インターネット

無名サイトのつづき

ノウとハウ ~非創作同人誌を作るための調べもの講座~

そろそろコミケの当落の話も聞こえてきそうなので、少し頭を原稿モードに切り替えるべく、毎年のノウハウをここに書き残しておこうかと思う。

これまでに趣味で何度かコミケに出ており、主にカメラ関係の評論本を頒布している。部数の話は野暮なのでしないが、同じシリーズとして今のところ6冊ほど出しており、まぁ中程度には続けられている方であると自負している。

で、そういう素人の書いた本であっても一応他人に有償で公開する以上はそれなりの正確性を保ちたいと考えており、そこの担保の為には調べもののスキルが必要になってくる。ところがこの調べものというやつ、少なくとも「何を調べたいか、その場合どこを掘ればいいのか」がわからないと打っても響かないものであり、全くわからないところから手を付けるにはとても厄介なものなのである。

そこで、自分の思い出しがてら「カメラ関係の評論本を作る時の調べもの」という特定ジャンルの狭い話ではあるが「調べものの仕方」について書き綴ってみようかと思う。既にご存じの方には目新しい情報は何も無いかもしれないが、そういった方はこれらのスキルを使って新たなものを生み出して頂きたい。

 

1.インターネット

手段1、インターネットである。まぁ当たり前だ。これを見ている貴方であればきっと使いこなしているに違いない。現行製品はだいたいwebサイト上にあるし、取扱説明書がアップされている場合もある。また、各webサイトも保存期間の差こそあれ、かなり古いモノまで残っていることが多く時には資料がこれしかないなんてこともある。発売時期・価格・仕様といったものはメーカー公式よりも発売時のニュースサイトの方がまとまっていて見やすかったりする。

特にこの関係では老舗ニュースサイトimpress watchが群を抜いている。その理由としては、過去記事へのアクセス性の良さである。impressのログ維持にかける情熱はすさまじく、デジカメWatch立ち上げ前のPC watchのデジカメ記事ですら残っている。軽く20年以上の蓄積はそれだけでも偉大な財産である。

ちなみにおそらくimpress watch最古のデジカメ記事はこれである。開設の翌月である96年5月の記事だった。

pc.watch.impress.co.jp

現役PC系ニュースサイトの中では比較的記事の質が高いとかムカつく全画面広告を入れないとか素晴らしい点がいっぱいあるimpress watchであるが、敢えて最もお気に入りの点を挙げるとすればこの「昔の記事がきちんと今も参照できる」ことだろう。

この点から言うと、他のニュースサイトであるところのASCII24ASCII.jpや旧ZDnetITmediaのリニューアルに伴うログの断絶は大変悲しい状況なのである。記事自体は残っているがサイト構造の変化からバックナンバーリストすらなくなり、リンクとして追えない場合も多々あるのだ。

どうしてもという場合はInternetarchiveに頼ることになるが、これも万全ではない。特に画像などは欠落している場合も多く、あったらラッキーくらいのレベルであろう。

ただ、メーカーサイトが独自に開発者インタビューなどを掲載している場合はInternetarchiveに頼らざるを得ない場合もある。また、メーカーが撤退している場合や事業譲渡をした場合も、最低限のサポートを残してコンテンツが消滅する。このため、ある程度は有用である。

web.archive.org

web.archive.org

あとは個人サイトもリアルタイムの生の声を拾うには大変有用なのだが、残念ながら無料ホームページスペースやブログのサービス終了によって闇に消えたコンテンツが大量に存在する。直近であればまだまだジオシティーズの内容はGoogleにヒットするので、Googleの要約を見て期待を込めて飛んだ先がサービス終了のお知らせなんてことは日常茶飯事である。

また、レアものについて調べているとヒットするのが2ch(5ch)やmixiのコミュニティのログだけなんてケースも存在する。滅茶滅茶気になるものがサラッと流されていたりすると皆なんでそこで聞き出さなかったんだと地団駄踏むことしきりである。

あとはSNSなども活用出来るのであれば最有力であろう。なんだかんだでマニアのネットワークというのは強いので、そういうのを知ってそうな人にたどり着けるのであれば思い切って聞いてみるというのも一考である。

最後に、インターネットの問い合わせフォーム等を通してメーカーに聞くというのも広義のインターネットの活用の一つであろう。これに関しては先方の対応次第という面もあり、必ずしもこちらの求めていた返答が返ってくるとも限らないが、少なくとも問い合わせた結果として無視されたり、こちらが不快になるような回答が返ってきたことは一度も無いと断言しておく。必要であれば活用すべきであろう。

 

2.書籍

……そうはいっても、インターネットで調べられる情報というのは「インターネット以降の製品」であることが圧倒的に多い。要するにそれ以前のものというのは新品としてのニュースバリューがないので、企業サイトに取り上げられることは希であり、また先に述べたようにwebサービスの終了から現在では個人サイトの記述ですら追えないということも多い。

というわけで、インターネット以前の情報といえばやはり書籍である。書籍の調べ方についてはいくつかあるが、まず「購入する」のであれば、新品が手に入るのであればおそらくAmazonで事足りるだろう。ただ、Amazonで事足りるということは最近の本なわけで、おそらくインターネットで足りない情報を埋めるには物足りない。インターネット以前の情報を求めるのであれば、必要なのは古本である。そうなると、Amazonマーケットプレイスや日本の古本屋などを使うことになるだろう。

www.kosho.or.jp

なお、カメラではないジャンル、例えば鉄道や自動車などは、専門古書店が存在する場合も多い。そういうものが存在するジャンルの場合は、そういった店で一度は棚を眺めるべきである。理由は後述する。しかしカメラにおいては現在は存在していない。以前は神保町に写真集とカメラ関係という形で取り扱う書店があったのだが、後者はあまり売れないので写真集一本に絞ったと聞いている。

一般古書店でもこうしたジャンルでは棚は大きくないので数を回る覚悟が必要である。特にブックオフに代表される新古書店は棚に最近の本だけを並べるケースが多く、2000年代前半のカメラ雑誌でさえレアである。

 もちろん「購入しない」選択肢もある。図書館に行けば良いのだ。とはいえ、ここにもある程度のテクニックというかノウハウがあるので、その辺りについて少し解説する。住んでいる地方によっては難しいものもあるだろうが、あくまでも個人の経験からなので適宜アレンジして頂きたい。

さて、図書館といって最初に思い浮かぶのは地方の公共図書館であろう。たまたま横浜市に居住しているため、地方公共図書館としてはかなり充実している(らしい)横浜市立図書館が使えるが、おそらくこれはかなり恵まれている方ではないかと思っている。

地方公共図書館は基本的に雑誌のバックナンバーはないが、それ以外の単行本やムックであれば置いてある上、ある程度は開架なので棚を見てそのジャンルの専門書の傾向を掴むことが出来るという大きなメリットがある。次に述べる専門図書館国会図書館は基本的に閉架なので、ここが大きな違いである。また、必要とあらば借りられるというのもとても大きい。もし仮に大きめの地方公共図書館で借りられるアテがあるのならば、それは大きなアドバンテージの一つと言えるだろう。

次に、専門図書館である。多くの場合はそのジャンルの博物館などに併設されている場合が多い。鉄道博物館のライブラリー日本自動車工業会の図書館などが代表的であろう。

カメラにおいても専門図書館は存在しており、主に二カ所が挙げられる。この二つは性格が異なるため、使い分けると更に効率が高まること請け合いである。

まずは、東京・半蔵門にある日本カメラ博物館併設(実際は隣の建屋)のJCIIライブラリー。

www.jcii-cameramuseum.jp

「カメラ」博物館だけあって、このあと紹介する都立写真美術館よりもメカ寄りの本が多く収蔵されており、またメーカーからの寄贈本(一般の書籍流通に乗っておらず、ISBN等がないため既存図書館では管理されていない自主配布本や社内配布資料など)を保有していることが最大の強みである。とはいえ、残念ながらここにない本も存在する。また、国会図書館とハシゴできる立地なのもありがたい。

デメリットはといえば、平日のみ開館という点と、PC使用禁止、地下にあるため携帯の電波がほぼ入らないというところだろうか。また専門図書館なので貸出は出来ず、コピーを取るしかない。

特に平日しか開いていないというのはサラリーマンには有給取得が前提となるためとてもつらい。しかし、ここにしかない本がある以上その価値はあると言っていいだろう。もちろんオンラインでの蔵書の照会は可能なので事前調査をお薦めしておく。

次に、これも都内の恵比寿にある東京都写真美術館の図書館。

library.topmuseum.jp

こちらは「写真美術館」の名の通り、蔵書に関しては写真集の方がメインなのだが、日本のカメラ雑誌が写真雑誌も内包してきたからなのか、一般的なカメラ雑誌(アサヒカメラ・日本カメラ・カメラ毎日など)はバックナンバーが一通り揃っている。このため、雑誌の記事をひたすらに漁るのであればJCIIの図書館よりもお薦めである。

何故なら、東京都写真美術館は休日も開館しており申告すればPCの使用が可能(電源あり)。そして携帯の電波も通じるので、調べながらリアルタイムに書くということが可能だからである。これはJCII図書館にはないメリットだ。ここも貸出は出来ないが、コピー代はこっちのが少し安かったような覚えがある。

なお、どちらの図書館でもレファレンスサービスが利用可能なので、行き詰まった時は司書さんに相談してみるのも手である。

というのも、これらの図書館は基本的に閉架図書館なので、検索端末でアタリを付けて取り寄せるまで実際にそこに何が書かれているのか、求める情報があるのかは判断出来ない。検索端末に表示されるのは簡単な見出しがせいぜいなので、なかなか上手くいかない時も多いのである(一部雑誌は目次のみをコピーした目録があるのでこれを使うと効率的)。

そんな中で、閉架の中に入り込んで棚に並ぶたくさんの本の中から「それっぽい」のを調べもののプロに探して貰えるのがレファレンスサービスなのだから、利用しない手はない。というか基本無料なのがすごい。

最後に、これらにもない本を探す手段が国会図書館である。実はこれらの専門図書館の手からもこぼれ落ちる本というのが存在する。これらの図書館では「カメラ雑誌」は収蔵しているが、「カメラを取り上げることが多い家電雑誌」などは実は収蔵していないのである。例えばこのジャンルで有名な「特選街」だとかは雑誌として保有していないことを確認している(ちなみに古い特選街でカメラ関係の署名記事を見ると、カメラ雑誌でよく見るライターが名を連ねていたりする)。

また、初期のデジカメについてはどちらかといえばPC周辺機器的な立ち位置だったこともあり、PC雑誌においてレビューされていたことも多いのだが、実はこれらもカバーしていない。よって、これらを探すためにはカメラ専門図書館だけでは不十分なのである。

というわけで、国会図書館である。

www.ndl.go.jp

建前上日本の全ての書籍は収蔵されることになってるのだが、まぁ実際はそんなこともない。ここからこぼれ落ちてる本などいくらでもある。雑誌などでは抜け落ちてることは日常茶飯事だ──とはいえ日本のありとあらゆる図書館の中で最強の存在であることは間違いない。そんな場所である。

登録が必要で貴重品以外は持ち込めなかったりするが、あとは基本的には馬鹿でかいだけで基本的な閉架図書館と同じである。土曜日開館なのでサラリーマンにもやさしい。永田町にあるのでカメラ博物館から歩いていくことも出来る。

この辺りを調べれば、おそらく手に入らない本というのは相当少なくなっているはずである。少なくとも日本語の文献においては。

これ以外には海外のコレクターが書いた本(洋書)を取り寄せるとかがある。いまのところ上記専門図書館に置いてある範囲でなんとかなっているが、語学の勉強の必要もあるとなれば今から頭の痛いところである。

3.論文・技報

だいたいインターネットでもある程度までは探せるのだけど、一応一般的なインターネットサイトとは性格が異なるのでこちらに切り分けた(実際に読む場合は2の図書館との合わせ技が必要な場合もある)。

専門の学会や企業の研究報告で無料で読めるものが結構あるので、そのあたりを参考にすることも多い。流石に一般誌ほど読みやすいモノではないが、書かれている内容は間違いなく参考になるはずである。以下にいくつか参考リンクを挙げておく。

www.jstage.jst.go.jp

annex.jsap.or.jp

www.konicaminolta.jp

www.fujifilm.co.jp

jp.ricoh.com

j-stageは無料で読めないのも結構あるのでそういうときは諦めよう。

ともかくこの辺りを使いこなせれば確実にワンランク上の内容が書けるのではないかと思ったりしている。またこうした論文には特許番号が書かれている場合もあるため、これらを取っ掛かりにして特許を調べるというのも面白い。特許の調べかたについてもある程度知見があったのだが、つい最近J-platpatがリニューアルされて検索方法がまるっきり変わってしまったので覚え直しである。よってここでは省く。

最後に、これらの情報というのはだいたいにおいて「置かれている」だけである。誰かに活用されることを期待して整理分類されてはいるが、実際のところそこに辿り着くには「書名」「著者名」「年代」などからアタリを付ける技術が必要になる。

特に閉架図書館では本棚を見て「これも関連しそうだな」という探し方は不可能なのである。なので、図書館でも古本屋でもいいからそのジャンルのオープンな本棚がある時は、なるべく数を見ることで書名や著者名の情報を叩き込むことも必要になるかと思う。

インターネットの検索にしたって、適正な検索ワードの指定というものは(もはや意識していないかもしれないが)必須のスキルである。情報は何処かにあるけど、手に入るとは限らない、そういうものなのだと思う。

なお、重ねてのお断りにはなるが、本記事の内容はカメラ関係という狭い範囲であり、その中でも都内に実際に足を運べる人間に特化した内容となっている。この記事がカバー出来ていない部分に関しては、大変勝手なお願いではあるのだがどなたかが「地方における情報収集」としてまとめられることを期待して、本記事の結びとしたい。

インターネットの怪異

そのことに最初に気付いたのは、ずいぶん前だったような気がする。

通勤時間の暇潰しのためにWikipediaのアプリを入れてたまに読んでいるのだが、そのアプリの機能として「よく読まれている記事」という一種のアクセスランキング機能がある。例えば芸能人が不祥事を起こしたり亡くなればその人のページが翌日ランクインするし、何かの事件の判決が出たらその事件のページがランクインしたりする。ある意味では「ネットユーザーの興味の総意」みたいなところがあるランキングである。

しかし、ある時奇妙な項目がランクインしていたのを目にした。それは「今昔文字鏡」というソフトウェアに対する記事である。あまり一般に知られたソフトではないにも関わらず、今世間一般で話題になっている数々の項目を抑えてランクインしていたのである。

 

ja.wikipedia.org

 

これだけなら「まぁ一部で何か話題になったんだろう、たまにはそんなこともあるよね」で済んだ話なのだが、さらに奇妙だったのはこのランキングの顔ぶれは(その時々のニュースに応じて)変わっていくのに、今昔文字鏡だけはその後もコンスタントにランクインし続けたのである。

このことに一番最初に気付いたのは、記録(ツイートやスクリーンショット)に残っている限りでは2019年1月頃であるらしい。下記の画像は2019年2/22時点でのスクリーンショットだが、これを調べた時には1/23まで遡りその時点でもランクインしていることを確認している。

 

f:id:seek_3511:20190424181518p:plain

 

なお、補足しておくと当時一位の北海道の地震ちょうどこの前日に同地域にて震度6弱の地震があったことから多く検索されたものと考えられる。

冒頭でも述べたが、このようにある程度世間の空気というか、今話題になっているものが検索されがちであり、それらがオールジャンルの百科事典であるWikipediaのランキングにもある程度反映されるという点については広く同意して頂けるものと思う。

さて、そうした点からすれば今昔文字鏡という項目のランクインはいかにも不自然だった。このソフトは一部のそれを必要としている人にはこの上なく大切かもしれないが、一方でほとんどの人が触れることはなく、必要ともしていない。ここにランクインしなければおそらく一生存在を知らなくても生きていけた、そんな類いのソフトである。

 

……というわけで、ここでこの記事を書いている4/24時点のランキングを見てみよう。驚いたことに、「今昔文字鏡」という項目は現在においても、変わらずランクインし続けているのである!

 

f:id:seek_3511:20190424182833p:plain

 

ちなみに1位は池袋の母子死亡事故を起こした人物、2位は不倫報道があったアナウンサー、4位は暴行事件を起こしたメンバーがいるグループ……と、まぁ話題になるのも頷ける「何かあった」人達揃いである。こうしたメンツの中にあって今昔文字鏡という項目の存在は、やはり異様であると言っていいと思う。

しかし、そうは言っても「あの」Wikipediaである。好き嫌いは別としても、もはやネットユーザーで利用したことのない者はいないのではないかという規模のモンスターサイトなのだ。これだけのサイトで少なくとも三ヶ月以上に渡ってアクセスランキングの上位に入り続けるというのは、一種異様な出来事である。

しかし、その理由もよく分からない(なにせ今昔文字鏡を作っていた研究会は19年2月に解散とその項目にある。もはや話題が生まれようもないのだ)。仮に宣伝か何かの目的でランキング工作を試みるような者がいたとしても、もはやその対象は存在しないのである。

モンスターサイトであるが故にWikipediaでアクセストップ5に入り続けるということは生半可なアクセス数ではあり得ない。またその話題は日によって変わっており、一週間もすれば通常は全く入れ替わっている。にも関わらず、この項目だけがランクインし続けている。そしておそらくは宣伝というわけでもない。宣伝する対象が既に存在していない。そしてもちろん、世間一般で(例えば今話題の事件・事故を抑えてランクインするほどには)話題になっているとも思えない。まったくわからないことだらけなのである。

故に、インターネット上の不思議な出来事としてずっと心の隅に引っかかり続けていた。これはインターネットの怪異と言ってもいいだろう。

しかし、今日になって「ひょっとしたらこのせいでは?」と思えるものが見つかったので仮説としてここに掲載しておきたい。

……現在、Googleで「今昔文字鏡」と検索した際に(Wikipedia以外に)上位に掲載されているサイトに、下記のようなものがある。

 

www.seiwatei.net

 

これは、Unicodeと互換性を持たない今昔文字鏡独自の文字コードを相互に対照すべく作られた一覧表であり、片方にUnicodeの文字、もう片方に今昔文字鏡でのフォントファイルが表示されるものであった……らしい。

らしい、というのはどういうことかと言えば、このフォントファイルはかつて今昔文字鏡のwebサイト上でgifファイルとして提供されていた(例えば4E00「一」に対してhttp://www.mojikyo.gr.jp/gif/000/000001.gifというアドレスが対応してリンクされている)のだが、現在はサイトが消滅しており、画像は全てリンク切れの扱いになっているのである。

そして、この消滅したサイト(http://www.mojikyo.gr.jp)はトップページはおろか、どの階層のファイルを指定してもWikipediaの「今昔文字鏡」の項目にリダイレクトされるようになっている。

これはどうも、これまでの経緯をトップページに掲載しておくことすら面倒になった管理者側が「だいたいここにまとまってるから勝手に参照してくれ」とWikipediaに説明を丸投げしているようなのである。

まぁ、トップページがWikipediaに転送されるだけならば、ある意味(?)賢い使い方だなと思うのだが、問題は「全ての階層・全てのファイルがWikipediaに転送される」ようになっていることである。例えば先に挙げたgifファイルをリンク形式で貼っておくが、おそらくWikipediaに転送されるはずである。

http://www.mojikyo.gr.jp/gif/000/000001.gif

さて、これがどういう事態を招くか、カンのいい人ならばすぐにお分かりだろう。先程の一覧表のページに貼り込まれた、10列×32行のgifファイル……これが全て消滅したサイトへの直リンクとなっており、その直リンクは全てWikipediaに転送される。つまり、このページを一度表示しただけで、おそらく該当のページは320回参照されることになるのである。

もっとも、webカウンター等では重複アクセスは弾くようになっているのが普通なので、果たしてここで320回表示されたからといってそれがダイレクトにランキングに反映されるかどうかというのは実のところよく分からない。しかし、他に今昔文字鏡という項目がランクインするような要素は微塵も存在しないように思えるので、やはりこれが原因なのではないかと考えている。ランキングに入るためのアクセス数は知るべくもないが、このサイトを参考にしている人が数ページブラウジングするだけでWikipediaの該当のページには数百から数千のアクセスが記録されるはずである。

ちなみに上記の対照表を作った人物はどうやら今昔文字鏡というソフトのあり方に相当な不満を持っていたようで、それが結実したのが上記の表であったとも言える。

しかし、このサイトのトップを読む限りではそうしたサイトを作っていた人物も既にこの世の人ではない。また、戦いの相手であった今昔文字鏡も、もはや消えてしまった。

そして、2019年現在にあっては当事者(?)がいずれも去ったというのに、今昔文字鏡の管理者側が手抜きをしてWikipediaにリダイレクトし、一方で対照表が作者の死後も更新されることなくそのまま維持されたが為に摩訶不思議な影響力が発揮されてしまった。

バタフライ効果という言葉がある。この言葉は当初の学術的な意味を離れて、現在では「蝶の羽ばたきのようなごく僅かな出来事がやがて想像もしなかったような結果を生み出す」といった意味でも使われている。

そういった意味では、この一件はまさしくインターネットにおけるバタフライ効果そのものである。画像の直リンクをしていた管理者が去ったことと、そのリンク先が消滅したこと、そしてリンク先のリダイレクトにWikipediaが設定されたこと。これらの出来事は個別に見れば蝶の羽ばたきにも等しい出来事だったはずだが、それらが積み重なった結果、ついには超巨大サイトであるWikipediaのランキングを揺るがす事件になってしまったというわけである。

とはいえ、これは上記の推測が正しければの話であり、実はあずかり知らぬところでここ数ヶ月の間今昔文字鏡が大人気であり、皆がWikipediaでこぞって読み漁っている……という可能性もゼロではない。だが、そうだとすればそっちの方が恐ろしい話に思える。

もちろん、これらのページの作者には「Wikipediaのランキングを荒らしてやろう」などという意図は微塵もなかったはずである。それなのに結果がこうなのだから、意味不明で面白い。この一連の流れはまさしく蝶の羽ばたきが嵐を生んだわけで、改めてインターネットの怪異そのものであると思った次第である。

看板に偽りがあるとして

今年も松屋にごろごろ煮込みチキンカレーが帰ってきたので、筆を執るにはこのタイミングしかないと思い、書き残しておく。

ごろごろ煮込みチキンカレーとは、松屋不定期に実施する季節メニューの一つであり、文字通り大ぶりのチキンが入ったカレーのことである。というかまぁ説明するより松屋のページ見てもらった方が早いと思う。わりと人気のあるメニューで、だいたい半年から一年に一回くらいはリバイバルされている、ある意味で定番メニューである。

さて、このごろごろ煮込みチキンカレーであるが、実のところ名称に一つ重大なミスリードが含まれている。それは「煮込み」の文字である。

一般的に「煮込み」カレーといえば、具材が「カレーである程度の長時間煮込まれている」ことを連想するものだ。というか、それが自然であると断言しても良いだろう。

しかし、ごろごろ煮込みチキンカレーにおいては、実のところそうではない。それは実際にこのカレーを頼み、鶏肉単品で注意深く味わってみればわかる。この鶏肉にはカレーのような味の濃いソースで煮込まれれば多少なりとも発生するはずの「味の染み込み」がまったく無いのである。

調理手順については想像するほかないが、この味が染みていないという事実からは、この鶏肉はセントラルキッチンで予めカレーと共に煮込まれたわけではなく、茹でるか蒸すかされた後に軽く焼かれて、その後に初めてカレーソースと合わさったのではないかと考えることが出来る。つまり、一般的な意味で「煮込まれ」てはいないのである。

というか、以前このカレーを食べた時、深夜で店員も面倒だったのか、カレーのかかり方に偏りがあり、鶏肉の一角にカレーソースがかかっていない部分があった。つまり、最初からカレーと鶏肉が一緒にされているのではなく、別々に展開されているのではないか……というわけである。

とはいえ、これは少ない労力で多用なメニューを展開する為の企業努力の結果に他ならない。そしてそれはこの鶏肉以外も同じ事である。松屋における定食メニューは基本的には牛豚鳥の肉+タレという形でバリエーションが構築されており、季節メニューについてもタレを変えることによってアレンジが行われている。

このため、ごく一部ではその基本となるレディメイドの肉を「松屋肉」と呼んでいる。松屋肉+タレというのが、松屋における定食のバリエーション構築の基本形なのである。

さて、上記の考察から、おそらく松屋肉は「(少なくとも)カレーで煮込まれて」はいない。果たしてこのミスリードは糾弾されるべきであろうか? 一般的には味のほとんど付かない状態で加熱されている鶏肉は「煮られた」……ましてや「煮込まれた」の定義からは逸脱していると言えるだろう。つまり、煮込みの看板には偽りがあるのではないか、というわけだ。

しかし、である。

カレーにおける価値として「大きく、柔らかい肉がたくさん入っている」という事実はごろごろ煮込みチキンカレーに圧倒的な価値を生み出している。それは、カレーで煮込まれたかどうかなどという些細な論点など消し飛ばしてしまうほどのとてつもない価値である。たくさん肉の入っているカレーは強い。これは紛れもない事実だろう。キチンと煮込まれた少量の鶏肉よりも、煮込んでないけど大量の鶏肉。……こういう選択肢も存在して然るべきだし、事実支持されているわけである。

また、そういった意味では「味のほとんど付いていない肉にかけてもそれを感じさせないソース」としてのカレーのポテンシャルも相当なものである。多くの場合、顧客はカレーソースと肉を一緒に口にするわけであり、そのような食べ方をする限り、鶏肉に味が染みていないという問題点は容易に覆い隠されるのである。これは他のタレに比べた場合のカレーのアドバンテージでもある。こうした点においても、ごろごろ煮込みチキンカレーは見事なメニューであるといえる。

つまり何が言いたいかというと、期間限定なので今のうちに食べておいた方が良いということである。

※なお、実際のごろごろ煮込みチキンカレーの調理手順等は不明な為本ブログの記述には推測を含みます。

続HOW TO GO

2015年3月、例の原発事故以降に定められた規制区域、その範囲外ギリギリだった富岡駅跡へ行った

当時のことは当時の記事を見てもらうとして、2011年に起きた地震及び津波の結果──つまり、その時点で4年経過している──とは思えないほどに、何もかもがそのままだった。

駅舎はそこに何かがあったことが信じられないかのようにホームだけを残して消え去っており(これは15年1月に解体されたらしいので、ちょうど撤去直後だったようだ)、振り返れば様々な建物の残骸が未だに残っていた。当時の記事に掲載した折れた電柱はその象徴だったが、これ以外にも隆起してひび割れたアスファルト、ひっくり返った車、立ち入り禁止のロープ……そのいずれもがその日に何があったかを伝えていた。

そしてまたそれから4年経った2019年3月、たまたま福島方面に行く用事があったので、再度レンタカーで富岡駅を訪れた。

そう、ここはもう駅「跡」ではない。当時と違い現在では常磐線はここまで復活しているのである。とはいえ、今のところ南側の終着駅(?)でもある。だが、これより北についても復旧の計画自体は進んでおり、訪れた当日も様々な工事が進められていた。

果たして4年の月日を経過したその一帯は、当時とは別物であった。あれだけあった倒壊しそうな家屋はほとんどが撤去され、それに伴って区割りが行われ、真新しい建物がいくつも建っている。

その変わりようを目にして、まるで狐につままれたかのようだった。

もちろん、色々なことが前に進んでいる、その結果なのだからそれ自体は大変に素晴らしいことである。とはいえ、2011年3月からの4年と、そこからまた4年とでは、全く時の進み方が違ってしまっているのではないか、そんな感想を抱いたのも確かである。

そんな真新しい建物が建ち並ぶ中に、一件だけ「割と新しそうな見た目をしているのに立ち入り禁止のロープが張られているアパート」を見付けた。表札やポストに目をやってみると、使われた形跡がなく、チラリと見える室内にも家具や家電が運び込まれた形跡がない。

怪訝に思って裏に回って給湯器を見てみると、そこにあったのは「2011年1月製造」の文字。それで全てを察することが出来た。

規制解除以降に現れた真新しいアパート群と、この築8年なのに未使用のアパート。見た目の上ではほとんど同じようなものなのに、ずいぶんと境遇が違うものである。

さて、このペースだと次は2023年に行くことになるのだろうか。その時にはきっとまた、何もかもが変わっているのだろう。そう願っている。

CP+に行ってきた(のと消えていったものたちへの鎮魂歌)

会場が近いということもあり、一応カメラ趣味者の端くれとしてCP+はほぼ毎年行っている。なので今年も行ってきた。ただ、最近は行き始めた当初の新製品を触るという目的からは若干シフトし始めていて「どうせあと数ヶ月も待てば触れる新製品並んで試す必要とかないじゃん」という気持ちが優勢になっている。なので発表済新製品の列に熱心に並んで、メーカーの人の説明を食い入るように聞いて話し込むみたいなのは最近はあんまりしていない。

ではなんでそんな状態なのに、そして今まではここでCP+のことなど記事化していなかったのに急にここで突然CP+のことを書くつもりになったのかというと、一番の理由は「発表はされたが出てこない機種が確かに存在する」からである。かつてはペンタックス 645Dなどがその筆頭であったがあれは開発凍結からかなりのブランクを経て無事復活し、現在でもシリーズが続いている。

本当に出てこなくなってしまったものはと言えば、一番最近の例はニコン DLである。CP+2016の時にタッチトライが出来る(≒動作機が既に仕上がっている)状態で、各販売店にはカタログまで配布されたにも関わらず発売延期が続き、最終的には2017年2月……つまり翌年のCP+の直前に正式に発売断念が発表された。こうした経緯から、発売中止になったカメラとしてはおそらく一番有名な機種の一つである。

また、発表されたDL3機種の中で、特に一部に熱望されていたDL18-50は2019年現在でも相当品が存在していないため、余計に伝説の存在になっている。コンバーターなしに24mm以下の広角が使える高級コンパクトは後にも先にもアレしか存在しないし、発売された機種はないのである。

ちなみにこの時(CP+2016)は実際に展示品を触っており、(当初は2016年6月発売予定だったということもあり)すぐ発売されてもおかしくない程度には仕上がっていた。またこの時多少説明員の方ともお話をしたのだが、言葉の端々に「高級コンパクトでの失敗を取り返す」という意識が感じられ、これは気合い入っているなと思いじきに出たら選択肢の内に入れよう、と思ったのを今でも鮮明に覚えている。

なおここで言う「高級コンパクトでの失敗」とは直前にニコンの高級コンパクトとして君臨したはいいものの同時期に出てほぼ同等スペックだったリコーGRに完敗してしまい、今では覚えている人も少ないcoolpix Aのことでありこっちもこっちでツッコミどころはたくさんあるのだが、ひとまず本筋とは関係ないので置いておく。

流石にこのレベルでの発売中止はなかなかないが、乏しい記憶を辿ればいくつかはそういった参考出品だけに終わった存在や、無事発売にこぎ着けたものの最終的には仕様(塗色など)が変わったものの例がある。

例えば2017年のCP+に出展されたカシオ EXILIM EX-FRシリーズの「赤外線カメラユニット」仕様である。

ご存じのようにコンパクトカメラの雄であったカシオはこのあと2018年にデジタルカメラからの撤退を行うため、これが国内展示会での最後の出品となったのだが、こうした製品化に至らなかったモデルの提案も行われていたのである。

そもそもこのFRシリーズのユニットも、分離型であることを活かして当初のスポーツ・アクションカム的な立ち位置の他に、監視カメラ用の超高感度CMOSを使用したユニットや、ゴルファー向けユニットであったり、高所点検用のユニットであったりとかなりニッチなところを攻めていたのだった。

おそらくこのカメラも、高所点検用ユニット同様、台数は少ないが確実に価格が維持できる(+この内容ならガジェットオタクにもウケる)という辺りを狙っていたのだろう。赤外線センサー部分自体は実績のあるFLIR社とのコラボであり、同社のコンシューマー向け製品としてはスマートフォンに内蔵したり、あるいはスマートフォン向けの外付けユニットが存在していて、このカメラもある意味でその延長線上に存在していた。

当時仕事でこうした赤外線カメラを使っていたことがあったのだが、そのカメラはNEC三栄(現日本アビオニクス)の数百万もする業務用機で、壊したらどうなるかわかってるだろうな、と脅されながらの使用であったので、もしこの赤外線EXILIMがそれよりも安価なラインに降りてくるのであれば(おそらくはそうなるはずだった)、業務用として是非欲しいなと感じたのである。しかし、結局これも世の中に出ることはなかった。

また、このカメラはブースのメインとしてではなくあくまでも開発中の参考展示としてひっそりと公開されていた。当時のカシオはCP+に来るようなカメラに熱心な層──要するにカメラオタク──向けの製品を持たなかった為、ブースの雰囲気も女性層へのアピールがメインとなっていた。これがカメラオタクにとっては興味の範疇外と思われてしまったのか、デジカメWatchをはじめとした国内ニュースサイトにもカシオブースの詳細なレポートは少なく、結果このカメラは全くと言って良いほど取り上げられていない。唯一日経エレクトロニクスが記事化したくらいである。本当に誰も知らないカメラなのだ(おそらく一般ユーザーが触れたのはこの時のみ)。

大々的にアピールをブチ上げた末に思いっきりコケてしまったが故に「カメラオタクなら誰でも知ってる」象徴的な存在になったニコンDL。

それとは対照的に「ニュースサイトを読みあさったり実際に会場に足を運んだカメラオタクですら誰も知らない」カシオ赤外線EXILIM

 この他にも、ケンコー初のレンズ交換式デジタルカメラになる予定だった……のに開発してる最中にペンタックスからQが発売されてしまい、用途が被る(Qはアダプター経由でCマウントレンズが使用可能)ことからフェイドアウトしていったケンコーCマウントカメラ(2011年3月展示・ペンタックスQは2011年8月発売)や何本かのレンズなど、こうした「展示会にしか出なかった」例は確かに存在している。

しかしここまで書いてきたように、消えていったカメラやレンズにもそれぞれのエピソードや狙いが存在する。しかしそれらはいつしか皆の記憶に溶けて、消えてなくなってしまうのだ。なので、展示会へ毎年行くようなカメラオタクの一人として、せめてそれを見たり触ったりした者の一人として、それらが確かに存在したことを何処かに書き記しておきたいと思った次第である。

どんなものでも、展示されているものが無事製品化されるまでには様々な苦闘が存在する。その上で、たまには「消えていったものたち」へ思いを馳せるのも悪くはないのではないかと思うのである。そして出来れば、そうした展示段階のものが少しでも報われるようにと、強く願うのである。

今年の話まったくしてねぇ。