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無名サイトのつづき

ハイパー操作系とペンタックスが目指したもの その4

引き続き、ハイパー操作系のお話。今回は更にZ-1Pに何本かフィルムを通していて気が付いたことと、何故ハイパーマニュアルは普及しなかったのか? についての考察をお送りする。

いまのところペンタックスにフィルム時代のレンズをそのままの画角で楽しめるボディは存在しないため、意外とZ-1Pの出番は増えている。というよりも、手持ちのlimitedやらFA☆をようやく試せるようになったという気持ちの方が大きいかもしれない。
先々週も紅葉を撮るべく持ち出してきたのだが、その時に気が付いた事として、やはりハイパーマニュアルは非常に使いやすい。
何を今更と言われるかもしれないが、特定の条件下で非常に有用であったことに気が付いたのである。
それは、外部の単体露出計を併用する場合である。Z-1Pの露出制御は分割測光であるし、ある程度現代的な物なのでこれまでそれでばかり撮っていたが、最近露出計(ミノルタオートメーター4F)を比較的安価で手に入れたこともあり、併用し始めたのだ。
さて、カメラの内蔵露出計は反射光式であるし、オートメーターは入射光式である。この二つは、大きくはズレないにしても同じ被写体を計っても違う値になるということがあり得る。
実はそのようなシーンで、ハイパーマニュアルが大変役に立ったのだ。
ハイパーマニュアル時のIFボタンでプログラムライン上に乗るのは先の記事で述べたとおりであるが、この値は入射光式が示す値とは異なるにしても、概ね近い値が表示される。つまり、露出計片手に計った値により少ない手順で近付ける事が出来るのである。
余談になるが、普段使用している露出モードはメイン機であるα900においては、ほぼAモードである。たまにお気軽に撮りたいときにPを使う程度で、ましてMモードなどそうそう使うものではない。(特定のシーンでは使わざるを得ないが、日中屋外で使うニーズはない)
よく参考にさせてもらっているサイトで「AEが意図した値にならないときはすぐMに切り替えて撮る」と書いているところがあったのだが、一体どうやったらそんな芸当が出来るのかと思っていたくらいである。(今思えば、その人は主要被写体が鉄道であり、画面全体の明るさがそうコロコロ変わらない被写体だからこその話であった可能性もあるが)
ところが、ハイパーマニュアルではいつでも擬似的にPモード動作が出来るということもあり、明るさのコロコロ変わる歩き撮りでも全く問題なく適応が出来る。これは凄いことである。
だが、フィルムを撮り切ったあとにふと考えてしまったのは「ならば最初からPでよいのでは? 」ということだった。Mモードには露出パラメーターをホールドできるという利点があるとはいえ、IFボタンを押して内蔵露出計そのままの値で撮るということは、すなわち回りくどいやり方でPモードを使っているだけである。
そこに気が付いてからは、基本的にはハイパープログラムで擬似的にAvモードとして使い、入射光式露出計を使うときにハイパーマニュアルに切り替えるという使い方がメインになった。ただ、両モードを切り替えるたびに左肩のダイヤルを操作しなくてはならないのは若干面倒なことである。
そしてMモードについて再度考えてみると、メイン機のα900で「どうしてもMモードにしなければならない場面」というのはだいたい次のようなシーンであった。
  • 内蔵露出計がアテにならない夜景
  • 内蔵露出計を使う必要のないストロボ撮影(露出はストロボで調整)
  • 連続したコマで同じ露出が必要な場合
改めて書き出してみると、たったこれだけである。そして、最初と二番目においては内蔵露出計は役に立たないので仮にプログラムラインに戻せたとしても全く有用ではない。それ以外のシーンであればAEと露出補正でよほどのことがない限り事足りてしまう。
そう考えると、ハイパーマニュアルは確かに便利なのだが、マニュアルで育った世代の人ならともかく、AE世代の(まして、デジカメ世代の)人間が常用するモードでもないのではというところに行き着いたのだ。
そして、利点の裏返しは欠点でもある。いくらいつでも適正にセットできるとはいえ、露出計と露出パラメーターを切り離せるMモードということを忘れて撮ると、直前に撮った露出のまま撮影して大オーバーやアンダーをやらかす。もちろん使い手の不注意なのだが、ポジフィルムでやるとけっこう凹む。
もちろん、現代のデジタル機に搭載されたハイパーマニュアルの場合は瞬間絞り込み測光によりオールドレンズでも適正が得られるなど、違う価値を持ち始めているのだが、ハイパーマニュアルという機能がその革新性と便利さの割に評価されないのは、個人的にはこの便利さを求める人間がそもそもあまり多くないのではないかというところに行き着くのである。
Mモード時の露出決定に「内蔵露出計の適正を利用する」ならば実質的にAEでも同じ結果が得られる理屈になるし、「内蔵露出計は無視する」のであれば、内蔵露出計の示す値に一発セットされてもむしろ困るシーンさえあり得る。
もちろん繰り返し述べてきたように、このモードの本質は露出計と露出パラメーターの連動を簡単な操作で繋いだり切ったり出来るという点にあることは間違いないし、その点においてペンタックスは革新的であったと思っている。
おそらくここに踏み込んだメーカーは他に現れていないのだが、ただこの高尚な思想は個人的には「IFキー押しっぱなしでその間常時露出追随」という親指AE操作あってのものだと思っているので、現在のKシリーズのハイパーマニュアルに関しては理想から一歩後退しているようにも思えてならないのだ。

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写真はまさしくハイパーマニュアルの戻し忘れでドオーバーになってしまったのでスキャンとレタッチで無理矢理になんとかした例。狙って撮ると絶対こういう撮り方はしないのでそうかこれがトイカメの面白さかと気付いてもみたり。使ってるのは何がトイカメじゃいというようなガチ装備なのだが。