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無名サイトのつづき

ハードコア温泉道 新潟赤湯温泉編

まさかのハードコア温泉道の続編である。前回はこちら(なんと2015年の記事である)。

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前回は海岸線にポツンと存在する無人の野湯が舞台であり、これをもってハードコア温泉であると考え、そのように題した。では今回向かった赤湯温泉というのはどの辺りがハードコア温泉なのか。

それは、この温泉が奥深い山の中にあり、温泉に入る為には徒歩で数時間の山登りをしなくてはならないことと、そういった立地もありGW~秋口までしか営業していないことが理由である。このハードルの高さはまさしくハードコア温泉と言って良いだろう。

さて、前回は飛行機のマイルの期限切れが旅行の切っ掛けだったが、今回も似たような切っ掛けであった。JR東日本のキャンペーンで新幹線が通常の半分程度のポイントで乗れるということで、なんとなく新幹線で何処かに行ってみようと思ったのがそもそもの始まりである。

しかし、ここでふと考えた。いくら往復の新幹線が格安でもその先からレンタカーを借りるようでは結局のところお得感は少ない。というわけで、なるべく車を使わない目的地はないか考え、その結果として辿り着いたのが赤湯温泉であった。実を言うと以前から存在は知っており「いつか行ってみたいリスト」にも入っていたのだが、そのあまりのアクセスの悪さにこれまで真剣に検討されることはなかったのだ。

というわけで、早速新幹線のキャンペーン期間中の週末である6/11~12の一泊にて新幹線の手配と宿への予約を済ませた。宿とはいうものの、実際のところは(温泉のある)山小屋であるらしく、予約時の諸注意も完全に登山者に対するそれであった。ちなみにこの時点では、うかつにも梅雨入りのことは全く考えていなかった。

そうこうしているうちに前日となり(この間に無事新潟も梅雨入りし)、曇りのち雨の予報に怯えながら大慌てで深夜までクローゼットを引っかき回しては雨具を揃え、なんとか荷物をまとめ上げるとほぼ始発の新幹線の為に床に着いた。

──そして、寝過ごした。

早速の失態である。ただ新幹線なので特典乗車券とはいえ後続便の自由席であれば乗車の権利自体は失われていない。当初起きるはずだった時間からは2時間程度ズレていたが、今からでも電車に飛び乗れば日没前に宿には着けるタイミングであった。ほんの少しリスキーだが、かといってこの機を逃しては次の機会など訪れそうにない。覚悟を決めると電車に飛び乗った。

行きの新幹線は東京から出発なので、実のところ乗り逃しての自由席でもなんら問題はない。コンセントも付いているのでそれで十分である。

かくして、越後湯沢まで新幹線、その先はバスに揺られること40分弱で(当初の予定から遅れること2時間程度ではあるが)元橋バス停、更には登山口へと到達した。いざここから4時間の旅路である。

……で、歩いている最中は4時間もあるため様々なことを考えていたのだが、実際のところこうして帰ってきてみると何考えて歩いてたのかあんまり覚えていない。辛く厳しい徒歩行だったのは確かなのだが。

さて、こうして登山してまで温泉に行っていると傍目にはアウトドア大好きな人みたいに見えてしまうかもしれないが、実際のところアウトドアは嫌いである。そもそも登山やソロキャンプといったアウトドア趣味には限界独身男性の趣味としてのひとつの到達点みたいな印象があり、安易にそこに向かうことについてはずっと抗い続けている。

※もちろん、周囲の知り合いを見る限りアウトドア好きが結婚できない限界独身男性ばかりというわけではない。むしろちゃんと結婚している者も多い。ただ、限界独身男性というマイナスステータス持ちが、仲間や友人といった他人の存在を前提とせず、ただ一人だけであっても楽しむことが可能という点において、アウトドアは他の趣味よりも限界独身男性との親和性が高いと言えるのは間違いないだろう。

登山趣味の人は登山がしたいから山に登るのだろうが、別にこちらは山に登りたいわけではない。ただちょっと変わった温泉に入りたい──それだけなのに、道路がないから歩いて行くのである。登山はあくまでも結果であってそれが目的ではない。それだけなのだ。

……ただし、先に述べた通り道路がなく行きづらいからこそ目的地に選んだわけで、この考えは循環参照を起こしているのかもしれない。

ちなみに道中で心配だった雨は木々が遮る為か意外にも気にならずに済んだ。むしろ汗かきなので流れ落ちる汗の方がひたすらに鬱陶しかった。あとは登山道もぬかるんでいたり滑りやすかったり、途中崩れた箇所や倒木等も存在したが、なんとか淡々と歩き続けた。

そういえば、林道のゲートを越えてからもしばらくは林道が続いていたのだが、徒歩を前提とした道路と自動車通行を前提とした林道の規格の違いには改めて驚かされた。当たり前だが自動車が通れるくらいに幅があり、自動車が通れるくらいにフラットなのだから未舗装路といえども登山道との整備の差は歴然であり、歩きやすさも格段に違う。

前回の本格的な登山(的なもの)はGOTOの補助があった頃に一念発起して屋久島に行き、縄文杉を見に行った時まで遡るのだが、あれもまた距離自体は長いものの林鉄という高低差に敏感な路盤が元となった区間が大半を占めるため、その区間は比較的快適に踏破することが出来たのを思い出した。

一方の登山道となると、人間の機動力を過大に見積もっているためとても苦手である。そもそもそういうのを踏破出来る連中が来る前提になっているのだし。

……まぁ、こうした苦労もおそらく人並みに登山を嗜める人からすれば何を言ってるんだコイツはと思われるんだろうなと思いつつ、息を切らせながら歩き続けること四時間弱、なんとかほぼコースタイム通りの15時前に赤湯温泉に到着することが出来た。当たり前だが、周りの客はみんな登山趣味者っぽい雰囲気である。


左側が母屋で右側が別館。今回は母屋泊

見ての通り山小屋であり、川の側に張り付くように建っている。この川沿いに三つの露天風呂がある。ちなみに宿泊費は一泊二食付きで9,000円。

早速汗を流しに温泉に浸かる。

温泉は先程通ってきた登山道の脇に点在しており、一旦宿に荷物を置いてから向かうことになる。源泉は三種類あるが時間で入れ替え制となっている。先に入った玉子の湯・薬師の湯については硫黄の匂いの強い茶褐色の温泉であり、いかにも温泉に来たという感じを味わえる。特にメインの露天風呂である玉子の湯はすぐ側を清流が流れていて、川の音を聞きながらの入浴となる。ここまでに十分すぎるくらいに疲れていたということもあり、小一時間ほどゆっくりと浸かって疲れを癒やすこととした。

……というか、ここまで来るとそれくらいしかすることがない(※もちろん携帯電話は通じない。また電気も来ておらず館内は各部屋にランプが配られる)。

そんなわけで、まだ日のある18時には早々に夕飯というのもかえってありがたかった。山小屋なので豪勢な山海の幸が……というわけにはいかないが、屋根の下で素朴ながらも温かいものが食べられるというだけでも上等である。なんせここは四時間歩いた先の山の中、電気も携帯の電波も届かない場所なのだ(ただし、温泉があるのはもちろん川もあることから清水にも恵まれており、そういう意味では他の山小屋よりも恵まれていると言えるだろう)。

夕飯後には入れ替えになった青湯(こちらは源泉が異なりその名の通り透明度が高い)に入ることで風呂は三種類コンプリートとなった。まだ外は若干明るかったのでこのまま夜の露天風呂というのも乙なモノかと思ったが、曇り空からすると星は期待できないし、暗くなるのを待ってまで入るほどのものでもなさそうだ。結局早めに寝ることにした。

……が、川沿いという立地もあり、更にはぐずついた天気のせいなのか渓声はなかなかにやかましく、深い眠りに着けないまま気が付いたら真夜中に完全に目が覚めてしまった。

仕方なく、もうひとっ風呂浴びることにしてヘッドランプを取り出し忍び足で三度露天風呂へ向かう。外は雨がパラついていたが、ずぶ濡れになるほどではない。ヘッドランプで上手く照らしながら湯船に浸かる。

当然ながら、誰も居ない。

本来であれば満天の星空に期待も出来るのだろうが、あいにくの空模様である。適度に涼しいのはいいのだが、一方で聞こえるのはただ川の流れる音(それもそこそこ激しい)のみ。お湯自体は心地良いのだが、大自然の中に全裸でただ一人取り残されたような状況はなんとなく居心地が悪い。

なんせ、明かりはヘッドランプのみである(宿の方は既にこの時間は自家発電も切れ、各部屋のランプだけが灯りとなっているし、当然露天風呂には灯りはない)。流石にここまでワイルドだと気持ちよさよりもそういう不安の方が先に立つモノなのだなと感じつつ、身体も温まったところで切り上げると再び布団に入った。今度は無事に朝まで寝ることが出来た。

そして、明けてしまえば早い。起きたら朝食を頂き、昨日とは打って変わって早めに発つことにした。相変わらず雨はパラついていたし、昨日の疲れも蓄積しているからか、かえって行きよりも時間が掛かったが、それでも息を切らせながら四時間程度で再度下界に戻ってくることが出来た。前日の雨のせいか数度すっ転んだが、幸いにして怪我はせずに済んだ。

こうして改めて書き出してみると、やはり赤湯温泉はその立地も相まって、間違いなくハードコアな温泉地の一つであろう。しかし、その苦労をしてまで行ってみる価値もある……そう感じたのもまた確かである。

もちろんこの感想は、無事帰って来て苦労を半ば忘れつつある(もしくは強制的に良い思い出だったということにしようという力が働いている)頃に書かれているのだが!

ゲームのじかん

ようやくPS5を買った。GT7をやるためである。

さて、GT7はレースゲームであり、またお手本として「現実」があるタイプのゲームである。現実というのはつまるところ現実の自動車及びそのレースのことであり、基本的にはこれらをどのようにリアルに再現するのかという点に心血が注がれている。もちろんのこのリアルさというのは世代が進むごとに強化されており、リアルなグラフィックと挙動というのが(GT7に限らず)リアル志向レースゲームの売りとなっている。

しかし、そんなリアルなゲームであっても意図的にフィクションを残している部分がある。それが時間である。

どういうことかというと、GT7の世界には少なくとも二つ以上の時間が同時に流れている。一つはラップタイムを司る時間──これは現実世界の時の刻みと同じである──そしてもう一つは「ゲーム内で流れているであろう時間」である。これは現実世界の時の刻みとは非同期なものである。といっても、これがどういうことなのか未プレーの人には分かりづらいかもしれない。

……このゲームは先に述べた通りリアルさを追求している。このため、車の内装は細部に至るまで再現されており、計器類に至っては実際にゲーム画面の中でも作動する。

記憶が確かならば、前作たるGT SPORTではゲーム内で作動する計器類は走行に必要な計器……いわゆるメーター内のみで、その他の(実車では可変する)部分はハメ殺しの固定になっていた気がするが、今作ではメーター内以外も可変する場合がある。その一つが一部の車に付いているコンソール内の時計である。

そしてこの時計こそが現実とは非同期で、なおかつゲーム中のラップタイムとも非同期で動作するのだ。

……例えば、一周するのに一分かかるサーキットがあったとしよう。ラップタイムが一分だとすると、基本的には現実世界でも一分経過しているということになる。すなわちゲーム内時間と現実の時間はイコールである。

しかし、この時注意深くインパネの時計を見てみると、ゲーム内の時計は一周した頃には五分進んだりしている。つまり、ゲーム内の時計で示される時間というのは現実とも、あるいはゲーム内でラップを刻む時間とも異なるのである。GT7の中では時間A(ラップタイムを刻む時間・現実と同じ)と時間B(ゲーム内の計器で表現される時間・現実よりもかなり早い)が同時に並立しているのだ。

といっても、これはゲームを成立させる為に意図的に仕込まれたウソの一つである。

現実の自動車レースは何周もの周回を要し、ゴールまで数時間かかるものもある。だがゲームとして考えた時に、この数時間というのは(イコール実時間の為)プレーヤーの拘束時間としてヘビー過ぎる。過去のGTシリーズにはリアル24時間耐久(本当に24時間走り続けないと終わらない)という高橋名人がキレそうなゲームモードが存在したが、さすがに現在はそのようなものも無くなっている。

となると、リアルにプレーヤーを拘束出来るのはだいたい一ゲームで数周(数分~数十分程度)となる。この短い間にプレーヤーにゲーム内で変化を感じさせるためにも、燃料やタイヤは現実的な速度の数倍で消耗していく(これはレース前に倍率が表示される)し、天候は目まぐるしく変わり、空の色もコースを半周しただけで変わっていく。数周(リアルでの数分)の間に、現実であれば数十分~数時間分かかる変化を圧縮して体験させているのである。これがつまり時間Bの正体でもあるわけだ。

そしてこのような「二重あるいはそれ以上の時間」は他のゲームでも良く起きている。例えばRPGで「明日になると捕まった仲間が処刑されてしまうのでそれまでに助けだそう」みたいなイベントがあったとしよう。このとき、実際に時間が進むのは特定のフラグを立てた時だけで、それまでは何度フィールドで朝を迎えようが、宿屋に泊まろうが時が進むことはない。つまり時間の流れは同時に複数存在しているのである。

このようなゲームにおける複数の時間の流れに関しては、既に優れた考察が存在する。

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では、何故このような先行研究があるというのにわざわざGT7の時の流れについて取り上げたのかだが、これはレースゲームが(その他のゲームよりも明確に)時間に支配されるゲームだからである。

つまるところレースゲームというのは、現実のカーレースがそうであるように誰よりも速いタイムで走るのが是のゲームなのだ。ラップタイムという現実とほぼイコールの時間、これがレースゲームにおける絶対の存在である。そして他のジャンルではここまで実時間とゲーム内時間がニアリーイコールではない。

しかしそのタイムを司る時間とは別の時間もゲーム内には存在し、そしてみんな分かっていて知らんぷりしている。

これこそまさにゲーム特有の時間の扱い方であり、そこが面白いのだ。

電動キックボードを考える(4) 電動キックボードに乗ってみよう・走行編2とまとめ

これまで三回に渡って連載してきた電動キックボード乗車記であるが、一応今回で完結となる。過去記事については下記の通りである。

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さて、笹塚のステーションに電動キックボードを返し終えてから、しばらくの間どうしようか考え込んでしまった。本来ならばここからもう一度出発し都市間移動という用途を実証する……つもりだった。

ここで足が止まった理由はいくつかある。

一つは、自転車のように漕がなくてもいいとはいえ、立ちっぱなしでの移動は意外に疲労感があること。そしてもう一つは、思ったよりもお金がかかることである。

今回のルートのうち、渋谷→笹塚は電車こそ直接的なものがないが、実際のところバスは運行しておりそちらを使えば210円・40分弱で移動可能であった。一方で、電動キックボードで移動した際にかかったコストは(初回特別割引500円適用前で)785円・利用時間50分弱というものだった。実際は500円割引きされたので285円で済んだのだが、ここから練馬を目指して他のステーションに返す場合……少なくともこの倍はかかる事が予想された。

結局、せっかくここまで来たしいろいろな準備もしたのだからと思い以降の予定も進めたのだが、当初考えていた途中で中野に立ち寄る行程は省かれることとなった。

また、本来であれば笹塚から練馬は環七を北上するのが最も自然なのだが、先の記事で触れたように交通量の多い一部道路は通行禁止(手押し移動指定)エリアとなっており、環七は通ることが出来ない。このため、一本ズレた細い道を通ったりしている(もちろん車通りの少ない方が乗る側としても気が楽である)。

さて、こうしてまた小一時間乗車してエリアの端である練馬に到着してエリア端でのアプリの挙動を確かめたあと、折り返して最寄りのステーションである高田馬場駅前を目指し始めたのだが、やはり15km/h制限はさまざまなシーンで気になった。

例えば、都内の自転車レーンのある道路などを走った場合の状況と速度は次のようになる。一番左側の青色自転車レーンに電動アシスト自転車ロードバイク(20~30km/h)、そのすぐ横の車道左端に電動キックボード(15km/h)、そして車道に自動車(40~60km/h)である。この左右からのサンドイッチは生きた心地がしない。

……実はLUUPにおいては特例としてこの自転車レーン上を走行してもいいらしいのだが、当初はこちらが原付相当(小型特殊)のナンバー付き自走車両であることから車道側を走行するものと思い込んでおり、自転車レーンを空けて走行していたために発生した悲劇であった。なお現状LUUPではない電動キックボードにおいては原付登録の為、この自転車レーンを走ることは出来ない(ああややこしい……)。

また、LUUPの電動キックボードは現状二段階右折禁止である。このため登録時に案内されるマニュアルでは「小回り右折をしろ」という指示があった。ただ、ネット上では「本当にこの性能で小回り右折など可能なのか」と訝しがる声も多く、同様の懸念は乗車前から持っていた。

なので、今回の乗車時は当初のマニュアルの指示通り可能な限り小回り右折を試してみたが、出来るか出来ないかで言うと出来るし出来た。だが、正直言うとなるべくやりたくない──というか、右折以前に無理がある──と感じた。

何が無理かというと、小回り右折以前に右折レーンのある一番右の車線までたどり着くことがそもそも困難なのである。今回はたまたま休日ということもあって交通の流れはそれほど激しくもなく、後方の安全に気を遣いながらであれば車線を変更することが出来たが、交通量の多い時や夜間にやれる自信は正直ない。

それぞれの車線が40~60kmで流れている中で最高時速15km/hの乗り物で車線を移動しなくてはならないのである。そして小回り右折云々というのはこの無理ゲーをこなした後に初めて出てくる話である。前提からしてもう無理なのだ。

そもそも車側は(電動キックボードよりも遙かに動力性能がマシな)原付一種やロードバイクですら人によっては交通の流れを乱していると感じて苛ついている(実際にネット上にはそれらに対するヘイトを隠さない者も多い)。そこへそれらよりも遙かに性能の低い電動キックボードが現れたのだから……これ以上考えたくはない。

で、LUUPとしては現実的に(?)マニュアルを改訂し、現在FAQでは右折レーンの使用ではなく横断歩道の使用を勧めている。とはいえこれも明確にエンジンを切ることの出来ないこの電動キックボードは果たして手押しであれば横断歩道を走って良いんだろうかという疑問も出てくる(良いらしいが)。この辺りも正直自転車的なものとして扱うのか原付として扱うのかも微妙な現状では何が正しいのか直感的には分かりづらく、利用者としてもおっかないというのが正直なところである。

まぁ、百歩譲って横断歩道を利用することで右折レーンを使わなくて済むなら車線変更もせずに済むのだし、もうそれで良いではないかという声もあるかもしれない。

しかし実のところこれは何の解決にもなっていない。

なぜなら、都内の道路を走る限り、左車線の駐車車両を避けたりするシーンは多々あるし、例えば三車線で左から「左折・直進・右折」となっているレーンで直進したい場合は、否応なしに中央車線を走らざるを得ないのである。車道に居る限り、車線変更は好むと好まざるとに関わらず要求されることになるのだ──先の通り、15km/hで。

そう、右折レーンに対する問題というのは実のところ分かりやすい。実際に原付一種であれば二段階右折が、今回のような電動キックボードであれば手押しでの横断歩道の利用を推奨することが出来るからである。しかし「(速度差がありすぎて車線変更もままならず)直進が出来ない」というところまで行くと、そもそもこれは移動手段としてどうなんだという話になるのである。左端車線が直進不可の左折レーン続きだったらそこから出れなくなり、永遠に左折をし続ける事になるのだろうか? そのうちぐるぐる回ってバターにでもなるのだろうか?

とはいえ、幸いにして今回数時間走った中では車線を変更する際にヒヤリとするようなシーンはなかった。電動キックボードの物珍しさもあってかどのドライバーも十分な安全マージンを取り配慮してくれたと感じている。しかしこれらの問題から、やはり無理があるというのが結論である。

また、15km/hという速度は移動手段としての魅力も貶めている。というのも、15km/hというのは一時間ひたすら走り続けても最大で15kmしか移動出来ないということになる。実際、笹塚→練馬→高田馬場と移動した際には、トータル17kmの移動に(途中多少カメラ屋を見るなどしたものの)1時間45分ほどかかっている。

この間ほぼ乗りっぱなしでこれである。道中で電動アシスト自転車に抜かされる度に「実はあっちのが速くて安いのでは?」という疑念が消えることはなかった。

そして速度が出なくて時間が掛かるということは(時間貸しの為)当然コストもかかる。上記1時間45分のライドによってかかった費用は1,640円と、都バスの運賃(210円)やシェアサイクル(渋谷区シェアサイクルの場合、1650円で24時間借りられるそうだ)と比較しても安いとは言い難い。もちろん電動キックボードには移動の自由度があるが、この価格に見合うかというとまったくそうは思わない。となると都市間移動の手段としても微妙なところだ。

なお、電動キックボードにも乗り物としての楽しさはきちんと存在する。幹線道路を離れ、裏路地をゆっくりと流していると気持ちが良いのは確かである。しかしこの気持ち良さは例えば原付一種や自転車においても同様に感じたことのあるものであり、電動キックボードでなくては味わえなかったというものではない。

もし電動キックボードに活用の道があるとすれば、例えば比較的閉じられた、交通量は少ないものの坂の多い観光地での貸し出しを行うとか、或いは制限速度を更に下げて歩道を漕がずに走れる乗り物として打ち出すといった方向性はアリなのではないかとは感じた(実際、新規格である特定小型原付においては6km/h制限で歩道走行可能とする枠組みが想定されている)。少なくとも交通量と巡航速度の高い車道を走るには向いていない。それだけは断言出来る。

結局、走っていて思ったのは電動キックボードの車道との食い合わせの悪さと、そう感じる度に目に付く自転車とかいう既得権益の塊の無法さである。この15km/hの乗り物からふと歩道に目を向けると、電動アシスト自転車がノーヘルでこちらをブチ抜いていくのだから悪いジョークにしか思えない。あっちは何キロ出てんだよ。あっちがよくてこっちが15km/hってなんなんだよと、そう感じてしまうのである。

しまいにはむしろ電動キックボードは制限速度をもう少し下げて歩道走行可能な乗り物とし、電動アシスト自転車ロードバイクの制限をもっと締め付けた方がいいのでは……というような考えさえ浮かぶようになった。

……当初予想していた感想とはまったく違う結論になったが、ともかくそれが電動キックボード体験において最終的に感じたことである。

で、それなのに無理のある活用方法ばかりが欺瞞だらけの中でゴリ押しされているのが現状なわけで、こうした状況には乗車後も、いや乗車後だからこそ改めて強く違和感を覚えた。

とはいえ、一日乗ってて思ったのは別に欺瞞だらけなのは電動キックボードだけでもないな……という結論なのだから、ある意味では最高に救いのないオチだったかもしれない。

電動キックボードを考える(3) 電動キックボードに乗ってみよう・走行編1

連載となっている電動キックボード試乗記だが、第三回の今回にしてようやく実際に走行し始めることになる。ここまでずいぶん長かったが、実際のところ走り出してからも言いたいことは山のように出てくる。というわけで今回は走行編その1である。

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さて、前回記事の通り、渋谷駅前のステーションからまずは笹塚のカメラ屋を目指して走行してみることにした。走行開始の手順は明快で、スマートフォンからアプリを通して電動キックボードのハンドル部分にあるQRコードを読み取ると、返却場所のステーションを指定するよう指示される(これは出発以降も変更出来るので、適当なところを選んでも構わない)。アプリ上でこれらを指定すれば、電動キックボードのロックが解除され電源が入り乗れるようになるという寸法である。

なお、この電動キックボードには物理鍵が存在しないので、以降は買い物等の一時駐車であっても基本的にはスマートフォンからロックを掛けることになる(また、ロック中も走行時間としてカウントされる)。

電源が入るようになったらもう動かせるので、ハンドル左手側にあるスマートフォンホルダーにスマートフォンをクランプする。基本的にはスマートフォンでナビ等を使いながら走るというのがメインの使い方になるだろう。あとは蹴り出してからスロットルを開けるとモーターが回り、漕がずとも走行することが出来る。

こうして乗車し、最終的に返却予定のステーションに到着したら到着時の手続きを済ませて返却完了ということになる。これがLUUP利用時の一連のサイクルである。

ただ、この一連の流れの中で微妙に洗練されていない部分も目に付く。例えば都内では特に交通の激しい幹線道路などで走行を禁止するエリアが指定されている(環七等)。また、今回のヘルメット免除が特定区域での社会実験の為か、走行可能/不可エリアも設定されている。これらのエリアは基本的にはLUUPのアプリを立ち上げていれば現在地と同時にマップにオーバーレイ表示され、制限区域内では警告が表示される。

ただ、これとは別に、目的地となるステーションへLUUPのアプリ内で道案内する機能がないため、ステーションへの案内を希望する場合はGoogleマップアプリへ転送されることになる。こうすると、アクティブウィンドウはLUUPアプリからGoogleマップアプリへ遷移する。すると、Googleマップアプリ側ではLUUP側の走行可能エリア等のデータを持っていないため、これらのエリアに入っても当然ながら案内中に警告は表示されないのである。

現に今回も、Googleの案内に従ったらずいぶん広い道路に出て危険を感じたので脇道に逃げてアプリを切り替えたところ、実はその道路はLUUP側で走行を禁止している道路だったというシーンがあった。

つまり、これを防ぐためには適宜ユーザーがLUUPアプリとナビアプリを切り替える必要がある。とはいえ、当たり前だが走行中の携帯の操作は違反である。これはもう少しなんとかならんもんだろうかと思った。

なお、これらの禁止/サービス外エリアを走行したからといって、電動キックボードが動作しなくなるというわけではない。あくまでもアプリ側に警告が表示されるだけである。交差点を一つ越したら途端に停止した……なんて挙動になったら危ないので当然だろう。

さて、ここからは走行時の感想である。

ところで、電動キックボードが新たに移動手段として車道にデビューすることについて心配する声は非常に多い。実際、各種ネットニュース等で電動キックボードが話題になる度にコメント欄やSNSには否定的な見解が集まっている。それはひとえに、電動キックボードという存在が「交通に参加するに足らなそう」であることと、それにも関わらずゴリ押しとも言える内容で受け入れ(?)が進んでいることが原因としてあるだろう。

中でもよく指摘されているのが安定性に関する不安である。電動キックボードはタイヤが小径な上に常に立って乗るという仕組み上、非常に不安定に見えやすい。いわゆる非電動のキックボードについては車体もオモチャの域を出ないものが多いことから、これらと同一視され、不安定で危険な乗り物ではないかと見なす意見が多い。

これに関しては実際に乗ってみたところ、乗り始めこそ、その速度や安定性に若干の不安を感じたのは確かだが、数百メートルも走れば意外に安定していると感じた。前回記事にもある通り、車体の剛性はしっかりしておりブレーキやサスペンションも完備している。少なくとも舗装路を規定の速度で走る限りにおいては転倒の危険は一度も感じなかった。自転車やバイクで言う足付き性の概念もないため不安感もない。もちろん小径ゆえ段差や凹凸に対してやや敏感ではあるが、総じて走行中に危険な挙動は感じなかった。

また、電動(≒動力が人力とは別に存在する)が故に、体勢が崩れた状態で不意にスロットルを開けてしまいコケるのではないかという点も指摘されているが、LUUPの個体に関して言えば静止状態からスロットルを開けてもモーターは起動せず、最初に足で地面を蹴って回転を与えてからでないと動かない仕組みになっており、ある程度配慮されている。スロットルを開けた場合の速度上昇も穏やかなので、一般的には問題ないレベルだろう。

というわけで、ステーションからこぎ出してすぐのファーストインプレッションは思ってたよりも好感触であった。使い方はこれでわかったので、取り急ぎGoogleマップのナビに任せて笹塚の中古カメラ店へと向かうことにする。

さて、加速性能は穏やかだと書いたが、そうは言ってもこの電動キックボードの最高速度は15km/hに制限されているのであっと言うに最高速度に到達しそこで頭打ちとなる。

この最高速度は車体側で制御されており、基本的に平地でこれ以上はビタ1km/hたりとも出ない。ただ、上り坂でもこの速度をキープ出来た為出力自体はある程度余裕を見ているものと思われる。また、下り坂では瞬間的に20km/hを超えることがあり、この時に特に回生ブレーキ等は作動していないと感じられる挙動だった。無論平地に戻れば再度15km/hがリミットとなる。

さて、ではこの15km/hという速度は適当だろうか。

歩行者以外の低速の乗り物の速度について考えてみると、シニアカー(電動車椅子)は6km/hが上限で、これは歩行者扱いとなり歩道走行可能となっている。電動自転車は一つの目安として24km/h以上でアシスト力が切れるようになっていて、免許証不要である。この他ロードバイクは30km/h程度で巡航可能とされており、原付一種は免許が必要かつ法定速度は30km/hで、ただ実力値としては45~60km/h程度出る……といった感じだろうか。LUUPの電動キックボードは現状ではヘルメット免除ということを考えると、最高速度が制限されるのは(それが15km/hが最適かは別として)納得のいくところだろう。

で、これらの色々な乗り物が混在する中での15km/hがどのくらいの速度かというと「アシストなしのママチャリの巡航速度くらい」である。つまり、アシストの付いた電動自転車には追いつけないと思ってよい。

事実上道路の左端しか走れない乗り物であると言って良いだろう。それも、ロードバイクや原付のように「いざとなったら加速する」も不可能な乗り物である。

例えば自分が自転車・バイク・自動車等を運転していたとして、左車線に路上駐車の車が止まっている時など、なるべく後ろの車や対向車に迷惑が掛からないようそこで一段スピードを上げて早急に追い抜くというシーンは日常茶飯事かと思うが、15km/hに制限された電動キックボードはそれすらも叶わないのである。

というわけで、場面によっては車道を走っていて周囲の乗り物に対してひたすら申し訳ないという気分になることもあったが、一方で裏路地的な道を走り抜けるには小回りが効いて良い。ただ、例えば商店街的な「車はほとんど入っていかないが自転車は走っている」みたいな場所でそのまま乗車して通行していいものなのか一瞬悩むシーンもあった。

自転車でも車でもないものに乗っていて、他に電動キックボードに乗っている人も居ないという場合、常にここは走行を許されるのか確認しながらの走行を強いられるわけで、これは自転車に乗っていれば(無意識に周囲の自転車に倣うので)ほぼ意識しない要素だなとふと思った。

そんなわけで一件目の目標であるカメラ屋に到着した。自転車等でもそうするように店の前に寄せて止めてアプリから施錠する。サッと店内を見渡したところお買い得なレンズがあったので購入することにしたが、全体的には急ぎ足で店を後にした。もちろんこの間も時間料金がカウントされているためである。今回は自転車やバイクで来た時にそうするように店の前に駐車し、すぐ目の届く範囲に居たので駐禁を切られるようなこともなかったが、自転車やバイク同様、場所や場合によっては放置と見なされて駐禁を取られることもあるだろう。

さて、そのときにこの車両が停めるべき場所、あるいは停められる場所というのは一体何処になるのだろうか。LUUPのFAQでは「駐輪場や買い物目的でのコンビニエンスストアでの駐輪スペースなど一時停車可能なエリア」以外への駐車は違反になるとされているが、現状電動キックボード専用の駐車スペースは存在しない為、駐輪場に駐輪するとしたらこれがバイク相当なのか自転車相当なのかもイマイチ分からないのである。

これらは結局のところ鳥でも獣でもない、いわば蝙蝠的な乗り物だから生じる問題である。結局これがなんなのか、みんなよく分からないのだ。

電動キックボードを考える(2) 電動キックボードに乗ってみよう・車体編

前回記事では、電動キックボードを試してみるまでの経緯と、そこに存在する欺瞞について書いた。第二回の今回はいよいよ乗車することとする。

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さて、せっかく電動キックボードを使うのだからということで、一つ目標を立てた。普段電車では行きづらい中古カメラ屋への訪問である。東京の山手線から西側は、東西に伸びる路線はあるものの南北方向に伸びる路線がないことから南北方向には移動がしづらい。こういった鉄道移動が不便な地帯を電動キックボードで補完することが出来るのであれば便利だろうし、想定されるユースケースの一つとしてアリなのではないかと考えたのである。

というわけで、事前に考えていたルートとしては下記のようなものであった。

渋谷駅前のステーション発→笹塚(最近開店した中古カメラ店)→中野(有名中古カメラ店)→練馬(サービスエリアの端・中古カメラ店)→最寄りのステーションへ返却

これでだいたい片道十数キロくらいになりそうなので、航続距離に制限がある電動キックボードがどのくらい行けるものなのかも含めて良いテストになるのではないかと考えたのである。

というわけで電車で渋谷駅に降り立って、昼食を取ったら行動を開始することとした。昼食を取るまでの間に15分ほど渋谷駅前を歩いてみたが、その間に3~4人ほど電動キックボードに乗車しているのを見たので、この辺りでは比較的メジャーなサービスなのかもしれない。これだけ走っているなら珍しい乗り物に乗っているという一種の小っ恥ずかしさも薄れるだろう。なんとなくこういうのが沢山走ってそうな渋谷からスタートしたのはやはり正解だったようだ。

で、渋谷駅前にはそれこそ数百メートル以内に何カ所もステーションがあったので、現在地のなるべく近くで満充電の貸出機があるステーションを探しそちらへ向かった。現状試験的なサービスであるにも関わらずステーションの数は十分すぎるほどで、少なくとも借りられなくて困るということはなかった。

サービスの詳細というか、まじまじと見たのは今回が初めてだったので意外だったのは、ステーションが本当に置き場だけであり、シェアサイクルのほとんどにあるようなゴツい駐車スペースがないことだった。自転車の場合はそういった場所に整然と止めておく必要があるが、ある程度の自重とスタンドがある電動キックボードにおいては不要ということなのだろうか(シェアサイクルの場合はステーションへの施錠設備も兼ねているケースが多い)。

また、ステーションには充電設備等があるのかと思ったがそれもないので、純粋に置いておく場所というくらいの感覚らしい。もし全てのステーションに充電や管理の機能が必須だったとすれば都内の一等地にこれほど短期間かつ大量にステーションを配備するのは難しいと思われるので、これは賢いやり方だなと感じた次第である。気になる充電については後日回収して行っているのだろうか。

先行して電動キックボードが広まった中国等ではステーションすらなく乗り捨て型のサービスが普及しているのでそれらをトラックで回収しているらしいが、LUUPがどういう仕組みなのかは実際のところよく分からない。ただ、近隣のステーションを見る限りでは電池切れになっているものはほとんどなかったので、それなりに充電が上手く成されているのだろう。

車体はバージョン違いがいくつかあるようで、当日乗った二台は微妙に仕様が異なっていた。

まず、一台目に乗ったもの(渋谷→笹塚の移動で使用)については、今写真を見返したらナンバーに自賠責のシールが貼ってなかった。単純な貼り忘れミスなのかそれとも悪戯で剥がされたのかは知らないが、この状態で走ってるのは原付なり小型特殊登録の乗り物としてどうなんだろうという話だが、実のところ気付いたのは乗車後のことだった。まぁ、他の個体については自賠責のシールが貼ってあったのでおそらくは問題ないだろう。

この写真でも分かる通り、そもそもテールランプやナンバーはとても低い位置にあり、おそらく後続車からの視認性は良くない。またこのモデルに関してはリアウィンカーはなく(ステーションに泊まっていた車両の中にはリアウィンカー付きもあった)、ハンドルバーエンドの白い部分がウィンカーとして光る。ただし光量は日中だと微妙なところで、12VバッテリーレスのXR50Mのウィンカーでさえもう少し気合いの入った光り方をするのではないかというレベルである。正直これ周りの車から見えてるんだろうかと不安になったが、しかし手信号を行うわけにも行かないので見えていることを祈るばかりであった(手信号の為に片手運転しようものならその場で転倒していただろう)。

ステップボードには足を揃えて置く程度の幅があり、この範囲内でポジションが自由に取れることもあって窮屈な感じはしない。ステップボードに電池でも詰めているのか重心は低めである。ただし当然のごとく搭乗中は立ちっぱなしになる。

タイヤサイズは10インチと、思っていたよりは大きい。原付一種スクーターの多くが(幅は異なるが)10インチタイヤなので、それを考えれば原付並の装備にはなっているということになる。ちなみに保有している乗り物のタイヤサイズで言うと、折り畳み自転車のパシフィック キャリーミーが8インチ、原付一種のホンダ XR50Mが12インチといったところなのでこいつは両者の中間ということになる。ただ、乗り味的にはやはり小径車という感覚であった(ただし、LUUPの初期モデルは8.5インチだったらしく、これでも大径化しているそうだ)。

ブレーキはドラム式で、その最高速(15km/h)にしては十分な効きだった。下り坂等で瞬間的に20km/hを超えるようなシーンでもブレーキに不安は感じなかったので、そういう意味ではよく出来ていると感じた。前後ブレーキは左右レバーになっており、いわゆる普通の自転車と同じである(非電動キックボードによくあった後輪を踏んで止めるタイプのブレーキではないし、バイクのようにペダル式というわけでもない)。これは利用するユーザー層を考えれば妥当なところだろう。

サスペンションは一応テレスコピックのものが付いているが、ストロークは見ての通り短く、そこそこ地面の凹凸を拾うものだった。まぁ速度的にもこれで必要十分ということなのだろう。

右手側にはスロットルがあり、これは押し下げ式となっている。バーエンドの白い部分が先に述べた通りウィンカーの発光部である。またミラーは片側だけに付いている。走行性能的にもミラーを見る機会が多い乗り物なのだが、この部分は大いに不満だった。

分かりづらいかもしれないが、このミラー、いわゆるガラスミラーではなくプラスチックミラーであり、この画像だとそこそこ綺麗に見えているが、走行中は歪んでしまって使い物にならない。後方確認が常に必要な乗り物なのに、その後方確認が困難なのである。この点においては明確に最悪だったと感じる。繰り返しになるが、こいつはその走行性能の低さとドライバーからの視認性の悪さから、下手な原付以上に後方確認が必要な乗り物である。歪んでしまって後方に車が居るかも分からないようなミラーでは明らかに危険であり、ここは改善の余地があると言って良いだろう。

もう一つ最悪な点について述べると、速度及び電池残量を表示する液晶メーターは輝度が低すぎて晴天下では使い物にならないと感じた。特に電池残量については電動車両の命だけにそれが確認出来ないというのは不安で仕方がない。更に言えば、一台目に借りた車両はウィンカー動作時にブザーが鳴らない仕様(これが仕様なのか故障なのかは不明)だった為、動作については主にメーターの表示をアテにするしかなかった。でも見えづらいのである。

左手側のこのウィンカーについても左右ボタンと真ん中にボタン(押すとクリック感がある)が配置されているのでてっきりバイク等でよくあるセンタープッシュキャンセル式かと思っていたのだが、実際はセンターボタンにはなんの意味もなく、実際はプッシュ-プッシュキャンセル方式だった。一台目についてはウィンカー動作時にブザーが鳴らず、メーターの表示も見づらく、当初はウィンカーがバーエンドに付いていると思っていなかったので動作しているのかも確認しづらかった。ブザーについては二台目に借りた方では鳴ったのでおそらく鳴るのが正しいものと思われる。

スマホホルダーは金属製のガッシリとしたもので、ネジで締め付けるのだがどういうわけか走行中に振動で段々スマホがズレていく(クランプネジが緩んだわけではない)症状があった。スマホを押し込んでも入らない程度にはクランプされているのに、細かな振動でだんだんズレていくのである。

このホルダーはバネ式ではなく完全にネジでクランプしてるので、要するに万力と同じ仕組みである。このためスマホに行き当たったところでネジを止めるのだが、それだと微妙にクランプ力が足りないらしかった。こうなるとバネ+ゴムパッドで補助した方が良いのではと思えるのだが、屋外放置が基本の車両だけに耐久性重視でこうなっているのだろうか。

全体的に見て不満も多少あるが、一方で事前に予想していた動力付き車両としての危なっかしさというものは意外に少ないと感じた。もちろん小径なりの乗り物ではあるのだが、少なくとも単独での走る曲がる止まるに関しては思った以上によく出来てるというのが正直な感想である。

もちろん、これは車両単独での話で、車道に出て交通の一部となった際にどう思うかというのはまた別の話なのだが。もちろん言いたいことはたくさんある。

というわけで、次回公道編でようやく車道に出ることになる。今回も走るとこまで行かなかったな……。