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インターネット

無名サイトのつづき

すばらしくて、やがて退屈な日常を

マツコ(タモリとかでも可)が絶賛「してない」ものに囲まれて日々を過ごしていきたい。

2017年のTC-1

もうだいぶ前のことになるが、この記事を書いた直後に借り物ではない自分のTC-1を買ったヤフオクでどうにか動作するがジャンク扱いという形で売り出されていたそれは、手元に届いてみると外装にスレの目立つながらもとりあえずは動いているように見えたし、何より当時の中古相場の6掛けくらいの値段で買ったので文句を言う気にもなれない感じの代物であった。

以来数年、時たま不安定な動作を見せることもありつつTC-1は元気に動いていたのだが、あるとき電池ブタのカシメが取れてしまった。この電池ブタ部分、実はとても繊細な構造をしており、電池ブタのロックにクリックを出す為だけに極細のスプリングの先に直径1mmほどの鋼球をセットしてあり、この鋼球が溝にハマることでクリックを出す仕組みとなっている。この手のコンパクトによくあるスナップ式でもよさそうなものなのに、ずいぶんとこだわっているのである。

当初はDIYで直そうと思っていたのだが、この極細のスプリングを縮めながら鋼球をセットし、素早くカシメのフタを被せて固定するという作業は思いの外ストレスの塊であり、しばらく格闘した末飛び跳ねるバネの紛失というプレッシャーに耐えきれず、結局在野の修理業者に頼んだのだがそれなりの費用がかかってしまった。

このカメラにおける拘りのポイントはそれこそ数限りなく挙げることが出来ると思うが、なにもこんなところをこんなに繊細に作らなくてもいいのにと思ったのは確かである。神は細部に宿るというが、こんなところにまで宿っていたら八百万ですら足りなくなるのだはと思うことしきりであった。もちろん、それがこのカメラの最高な点なのではあるが。

そしてまたしばらく使っていたのだが、あるとき北海道旅行に向かう機内の中で「ファンクションレバーが片側で固定されてしまい露出補正が-4.0のまま固まる」という凄まじい故障を発症してそのままウンともスンとも言わなくなってしまった。気付いた瞬間離陸前の機内で三分ほど呆然としていたのだが、ふとISO感度を四段落とせばプラマイゼロなのではということに気が付いて旅行をそのまま乗り切り、以降もそのまま使用していた。装填の度に感度を指折り数えるのがちょっと面倒ではあるが、ネガなら多少露出がブレても問題ないということもあり、結局修理もせずこの状態でまたしばらく使っていたのだ。

しかし、いい加減不便なのでマトモな個体へと買い換えをしようと思っていたら、どうも状況が変わっていることに気が付いた。2014年頃のTC-1の相場は並品ならば4万円くらいといったところだったのだが、2017年現在においては更に値上がりしており6~7万円くらいとなっている。実は動作が不安定だった頃に一度ケンコートキナー(コニカミノルタ製品の修理が移管されている)に修理費用の問い合わせをしていたのだが、当時の回答は状況にもよるが2~3万円かかるということであり、当時の中古価格を考えると外装の程度が悪い手持ちのTC-1を直すのはあまり得策には思えなかったのである。それならば適当な中古を買って入れ替えた方が得策であった。

しかし、いざ今になってみると、もはや4万円ではマトモな中古機は手に入らない。急遽予算を多少拡大してみても後の祭りで、結局マシな中古を手に入れて玉突きで入れ替えるというプランはあっさり頓挫してしまった。

というわけで、今となっては2~3万出してでも修理をした方が得策ではないかと思い中野にあるケンコートキナーショールームまで持ち込んでみることにしたのだ。

主要な病状としては下記の通りである。

・前述のファンクションレバー不良
・もし部品があれば電池ブタ交換希望
・特定の条件下で空にフレアが映り込む
・その他動作が不安定

受付の方の話によれば、TC-1は未だに修理の依頼がある機種であり、部品も一部欠品は出ているものの、可能な限り対応して下さるとのことだった。もし基板等の問題であればその分の部品代は必要になるが、清掃で直ればさほどかからないのではないかという話であり、とりあえず2~3万見ておいて欲しいということであった。もちろん生産終了から10年以上経過した機種なので未だに部品があるだけでもありがたいし、この辺りは以前電話で問い合わせした際の見積もり通りなのでそのまま預けることとした。これが日曜日の夕方の話である。

すると、翌月曜日の夕方には電話がかかって来て、見積もりが完了したとのこと。預けたの昨日の夕方だよな? と半ば信じがたい気持ちで内容を聞くと、接点不良は基板交換不要であり、電池ブタは在庫があるので交換可能、フレアはカメラ内部の遮光板の交換で直るとのことだった。

※余談だが、TC-1はカメラの裏蓋を開いて後玉側に箱形フードのような植毛付きの遮光板が取り付けられており、電源オンと同時に展開して有害光をカットするように出来ている。この部分の植毛が剥がれるとフレアが出てしまうことがあるとのこと。このフード状のフレアカッターはカラクリ仕掛けのようであると同時に開発者の画質に対する執念というか一種の怨念すら感じる部分である。というか先述のように電池ブタ一つ取っても頭おかしい構造しているので自分では絶対にこのカメラを分解したくない。元に戻せる気がまったくしない。

そしてここまでやって値段は約15k(電池ブタ・遮光板部品代込み)だという。前述通り2~3万くらいは覚悟していただけに、あまりにもあっけない回答に正直ポカンとしてしまったのだが、こんなことであればもっと早く修理に出しておけば良かったと思いつつもちろん修理続行の回答をして電話を切った。

するとまた翌日の夕方電話がかかってきて、何かトラブルでもあったのかと思えば「修理が完了した」とのことであった。預けてから50時間くらいしか経ってないのに、である。

もちろん修理は早いほうがいいが、ここまで早いのは正直経験したことがない。というわけでその週末にまた中野へ行き、引き取ってきた。もちろん各部は完璧に修理されており、修理部分には半年の保証も付くという。

引き取りがてらこの対応速度について聞いてみると、どうも修理部門は中野のケンコートキナーの営業所の別フロアにあるらしく、ショールームに持って行けばほぼ直結なのでこれほどまでに早いのだという。もっとも、あまりに早すぎるせいで自分以外にも不安がるお客さんはいるということだった。もちろん理屈がわかればまったく不安要素はないのだが、ともかくカメラの修理としてはこれまでに体験したことのないスピード感だったので新鮮だったのは確かである。

ちなみに他の機種の修理についても聞いてみると、レンズ類は交換できるエレメントが欠品していることが多くカビ取り等は限定対応(ソニーからの移管直後くらいにいくつか頼んだことがあるが当時の段階でミノルタ初期AFレンズとかだとかなり厳しかった覚えがある)。カメラボディについても部品がないとどうにもならないが、とにかく一旦持ってきてくれれば相談は出来るとのことだった。

[最終的な修理代内訳]
部品代 1,000円(電池ブタ500円・遮光枠500円)
技術料 12,500円
送料  0円(直接持込/引取)
消費税 1,080円
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合計  14,580円

コニカミノルタの撤退からは既に10年以上経つので、本来であれば部品類も全て処分されていてもおかしくないタイミングながら、今回のように可能な限り対応してもらえるということで、TC-1に限らずもしコニカ/ミノルタ製で修理が必要なカメラがあれば検討の価値は大いにあるのではといったところである。何よりも「メーカー純正」の修理であることだし。

ともかく、撤退後10年が経過した現在においても関係者各位のご尽力によってこのような体制を維持されていることについては感謝の念でいっぱいである。これでまたTC-1を使い続けることが出来るのだから。

 

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MINOLTA TC-1 + FUJI VELVIA 50

f:id:seek_3511:20170506225436j:plainMINOLTA TC-1 + KODAK PROFOTO XL 100

どこかに行こう ランダム旅行のススメ

私事にはなるが、毎年冬は旅行の季節である。それも年明け後である。  

何故かというと普段から貯めているJALのマイルが期限切れになり始めるのが年明けからだからというだけのことなのだが、閑散期で特典航空券に変えるにしても必要マイルが少なくて済むという利点もある。そういうこともあって冬は旅行の季節なのである。

参考までに2016年は女満別空港に行き北見厳寒の焼肉祭りとかいう零下の屋外で肉を焼いて食べるクレイジーなイベントに参加したり、海豹の聖地オホーツクとっかりセンターに行って海豹のやる気のなさを愛でたりやることが無いのでそのまま宗谷岬まで行ったりした。2015年は函館に行っており、その際の模様は一部このサイトでも記事化している。

しかしいくら閑散期とはいえ、北海道に行くには10,000マイルほど必要になる。期限を迎えて無駄になるよりはいいし、年に一度のささやかな贅沢ではあるのだが、一方でまた自由なんだからギリギリまでコストを削って回数を増やすという方向性もアリなのではないかと考えていた。

そんな中、この冬は何処に行こうかなんて考えていた時に発表されたのが「どこかにマイル」サービスであった。詳しくはこの辺りを参照して頂きたいのだが、日時を指定するとランダムで四カ所目的地が選ばれ、三日以内にその中の一つの予約が確定するというシステムである。そしてこのシステム、交換に必要なマイルが6,000マイルで済む。

穿った見方をすればつまり閑散期の閑散路線で空気を運ぶよりはマイル客でもいいから詰め込んだ方がいいってことなんじゃねーのという話なのだが、しかしこのシステム、航空会社はそうして搭乗率を上げることが出来るし、到着した先の観光地にはこれまで来なかっただろう人が来るし、そして何より旅行者は低コストで旅に出ることが出来る。損する人がいない素晴らしいシステムなのである。一部では「マイルガチャ」なんて呼ばれているそうだが言い得て妙である。

というわけで、ちょうど1月末に期限を迎えるマイルがあったことから、この仕組みを利用してこれまでよりもさらに低コストで旅に出ることにした。

今回はこうした流れからコンパクトにまとめるべく、土曜出発の日曜帰着で無理のないスケジュールを組むことにした。ちなみに希望の時間をセットしてランダムで提示された行き先は更新ボタンを押すことでシャッフルし直すことも出来る。そんなわけでサクッと予約を済ませ、ランダム性に身を任せることにした。

さて、ここで本来ならば「どの四つからどれが選ばれたか」書くべきなのだが、ついうっかりその四つがどれだったのかメモり忘れてしまった。そしててっきり予約メールに書いてあったかと思ったらまったく書いていなかったのである。そういうわけでこの記事最大の盛り上がりであるところの「どの四つからどれが選ばれたか」という点についてはまったく無力なのだが結果だけ言うと選ばれたのは北九州空港着便であった。

さて、北九州といえば関東在住の身にとっては、正直言って通過点としての記憶しかない。これまでの旅行や出張で福岡県内には何度訪れたものの、博多のイメージが強く、そういえば北九州に降り立って何かをしたという記憶がないのである。つまり何が言いたいかというと、こういう自分からは行かなかっただろう場所が選ばれるというのは望むところだということである。

持論になるが、ある程度旅慣れると次は何処に行こうかというのが案外難問だったりする。目的地を決める上では行き先に何か見たいものがあるとかそういうのが理想だが、一方でそれだけのために遠くにお金を使って向かうことに対してコストパフォーマンスというか、リターンを求めてしまう気持ちも正直に言って存在する。

翻って今回のような旅は、ある意味では行き先だけがあってそこがスタートである。それだけに「行こうとは思ってなかった場所」に連れて行ってくれる──それも格安で──というのはとてもありがたいことだった。

行き先が決まったとなれば、すぐさま移動手段の確保である。公共交通機関を利用するのもいいが、北九州空港はあまりそういう便が良さそうな位置でもないので素直にレンタカーを借りることにした。二日で約7,000円。これで自由が手に入るなら安いものである。次に宿泊先だが、色々考えた末小倉で安目のホテルを取ることにした。駐車場込みの素泊まりで約4,500円。ここはマイルで節約した分豪華に行くと考えることも出来るし、思案のしどころであるが、今回は当初の目的通り全体を安くまとめて将来的な旅行回数を増やすという方向にした。

これで宿と足が決まったので、あとは何を見に行くかである。早速近辺に土地勘のあるだろうフォロワーに聞いてみると、こうしたネタ含みの旅行という気持ちを十分にくみ取ってもらいつつも様々な提案を頂いた。写真的には日本三大カルストの一つ平尾台があり、今ホットなのは今年中の閉園が決まっているスペースワールド辺り、そしてメシはうどんがオススメだという。そういえば去年のGWにR439走破がてら四国カルストに行った時にとても景色が綺麗だったので、あれに並ぶとなれば行くしかないだろうと思い、スペースワールドもなくなるとなれば今しかないし、うどんも食べに行きたいしで腹は決まって、だいたいその辺りを無理なく巡れるように事前に目星を付けておいた。

そして旅行当日、晴れたらいいななんて脳天気な願いをあざ笑うかのように、日本全土を猛烈な寒波が襲っていた。普段なら降らないような地域ですら積雪の報が流れる中、羽田空港から飛行機は飛び立ったのだった。

なお、出発時の案内では現地悪天候のためダメだったら福岡空港ダイバート、それもダメなら羽田引き返しという条件付きでの離陸であった。特典航空券で払い戻しにも制限があるし今更レンタカーや宿をキャンセルも出来ないのでそのまま搭乗。

予想通りというかなんというか、やはり搭乗率としては満席ではない。しかし空席ばかりというわけでもないので、この路線においてはマイル客はスキマを埋める程度の役割のようである。乗ってしまえば後は祈るだけである。

果たして祈りが通じたのかどうかは不明だが、一時間少々のフライトの結果、無事北九州空港に到着した。すぐさま小雪が舞う中レンタカーを借り受け、スタートである。車種は前期型のノートで安い方のクラスの割には豪華で気分がよい。外を見れば天気は目まぐるしく雪と曇りと晴れを行ったり来たりするが、海側の空港はともかく、山側には晴れ間が見えるのでとりあえず平尾台を目指す。

……と、途中で妙に駐車場が車でいっぱいのうどん屋を見付け、どうにも気になってUターンして昼ご飯とする。ここがいきなりのヒットであった。節系の力強さを感じつつも甘辛いツユに、讃岐とはちがうコシを感じつつもなめらかな柔麺、そしてごぼう天と上陸一口目からすばらしいうどんを堪能することが出来た。ちなみに食べてから調べたら昼だけ営業の地元では有名な店とのこと。旅先での飛び込みはなかなか勇気がいるが、これだけのヒットが出るならやってみるものである。

余勢を駆ってそのまま平尾台へ。雲は残りつつも時折見せる晴れ間に夢中でシャッターを切る。が、寒い。ほぼ吹きっ晒しの環境下で、時折雪もちらつく過酷な環境である。なんで暖かい筈の九州まで来て雪に降られているんだろうと思いつつも、そうした雲と荒涼としたカルスト台地は遠くに来たことをあまりにもリアルに実感させてくれた。

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ついでにせっかくだからと思い近くにあった千仏鍾乳洞に入ったら、洞内が途中から水没しているという珍しい構造のところであり、滑る足下に気を付けつつ、膝上まで捲ったジーンズを濡らしながらかなりの冒険気分を味わうことが出来た。

が、このクソ寒い中で、場所によっては飛沫を上げて足下を洗い続ける湧水に突っ込むのである。正直途中からは足の感覚がなくなりそうだったが、坑内ということもあり水温は一定らしく体調に危機が及ぶようなことはなかった。これもなかなか出来る経験ではないので、これはこれで非常に面白かった。ただ一つ誤算があったとすれば、年間を通じて一定だということで外よりも暖かい洞内と、湧水による豊富な湿度のおかげでカメラのレンズが最初から最後まで曇りっぱなしでロクに写真が残っていないということくらいだろうか。

その後は一般道で北進しつつ、門司、門司港のレトロな建物を巡っていく。門司港駅が改装中だったのは残念だったが、歴史ある町並みを堪能することが出来た。そうこうしているうちに日没を迎えたため、夕飯の検討に入る。

ここで敢えて関門トンネルを使って、一旦山口県側に入る。実は車の場合いつも高速なので、ここを橋で越えることはあるがトンネルで越えたことはなかったのだ。感想はというとまぁ普通のトンネルなのだが、なんとなく両方達成すると気分がいいものである。

山口県側まで戻ったのは実は牡蠣小屋に行くためであった。どうも探した限りだと福岡側にもあったようなのだが、雰囲気がよさそうだったのでわざわざ山口側まで足を伸ばすことにしたのである。

ナビに指示されるまま漁港らしき(夜なのでまわりが真っ暗でよくわからない)場所の更に奥、一体こんなところに店があるのかというような場所に突き当たると、突然ビニールハウスのような店舗が現れた。それこそが目的地たる牡蠣小屋であった。

以前行った伊勢の牡蠣小屋は定額食べ放題というシステムだったが、ここは一カゴ1,000円とオプションで各地の牡蠣が選べるという選択制。色々考えて地元産と福岡産のを一つずつから始めたのだが、結果としてはその二つで十分だった。たぶん40個くらいは食べたような気がする。おまけにマスターに横浜から一人で来たことを告げたところ、少しオマケしてもらった。人情が身に沁みる旅である。

腹も満腹になったところでホテルへと入り、少しの間ホテル周辺をうろつく。するとTwitterでは「せっかくだからうどんを喰え」という流れになった為、本日二度目となるうどんを食べに行く。

といってもこの時間(既に十時近かった)に開いているうどん屋はそうは多くないので、当地で有名らしいチェーンの資さんうどんである。余談だが、この資さんうどんは多くの店舗が24時間営業という関東圏でのうどん屋の常識を打ち破る営業形態である。讃岐をはじめとした多くの地域で「営業時間が短ければ短いほどうどん屋として偉い(?)」みたいな風潮すらある中で、この24時間うどんを食べたいという姿勢は見習わなければならないのではないだろうか。誰が誰にだ。

冗談はさておき、ほとんど深夜のような時間にも関わらず店内は結構混んでいて、やはり日常の中にうどんがあるのだなという気持ちになった。そして更に満腹になった。ホテルに帰りそのまま倒れ込むように就寝。主に食べ過ぎのせいで。

翌朝。

朝風呂をキメたらチェックアウト前に簡単に駅前を散歩し、二日目の行動を開始する。今日の目標はスペースワールドとうどんである。正直そろそろラーメンとか喰ってもいいのではと内心思っていたがうどんである。Twitterで教えてもらったオススメの店リストから一番近いところを選んで行ってみる。するとまたこれが衝撃であった。

昨日は暖かい汁うどんばかり食べていたので目先を変えてめんたいマヨぶっかけ(温)という変化球を頼んでみたのだが、これがまた細めの麺が透き通り輝いているという、今までにないものであった。のどごしはなめらかでかつコシもあり、いわゆる福岡うどんのイメージとは若干異なるのだが、文句なしのうまさであった。

事前に調べていたところ、更に隣町になるがこの店と同系列の店があるらしいのでこの時点で続けて行くことに決定。20分ほど走って二件目へ。今度は冷やしでぶっかけを頼む。当然うまい。むちゃくちゃうまい。なんだこれ。

結局二日連続で行動に支障をきたすほどに食べ過ぎたわけだが、それにもまったく悔いがないという恐るべきうどんであった。というか今これ書いてる中でもまた食べに行きたい。そのくらい美味しかった。この時点で二日でうどん四杯目だが気にしない。

その後はスペースワールドに移動したのだが、そういえば旧製鉄所遺構が世界遺産登録されたんだよなと思いつつ高炉跡(※これは世界遺産ではない)やら八幡製鉄所事務所棟やらを先に見て回っていたらいつまで経っても遊園地に辿り着かないという事態を引き起こした。まぁこれもざっくりとしか予定がなく現地の風向きに合わせる一人旅の良い面である。

スペースワールドは混んでいるというほどの人の入りではなかったが、かといって人の気配がないというわけでもなく、ごくごく普通であった。閉鎖の報が流れたから人いっぱいか誰も居ないかどちらかに振り切れているのかと思っていたのだが、そういうわけでもなく、ただただ淡々としていた。例の魚のスケートリンクも中には入らなかったが、特に何か謝罪文が張り出されているといったこともなく、やっぱり普通であった。

そしてこの年にして男ひとり遊園地という偉業の達成に画面右上で実績解除のテロップとファンファーレが鳴るのを内心で噛みしめつつも、ぐるっと一周回ってみたが、やっぱり特別な悲壮感はなく普通であった。

もちろん大盛況の状態を基準に作られた建造物である遊園地というのは、少しでも人出がそれを下回るとガラガラの通路が出現することになったりと途端に悲壮感が漂うように出来ているのだが、しかしメンテナンスの痕跡は確かに感じるし、実際それほど待たずに乗れてかつ誰もいないというわけではないというある意味プラスに感じられる程度の人は来ていた。来園者にとってはそう悪くもないように思えたのである。

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そんな中、絶叫マシンは苦手なので、最後にここに来た記念として一人で観覧車に乗ってみることにした。ここでもまたろくでもない実績が解除されたなという自覚を感じつつもゴンドラに乗り込んだ瞬間、一つ思い出したことがあった。高いところ苦手だったんだった。

高所恐怖症の人というのは、起こりうる最悪を勝手に想像して自分で自分を追い詰めてしまうが故に恐怖を感じるそうだが、実際にこの時の気分もまさにそれで、普段よりも強い風のことや、ゴンドラが軋む音や、果てはゴンドラ内で席を移動するときの僅かな揺れなどの全てが自分にとって敵であり、空中に取り残されたような気分を味わう羽目になった。

とはいえしばらくするとそれも落ち着いて、窓の外には暮れゆく街が広がっている。先ほど足を伸ばした場所も含めて眼下に広がる町並みには、やはり乗っておいて良かったと感じさせるものがあった。そしてふとゴンドラの中を見渡すと、扉とは反対側にノートがつり下がっていた。いわゆる無人駅などにある駅ノートと同様の意図で置いてあると思われるそれを開くと、1ページめから閉園に触れた書き込みが続いていた。ここに思い入れを持っている人達がいて、そうした人達の思いに触れると、なんだかこちらもしんみりした気分になった。

そういえば、思い出の場所が消えてしまったということはいくつも経験がある。そして消えてすぐの頃は容易に思い出せたそれらも、いつしか景色が上書きされていく中で次第に薄れていってしまう。消えゆくものであるならば、せめてそうなる前に触れてそして書き残しておこうと考えてここに来た人達のことを考えると、なんとも言えない気分になる。寂しさかもしれないし、最後に間に合っている羨ましさかもしれないし、なんというか一言で言い表せないのである。

もう来ることはないかもしれないし、興味本位で初めて来た者が言えた義理はないかもしれないが、そういう思いの一端に触れただけでも来て良かったのだと思う。

しんみりしながらも車に戻り、いよいよ旅は最終局面に向かっていく。指定された航空便はほぼ最終便なのでまだ夕飯を食べる時間は残っているが、やることと言ったら一つしかない。うどんだ、うどんを喰うのである(半ばヤケ気味)。

実際うどんに始まった旅なのだからうどんで終わらせるのも悪くないかとは思ったものの、既に昨日から数えて三食続けてうどんであるし次が四食目となるともはやうどんグランドスラムとでも言いたくなってくる。四大大会制覇である。

そして最後に残された店、こいつが強敵であった。「福岡のうどんらしいうどん」というのは聞いていたのだが、注文時に大か小か聞かれてうっかり大、ついでにごぼう天を頼んだところ、これがまぁ想像を超える代物だった。

まずごぼう天はこれまでに他の店で目にしたり口にしてきたような笹掻きではなく、丸々切ってあるか半割にしてあり、トータルだとゴボウ1/2本くらい食べてるのではという怒濤の量。 食物繊維の鬼である。そしてこんな丸のままなのにうまいのだから悔しい。

うどんもまたここに来て初めてテンプレート通りに福岡うどんらしいというか、一部で言ういわゆる福岡うどんの特徴の「太い・柔らかい・汁を吸って更に柔らかい」という基本を忠実に守った代物であった。ここで初めて「ツユ追加」という独自の文化を経験することになる。食べててツユが足りなくなるって、ザル蕎麦じゃないんだぞ。そして飲んでもいないのに目に見えて汁が減ったということは、すなわち麺の量が増えていることを意味している。故に食べても食べても終わらない。

結局、都合五食目のうどんはなんとか完食して面目を保ったが、最後に待ち受けていたのはまさしくこの地でなければ味わえない、本場の味でありラスボスであった。

結局この二日間常に食い過ぎているなと思いつつも最後の力を振り絞って空港へと戻り、最終の飛行機までには腹も多少は落ち着いた。そして特に問題もなく羽田まで戻って、旅は終わりを告げたのであった。

翻ってみると、今回の旅はランダム要素とテーマ性がうまくバランスして楽しく過ごすことが出来た。そもそも行き先からしてランダムだったわけだし、その訪れた先から妙なテーマ性が派生してひたすらうどんを喰いまくることになったのもまた楽しい偶然の産物である。

そして最初の方でも述べた通り、この地は「どこかに」行くというのでなければ、これまで独立した目的地としては考えてもいなかった場所だった。しかし、行ってみればこの通りである。そういうところに気付かせてくれたというか、行く切っ掛けを作り出してくれたというだけでもこの旅は大成功だったと言える。

ましてこの旅行、費用としてはたいして掛かっていない。その気になれば二度目、三度目が試せるくらいのマイルはまだ残っている。別にJALの回し者ではないし書いたからと言って何か得があるわけでもないのだが、ステマどころかここを見ている人達にはダイレクトにマーケティングしたい。そんな気分である。これは本当に格安移動の一つの革命だと思う。マジで。

……ランダム旅行、正直言って超が付くほどオススメです。是非その際は適度にスカスカの予定を組んで、出来れば現地で見たもの聞いたこと知ったことに流されつつ、楽しんで。早くも二度目の予約を検討するくらいには、いい旅でした。

ノウとハウ ~非創作同人誌を作ろう~ その3

前々回と前回の続きである。

前回までに一応本は出来たということにしておいて、当日イベントに参加したりする場合の話。例によって話半分に読んで参考にして頂ければと。

6.宣伝と金額設定
と、その前にイベント当日前までにしておくべきことがある。宣伝である。この辺りというのは正直答えがわからない。一応過去やってみたこととしてTwitterでの定期宣伝程度のことはしているが、それ以上の何かというのはしていない。

ただぶっちゃけた話Twitter等で話題になるかどうかというのはそのクラスタの中で発言権のある方にリツイートされるかどうかで決まってくるという身もフタもない話があるのであんまり深くは触れない。結局どういう方法でターゲットユーザーにリーチさせるかというのはいつも難問である。

と、そんな中でTwitterでの宣伝時に心掛けていることを一つ。

まず、時期的にはある程度早め(他のフォロワーがちらほら宣伝し出したら)にやっといた方が良いのではないかと思う。もちろんこの時点で本が完成してないというのはあり得る話だが、とりあえずやるかやらないかくらいは伝えといた方がいい。

名前の後にサークルスペース入れるやつもやっておけば場所はともかくこの人出るんだなくらいの認識は与えられる。なお、終了後通販等を使う人もいるので少しの間残しておくと便利だとされているので余裕があれば終了後も残しておいた方がいい。

そして、具体的に情報が出せるレベルまで完成したらいよいよ本格的な告知になるが、この告知では1ツイートに可能な限りの情報を詰め込むようにしている。というのは現在のTwitterの仕様上、同じ内容のツイートをバラバラに定期ポストするよりは一つのツイートに情報をまとめてそれをマイページにピン止めしておいた方が効率が良く、RT/fav数もバラけないからである。最近は自己RTが出来るようになったのでこれで定期ポストの代わりになる。

内容としては140文字で「スペース番号・日付」「タイトル」「内容」「価格」「あらすじや要約」が入ってればいいと思う。そして四枚まで画像が添付出来るので、表紙とサンプルページくらいは上げておくといいだろう。

あとはサークルページやwebカタログを充実させたりするのも良い手だと思うが、正直これらの宣伝の販売部数への寄与度がどのくらいなのかはサッパリわからない。ただまぁ、初めて参加する上では宣伝しておくに越したことはないだろう。良いモノだから通りすがりでも現地で見る人が見れば分かってくれるなどというのは幻想のような気がする。

7.頒布価格を決めよう
次、前回サラッと流して終わりにするつもりだったけどやっぱり詳しく書いとくことにした頒布価格である。これも相当に難しい。一応ここで推奨するのは「ある程度売れば赤字にならない程度の金額」である。初めての出展を最小限のリスクで、というテーマからすればこの部分がまさしくリスクの勘所である。販売価格を決める上での論点はいくつかある。

・相場を気にするべきか
・(相場を鑑みて乖離がある場合)赤字頒布に踏み切るべきか
・原価回収を目標にするとして何処を原価とすべきか

この辺りはややこしい議論があり結局は個人の自由ということになっているのだが、個人的な結論は「タダで配られたって要らんモンは要らんのだから多少高くなろうと赤字頒布すべきではない。そもそもあの場での500円や1000円の価値は案外低い、コピーだろうとオフセットだろうと500円取れるのだから、自分の本(の仕様と内容と値段)に引け目を感じるべきではない。あんまりに内容と価格が乖離してるならともかく」である。

大事なのは「興味がなければタダでも要らない」というのは「興味があればいくらだろうと買う」と対になっていることである。まぁもちろん限度はあって明らかに見劣りするものに二千円も三千円も払ってもらえはしないと思うが、しかしあの場所で他より100円200円安いから買う(あるいは100円200円高いから買わない)、という考えはあまり成立しないように思える。なので原価割れで配るような真似は必要ないと思っている。

というか、印刷の仕組み上ロットがまとまれば単価は下がるのでたくさん売れる大手ほど安く作れるのである。つまり回収を第一にするなら弱小のところほどより高く売る必要があるわけだ。これを「自分のところは弱小だから……」と大手より更に安くしたりしたらますます投資の回収は難しくなってしまう。なもんで、相場を完全に無視しろとは言わないが「大手より高い」ことを心配する必要はないと思っている。

で、なんでここまで回収にこだわるのかというと、少なくとも一冊売るだけで赤字が増えていくようなのは、趣味として長く続けづらいからである。せめてトントンに持って行けば「儲かってはいないけど楽しかったからいいや」という話になるし、その辺りが健康的な姿ではなかと思っている。

この辺りの売り手側の都合なんて買い手からしたらまったく関係ないというのはそれこそ百も承知だが、少部数でやるというのもそれはそれでリスク抱えているので、その辺りをほんの少しだけでいいので心の隅にでも置いといて頂けると幸いである。

8.販売までの準備
そして、販売までの準備である。基本的には即売会というのはスペース(机と椅子)だけが提供されて、あとのことは自分でやるというのが基本である。よって、同人誌を書いて売るというのは書く人としてだけでなく、宣伝する人や売る人やそれらを管理する人にもならなくてはならない。一人何役もこなすわけで、それが故に楽しいというのもある。

今回の話では小ロットを売り切るという点にフォーカスしているので、本は手元にあるものとする。本は重たいので多部数を捌く場合は宅配搬入とか前日搬入色々あるのだが、今回は手で持ち込めるくらいの部数を当日朝搬入というパターンを想定している。ちなみにB5だと、紙質にもよるのだが40Pで100冊くらいが手持ちの限界のような気がする。とにかく紙は案外重い。

前日までにやっておくべきことは、最低限準備会提出用見本誌の作成(申込書に付属)とかサークルチケットへの記入・押印とか釣り銭の用意とかブースの飾り付けを考える辺りだろう。ともかく売り子のアテがなければ一人で回さなければいけないので、ヒマそうな人材が確保出来ると非常に役に立つが、一方で金勘定を任せることにもなるのでセンシティブな部分ではある。まぁ手伝ってくれる人はいるに越したことはない。

9.販売当日
当日はサークルチケットを使用して一般よりも一足先に入場し、ブースを設営することになる。限られたスペースをどのように使うかはある程度任されているが、まずは本が見やすく、手に取りやすく、価格がわかりやすいということが大事ではないかと思っている。表紙だけで掲載内容が全てわかるのであれば別だが、たいていそうはなっていないのだから。

もちろん実績があり前評判も高ければジャケ買いというか、もうサークル名だけで中身見なくても買うわみたいな状態になるし、それが更に高まれば行列が出来るのだが、幸か不幸かカメラジャンルに関してはそこまで(列が出来るまでの集客)はほとんど見たことがない。故にじっくり手に取って判断してもらうことが大事かと思っている。

 ただ、基本的にブース(机の上)はある程度狭く、平面的に本を並べると数種類もあればもう置き場がなくなってしまう。もし複数種類の本を並べるのであれば、平面的ではなく、棚やポップを活用して三次元的に配置した方がいいだろう。というのも、一人立ち読みしてると肩越しにチラ見するしかないのだが、買う方の目線からするとこの時に平置きだと非常に視認性が悪いのである。この辺りは一般参加者の立場でも色々観察できる部分なので、その辺り明らかに場慣れしてるサークルのワザを目で盗むのも手ではないかと思う。

あとはまぁ、これまでの努力を信じて売るしかない。きっと一冊目が売れたとき、大なり小なり報われた感じがすると思うし、損益分岐点さえ超せばもう何も怖いものはない。……そしてもし、完売するようであればそれは次も期待してるぜという大いなる肯定である。

……というわけで、駆け足ではあるが、 情報系同人誌を作って売るまでに考えることについて思い付くままに書き綴ってきた。これはあくまでも一例なので、ここに書いてあることが全てではない。だが、何処かしらは参考になるのではないかと思っている。

繰り返しになるが、これを書いたのはただ一つ「面白いから(創作は無理だと思っている)お前らもやれよ」という気持ちからである。もし興味があるのであれば、乗り越えるべきハードルはそう高くない。そして一度でも作り手側に回れば、続けていくかどうかはともかくとしても、何かしら見えてくるものはある。例えば一冊の本にかかっている労力を肌身で感じることが出来るようにもなるし、そうするとますます他の人の作品やそれを作り上げる努力に対して経緯を払えるようになるのだ。

そしてまた、作り手側に立てばそうした偉大な先人達とも「いち書き手」という立場の上では対等である。いつか並び、越えることが出来るように夢を見るのもそう悪いことではない。そういうのも含めて楽しいからいっぺんやってみて欲しいと、そしてその結果生まれるであろうものすごい情熱の塊を目にしてみたい、それだけのことなのだ。

そして最後に一つ言っておこう。「同人誌で大儲け」は正直なところここに書いてあるようなレベルでは幻想の世界である。プロ並のモノが書ければ別だが、そういう人はつまりプロとしてもやっていけるレベルであるわけで、つまりはかなり高いレベルの上の方であれば儲かるのかも、というくらいの話である。まぁ異世界転生くらいの難易度と思ってもらえばいい。まして需要が限られたジャンルであれば、そもそも大儲けするほどの母数が居るか自体が怪しい。

とはいえ、ここまででなるべく損しない程度のやり方は書いてきたつもりである。オンデマンド印刷・数十Pをモノクロで50部以下であれば、まぁ仕様にもよるがトータルで高くても3-4万くらいには収まる。一部も売れなくっても3-4万の損失である。この3-4万、そんなに悪いカネの使い方でもないと思うのだが、果たしてどうだろうか。

もし悪くないな、と思うのであればその時は……

会場の何処かで、共に戦えればいいなと思っている次第である。

ノウとハウ ~非創作同人誌を作ろう~ その2

前回の記事に引き続いて、非創作の同人誌を作る場合のやり方について。

さて、前回「題材はなんでもいいしニーズなど気にする必要はない」と書いたが、実際のところ、書きたいものがある人はその程度のアドバイスで十分で、後はほっといても題材には困らないものだと思っている。伝わるかはともかく何かを伝えたいというのであればそれで十分であって、あとはその表現の形をSNSに発表するのかブログに書くのかそれとも本という形にするのかというその程度の違いだけである。

では何故本というものがハードルが高く感じられるのかといえば、それは端々にお金が掛かるという点にある。そもそも現物を作る以上は最低でも印刷代やコピー代は必要だし、逆にそれを配る上では買い手には対価として金銭を要求することになるわけである。こういうやりとりに気後れする人は多いと思うし、また売れないことに対するリスクも大いに不安要素として存在すると思われる。

今回は、そういうリスクをゼロにすることは出来ないまでも、なるべく小さいリスクで行う方法も考えつつ実際の制作手順について触れていきたいと思っている。

3.どのようにして書くのか
さて、実際の制作手順として、ともかく内容を書かなくてはならない。ここからは過去の手順について振り返りつつ解説するので、こういう例もあるという程度に参考にして頂けたらと考えている。

さて、コミックマーケットをターゲットイベントにする場合、開催時期は夏(お盆の時期)と冬(年末)である。よって、締め切りというのはここから逆算することになる。後述する入稿方法であれば前日ギリギリまで作業をすることも可能ではあるのだが、ひとまず締め切りとして参加日の1-2週間前には完成原稿を印刷所へ送れるという辺りを目標にすべきであろう。もちろん、早いに越したことはない。

※ちなみに参加申し込みは既に済ませているものとする。直近になってから出られるというものでは決してないのであしからず。この辺りはイベントにもよるので適宜確認して欲しい。一つ言えるのはコミックマーケットの場合当落確認してから内容を考え始めると結構つらいことになる。

ちなみにこれまでの本では、後ろから数えていくとラスト一週間がレイアウトや写真等の作成・撮影、その前の一ヶ月が実際の本文執筆、それ以外の時間は全てテーマに関する資料集めと通読という感じであった。ただしこのスケジュールはカメラについて書くという内容からテスト撮影以外は部屋で完結するが故のスケジュールでもあり、書きたい内容によってスケジュールの構成は様々に変わっていくものだと思う。

実際の本文の執筆にはテキストエディタを当初使用していたが、やはりある程度文章を弄れた方がイメージが掴みやすいことと、バックアップが常時取られているという安心感から、ほとんどの場合GoogleDocumentを使用していた。といっても使っている機能としては先の自動保存以外は文字数カウント機能くらいである。ただ、突然出先で思い付いてスマートフォンから走り書きを追加したり、ちょっとした空き時間に読み返して推敲したり出来るのはやはり便利なものである。

[参考 C91時のスケジュール]
2016年8月(C90終了直後) → 次回テーマ出し
2016年9月~11月 → 参考資料捜索・カメラ収集・テスト撮影(当落通知10月末)
2016年12月 → 執筆開始~入稿・頒布
12月の詳しいスケジュールは当時のメモがあるのでそちらを参照。

なお、書く内容についてはある程度気をつけていることがあるので、それについても簡単に触れておく。この記事では繰り返し「内容は伝えたいことがあるのならばなんでも良い」と書いてきたが、個人的には頒布する以上は他にはないもので楽しんでもらいたいという思いもある。

このため、一応初参加する前の会のコミックマーケット等には一般参加者として見て回ることで、まるっきり被るようなところがないか、他のサークルはどのような部分をウリにしているのかを簡単にリサーチしている。リサーチって言うとなんだか格好が良いが、要するに買い物に行って他の人ってすげーんだなーと打ちのめされに行っただけとも言う。また、現地で直接競合するものではないが潜在的な競合先としては商業出版物も相手である。もちろんこれはこちらが一方的に喧嘩を売る形になる。

こうした中から、制作する本のコアは「プロ・アマ共にあまり手を出していないが、内容としてはフックのあるもの」とし、そういう中で書けそうなものとして「ちょっと古いAFフィルムカメラの本」というテーマが決まったのである。

さて、内容についてはもしイラストや漫画が描けるとかなり取っつきやすくなるのだろうが、それが出来ないので逆にハードにすることにした。パロディ同人誌の有名なフォーマットの一つとして「非常にくだらないことを論文形式で書く」というものがあるが、あれに習ったものである。よって、文体もやや堅めにしてレイアウトなどもとある技術寄りの雑誌のフォーマットに寄せている。

こういう小細工というかパロディが許される雰囲気があるのも、同人誌という形式のよいところなのではないかなと思う。

4.本の形にしよう レイアウト編
というわけで、文章は書き上げたものとする。ここからはいよいよ本の形にする為に、いくつかのステップを踏んでいく。まずはDTP(デスクトップパブリッシング)である。

かみ砕いて言うと、どのような体裁の本を作るかのレイアウト作業である。それこそ写植やアナログの時代であれば切った貼ったの作業だったらしいが、現在ではPCがあればデスクトップ上で完結する。まことに良い時代になったものである。

さて、本の形にするわけなので、レイアウトは多種考えられるが、過去制作した本の場合は元ネタの雑誌のフォーマットに従って、横書き二列でB5サイズというレイアウトを採用している。この辺りはセンスが問われるので、パロディ元があるのであれば徹底して研究してみるというのも一案である。

ここで使用するソフトだが、有料DTPソフトでは「Adobe InDesign」が有名だが、フリーソフトとして「Scribus」があり、また本来は別目的のソフトだが「Adobe Illustrator」や「Microsoft Word」及び「Excel」で組版しているという話も聞いたことがある。現在はほとんどの印刷所でPDF入稿を受け付けている為、最終的にPDF形式での出力さえ出来ればいいので、各種試して使いやすいソフトを選べばいいのではないかと思う。

ちなみに、過去の発行物ではScribusを使用しているが、これはただ単にフリーでDTPソフトがこれしかなかったからである。元は海外ソフトだがインターフェースは日本語化されており、解説サイトも多いので数日も触っていれば簡単なレイアウトは組めるようになるだろう。日本語縦書きが扱えないなどの問題点もあるとのことだが、いまのところ簡単なレイアウトであればこれで不自由はしていない。

使用する写真や図版等は撮影したりスキャンしたりする必要があるので、適宜事前に行っておく。もしカラー等でブツ撮り写真を入れるのであれば、簡易的な撮影ブースくらいは用意しても損はないだろう。

あとは本文を流し込みつつ、各部のバランスを見ながらレイアウトを行っていく。文章に図が付きページ番号が付き書式で飾り付けられていくと、不思議と「本を作っているんだ!」という高揚感が沸いてくるのだから不思議なものである。

電子データが完成したら、ひとまずここでpdf等にしておいて、一通りチェックしておくのをオススメする。PDFに書き出して提出してしまうともう修正は効かないが、この段階でチェックをしておけばまだ間に合う。誤字脱字、レイアウトの崩れ、どれだけ気を付けていても案外出てくるものである。印刷後に地団駄を踏むよりはこの段階でチェックしておくべきだろう。

5.本の形にしよう 印刷orコピー本を作る
電子データが完成したら、いよいよ「リアルな本」としての印刷工程に移る。

さて、ざっくりと言って同人誌にも形態の違いがあり、ここでどちらかを選ぶ必要がある。一つは「コピー本」と「印刷本(かつてはイコールオフセ本だったが今は他もあるのでこう呼ぶことにする)」である。

コピー本はその名の通り「コピー機で印刷した本」である。メリットはその手軽さとコストにある。大量のコピーを作る場合はキンコーズなどに代表される出力サービスを使うことが多いようだが、最悪コンビニのコピー機や自宅のプリンターでも出力出来て、また一冊ずつ作ることから極小ロットの発行部数に対応させることも出来る。

装丁に関しても凝ったモノからスピード勝負のホチキス止めまで自由自在で、この部分で手作り感を生かすことも出来る。そして何よりのメリットが「自分で印刷して製本するのでギリギリまで作業が出来る」ことである。

ただし、印刷品質や見栄えという点ではやはり印刷した本にはかなわない。カラーコピーだとやはりコピー特有の凹凸感のある仕上がりになるし、モノクロコピーでは階調感に制限がある。

ただし、初期投資が安くロットに自由が効くという点では少部数での発行がしやすいため、第一歩としてこちらを選ぶというのはもちろんアリだろう。

印刷本には更に二種類ある。

一つは版を起こすオフセット印刷、もう一つは製版せずにデータから直接印刷するオンデマンド印刷である。いわゆる印刷というのは前者であり、後者は「とても品質の高いコピー本」みたいなものでもあるのだが、その品質はコピー本を遙かに超えオフセットに迫るものも存在する。また、どちらも印刷所での対応になるので製本までがセットである。

この二つの違いだが、ぶっちゃけると印刷品質と小ロット対応の違いで使い分けになる。印刷品質からいうと漫画であればトーンの再現性等に割とはっきりした違いが出るようだが、文字ばっかりの本であればその辺りではあまり差が出ない。製品写真で「コピー本では出ない階調がオンデマンド以上では出る」という感じである。写真集など、印刷品質を重視するというのであればオフセット印刷を検討するというのも一つの手だろう。

次にロットの問題である。オフセット印刷は製版する以上、ある程度の量を生産することに長けている。オンデマンド印刷は逆にオフセットでは高価になりすぎる小ロット印刷での強みがある。ざっくり各所で見積もりを試してみた結果、100~300部以上ならオフセットの価格が安くなるが、逆に言うと100部を切るようだとオンデマンドの方が安くなるようである。頒布するジャンルや本の内容にもよるだろうが、数百部といった売れ行きが期待できず、それでもきちんと印刷され製本された本という形態にこだわるのであればオンデマンド一択であるように思える。

ただ、先に述べたとおりいくらオンデマンドでも10部や20部といったロットではかなり一冊当たりの価格は高くなる。そういう意味では、オンデマンドの適するロット帯というのは案外狭くて原価と頒布価格がそこそこバランスするのは50-100部くらいというのがこれまでの経験則である(もちろん仕様で多少前後する)。

ちなみに、C91での実績は既刊再販、新刊合わせてトータル80部弱といったところである。自分用見本誌と準備会提出分を除いて売り切ることには成功したが、オフセットだと元が取れないというまことに微妙なラインの実売なのである。

先に述べた通り極小ロットは印刷原価が非常に高く付くので下手をすれば売る毎に赤字になってしまうからあまりオススメは出来ない。そういう意味では、50部売り切るつもりか、そして100部以上売り切る事が出来るかどうかで印刷形態はある程度決まってくると言えるだろう。

この辺りをうまく見極めれば、比較的少ない投資額で楽しむことが出来る。原価が安ければ損益分岐点も下がるので、在庫を抱えて純損失みたいな話にもなりづらい。もちろん、売り切るかはともかく損益分岐点は越せる程度に売れるのが前提の話ではあるが。

というわけで、毎回需要が見えない中で何部刷るか決めるというのは非常に難しい問題なのだが、迷ったら複数回で売り切るつもりで多少多めに刷る方が良いかもしれない。というのは、再販希望者が居たとしてもあとから小ロット追加印刷でそれに対応することは非常に難しいのである。下手をすれば既刊なのに新刊より高い値段を付ける羽目になる。

なお、同人誌の値段付けについては、色々議論が分かれるところなのでここではあまり深くは追わないこととする。ただ、基本的には一冊売る度に赤字になるのはあまり健全な姿ではないと考えている。個人的な目安は完売せずともある程度売れれば印刷原価が無理なく回収できる程度の値付けである。

入稿方法は印刷所にもよるが、先に述べた通りだいたいのところでオンデマンドでのpdf入稿を受け付けている。納期はオンデマンドであれば入稿した週には発送してくれるというのが一般的だが、早期割引があったり、入稿翌日には出荷してくれる印刷所があったりとサービス面の違いもある為その辺りはじっくり選んで欲しい。どちらにせよ締め切りは確かに存在するので、その締め切りに十分な余裕を持って間に合わせることを心掛けたい。

……入稿が済んでしまえば、あとは泣いても笑っても手元に本が届き、それをイベントで頒布するのみである。次回は最終回としてイベント参加についての簡単な解説を行うこととする。