが、実際のところ個人的にはドリルを撫で回したりドリルの性能について小一時間喋っていられる側の人間だと思っていたのでこの手の話についてはなんでぇ穴なんてそんな当たり前のこと言われても面白くねぇやと思っていた。少なくとも最近までは。

が、そういうスタンスの人間でさえ実際必要なのドリルではなくて穴だったわと感じた出来事があったので、今回はその話をしようと思う。

時に世は空前のAI時代である。LLMが使い物になるようになって数年が経ち――あるいは数年しか経っておらず――未だにIT強者共のチキンレースさながらのAI大盤振る舞いは続いている。この文を何年か後に見てマジかよそんな時代あったのかよとなるのかそれともあんなの可愛いもんだったなと思うのかはわからないが、ともかく現在は損して得取れというか、AI業界のプレーヤーは勝者総取りを狙って札束でぶん殴り合っているので、ユーザーも内心いつまでやるんだよコレとは思いつつさまざまな恩恵は受けて今に至っている。

まぁ実際それらAI利用がクリエイティブだったり倫理的に正しい方向に向けられているかどうかとか、これで消費されるGPUやメモリや電力どうすんだよとか、法律上の位置付けだの本当にあらゆるところにいくらでも問題はあるが、ともかく一時期よりはAIというものは実用的であり、かつ手の届くところにある、というのは間違いないだろう。

そんなわけで、少し前にお試し割のようなものがあったのでこちらでもGoogleのGeminiを年間プランで契約してみた。別にどこでも良かったのだが、たまたまGeminiがセールしていたのでそうなった。ちなみにどのAIモデルを使用しているかというのは、おそらく本記事の本筋にはあまり影響しないと思われる。

さて、少し前にプロ驚き屋(フリガナ:オドロキヤー)の皆様がAI検索はすごい、AIが検索市場を壊滅させるかもしれないみたいなことを言っていた覚えがあるが正直微塵もピンとこなかった。実際Gemini有料プランの契約前には無料で試せる範囲でいくつかのAI検索を試してみたが、少なくともその時点では単にどっかからか引っ張ってきた真偽不明の情報をごちゃ混ぜにして盛り付けてチャット風味で包んで乱雑に出しただけというのがAI検索の実態のように見えた。こんなん使えんわというか、既存の検索に対してのアドバンテージって一体何? というのが正直な感想だったのである。

実際、味噌もクソもAIのチャット文に加工されてしまうので参考にしているのが信頼できるソースなのかも怪しいし、仮に疑わしい内容だったとしてそれを突っ込んでもAIが誤りを認めないことすらある。だいたい、情報の真偽というのは何処のサイトにそれが書かれていたかも重要であったのだが、自分で検索先を見に行くのとは違ってAI検索ではそこを全部塗りつぶしてしまうのだから、むしろ退化であるとすら感じた。それどころか、自分で検索先を見に行った時ですら検索結果の一等地をAI検索とやらが占拠していて、正直邪魔で仕方がなかった。

……というわけでAI検索とかにはあまり期待をしておらず、Geminiを契約したのはどちらかというと趣味の調べ物のデータ整理のためであった。とはいえ、有料プランの契約をしたからには元を取らなければならないという貧乏根性もあり、MOTTAINAI精神でチャット窓をしばらく触っていると、どうもこのAIというやつは有力と無料で見た目が一緒なのに性能が違うというか、無料で試せるようなモデルはだいぶ性能が絞られているのではないか……ということがわかってきた。

無料の範囲で試してるうちはこんなもんかという評価になってしまったのだが、有料モデルであればしばらく質問を投げているうちになかなか使えるじゃんとある程度好意的に感じるようになってきた。あの慣れ慣れしいAI口調というのは相変わらず好きになれないが、それも有料モデルであればある程度ルール化することで抑制出来る。

そして話は再度AI検索の話に戻り、さらに冒頭の結論に至る。必要だったのはドリルではなくて穴だったと。

どういう意味かというと、こうした有料モデルを介したチャット形式によるAI検索というのは究極的には自分専用の穴を掘ってくれる存在だと気付いたのである。いや、使っている心情としては"AI検索ですらない"かもしれない。

たとえばこういう話があったとしよう。とある周辺機器を使っていてトラブルが起きたので解決したい……と。よくあるケースで、これまでであればまずは周辺機器の型番を検索窓に打ち込んで、そこからヘルプページに飛んで公式のFAQを確認するだろうか。それでも解決策が見つからなければ、さらに検索して他の似たトラブルがないか探して、その通りに試してみる。もちろん環境が違う場合もあるのでそれで直るかは分からないが、とにかくいくつか検索で出たものを繰り返して、時にはそれらを組み合わせて試したりなんかして、試行錯誤しているうちにいずれ正解にたどり着くことになる。

……とまぁ、こういうのがこれまでの典型的なトラブルシュートの方法であった。ドリルと穴のたとえで言えば、売り場に案内してもらって、そこに色々なドリルはあるのであとは自分で試してねという感じだろうか。もちろんドリルによって性能も異なるし、使い手の腕も試される。なんなら一旦穴については置いといてドリルについて小一時間語ることだって出来るだろう。

で、同じことをチャットAIにやらせるとどうなるか。まずある程度公式サイトに書いてあるような事象と共に解決策が列挙される。そしてそれでも直らなければ、例えば詰まっている時点でのスクリーンショットやエラーメッセージを貼り付ければ、 AIはそれを解釈して何処かの設定が間違っていないか、あるいは参考になる他の何かと環境が違うかどうかなどを汲み取って、こちらの環境に合わせてカスタマイズして回答してくれる(機能次第ではそのままAI側で設定までしてくれる。こうなると穴まで開けてくれると言える)。

つまり検索は目的ではなく手段だったのだ。

これに気付いた途端、今までのように売り場を案内してもらって、一つ一つドリルを手に取っていたのが途端に馬鹿らしくなってきた。つまり本当に解決したいのはトラブルであり穴を開けることであって、そのためにドリルの扱いを練習したり、あるいはドリルの種類に詳しくなったりするというのは全てストレスの要因だったのではないかというわけである。検索をし、検索先を読み、それを自分の環境と見比べ、対比した上で解決のための策を練る――そういう部分というのはやっぱり負荷だったし、言ってみれば下拵えでしかない。

そしてここでもう一つ大事な命題に至る。さっきまでソースの正確性がどうだという話をしていたのだが、ふと気付いてみると、求めていた穴が綺麗に開くのであればそれがどのようなドリルによるものであっても実際のところそれは大きな問題ではないということである。

つまり、世の中にはソースを気にすべきところとそうでないところがあって、気にすべきところはトコトン追求すべきなのかもしれないが、そうでないものに対してはソースはともかくだいたい80点以上の回答が返ってきさえすればよい。先の言い方をすれば満足出来る穴が開けばそれでいい。そういう意味では現在のAIの性能であればかなりの確率で80点以上の回答を返してくるのだから、つまるところそれでいいじゃない、一体何が不満なの? という話になるわけである。

さらに言えば、ユーザー側がよく知っていることに関しては仮にAIが間違いを言っていても指摘出来るし、それを指摘することによってユーザーも「AIもまだまだだな」と思うことになる。しかしよく知らないことについては、そもそも審美眼やセンサーのようなものが何処まで機能するかも怪しい。結局のところ検索であっても上位に表示されたそれらしいページのいくつかをつまみ食いしてそれでわかった気になっておしまいになるのが関の山だし、仮にそうした検索結果の何処かが間違っていたとしても知らないものの間違いなどそもそも指摘のしようがない。それであればむしろ問い詰めたり質問したり出来るAIに聞いた方がナンボかマシという可能性も大いにある。

こういう結論に至った結果、内心検索という概念は半分くらいは溶けてなくなってしまった。かつては問題解決のために検索しなければならなかったが、検索以外で問題解決が出来るのであればわざわざ検索でやる必要もないとそう感じるまでになってしまった。こうなると知りたいことがチャット窓ひとつで完結してしまうことも増えてきたのだが、とはいえAIがインターネットの膨大な知見を食べて育ったことを考えると、その源泉であるインターネットに人が目を向けなくなり、チャット窓に閉じ込めるようになってしまうというやり方もまたいかがなものかとは思う。

とはいえ、こうした問いもこの時代ならではのものになる可能性はある。そういう意味では今回の記事というのは2026年3月現在の感想を封止するためのものである。そしてそれこそがインターネットという場所に何かを書き残す意義ではないかと思っている。まぁ石碑みたいなもんだと思えばいい。

かつて確かに存在した、広大な世界を縦横無尽に結び付けていたハイパーリンクを使いこなすネットサーフィンの時代はどうやら終わってしまったみたいだし、気が付けば世界はチャット窓ひとつで済むほどに縮んでしまったようだ。そこにはやはり寂しさがあるし憂いもある。

だけど手元には立派な穴が開いているのだから、きっとそれで十分なのだ。