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インターネット

無名サイトのつづき

レンズについて[第5回] : MINOLTA FISH-EYE AF 16mm F2.8

この「レンズについて」シリーズにも一応目標のようなものがあり、これからそのレンズを買おうと思っている人に対して有用な情報を提供したいと思って書いている。

自分が中古レンズを集めていく上で、先人達が残した情報が大変役に立ったため、恩返しの気持ちでもあるのだが、そもそもミノルタのレンズには単体のレビューはそこそこあるのだが製品外観・特徴・使用感そして作例を体系的にまとめたサイトが少ないと思ったのも理由である。

そういう成り立ちなので、比較的情報の少ないレンズほど優先度を高めにしている。逆に名玉としてどこを見てても語られてるSTFなんかは、わざわざここで書くほどの事もないのではないかと思って当面先延ばしにしているくらいである。しかし、そうは言うもののある程度自分で使い込まないと感想も書けないし、そもそも作例として出せそうな写真も集まらないしでレンズの選定は結構難しい。

というわけで、今回は比較的レビューの少なそうな魚眼レンズ、MINOLTA AF FISH-EYE 16mm F2.8を取り上げることとした。ミノルタαレンズの中では、AF REFLEX  500mm F8と並んで「面白そうだけどなかなか買うまでは至らないレンズ」の一つだと思う。逆にAF MACRO ZOOM 1x-3x F1.7-2.8辺りまで突き抜けると明確な目的なしには買わないと思うが。

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α900 + AF FISH-EYE 16mm F2.8

実際、自分も箱付き美品がそこそこ安くて、キタムラ10%引きセールの対象でなかったら手に入れることなどなかったと思う。キタムラはTポイントが使えるのでクレカの還元とかでうっかりレンズが買えてしまう、非常に危険な店である。

外観上の特徴としては、鏡筒と一体化されたフードにある。いわゆる花形フードなのだが、180度の画角を持つレンズなのでとても浅い。当然前玉も触れやすいので取り扱い時は指紋やキズが付かないように注意する必要がある。なお、このような形状なのでキャップは革製のカブセ式である。

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また、ピントリングのさらに先にターレット式のフィルター切り替え部を備えており、NORMAL(クリア)→FLW(薄紫)→O56(オレンジ)→B12(ブルー)と4種類の内蔵フィルターを切り替えることが出来る。これらは基本的には色補正用なので、デジタルでカラーで使う限りはほぼクリア固定になることが多いと思う。中古で購入する際は全てのフィルターにカビが出ていないかチェックするのを忘れずに。

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さて、このレンズは数あるαマウントレンズの中でも珍しい初代シリーズのデザインで発売されて、そのままコニカミノルタ時代まで生き残ったにも関わらず、デザインが変わらなかったレンズである。他のレンズは大なり小なりNewタイプの外装や、白レンズはG化(High-speed仕様化)されたというのに、このレンズは最後までそのままであった。もちろん途中でディスコンになり、New化されなかったレンズは他にもあるが。

魚眼レンズというのは、それほどまでに特殊な位置付けにあり、数が見込めないレンズであるということの証左であろう。しかし、ラインナップから落とすことは出来ないレンズでもある。それは現在の主要マウントを見ても、必ずと言って良いほど魚眼レンズを揃えていることからもわかる。このレンズも、無事ソニーに同仕様で継承されている。

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当然、このようなレンズなので後期ミノルタの代名詞であった円形絞りなどは採用されていない。どうやらソニー版でもそのままのようだ。もっとも、このようなレンズで背景ボケが云々されることはまずあり得ないとも言えるわけだが……。

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これだけの広角レンズということで、F2.8でもそこそこ後玉が大きい。しかし、全体としては少し大きくて重めの標準レンズといったいでたちで、意外に持ち歩きも苦にならない。先に述べた通りにフードがカブセ式なので、その辺りだけが若干取り扱いが面倒な点である。

魚眼レンズはその成り立ちから画角が広くてナンボかつ、意図的に歪曲収差を残したレンズなので、他のレンズと違ってAPS-Cで使った時に活用しづらい。APS-Cでの16mmは換算で24mmなので大して画角は広くないのに妙な歪曲が残るレンズとなってしまい使いどころが限られる。よって、このレンズの活用はフルサイズ機あってのものと言えるだろう。

今回も作例はFlickrにアップしたが、とかくこのレンズは使いこなしが難しい。というか、魚眼レンズ自体が難しいのだ。180度の画角は見えているもの全てを写し込み、歪曲収差は非日常の世界を描写する。それだけに何をどう撮るか? が常に問われてしまう。

若輩者故に未だにこれだという答えは出ていないが、使いこなしのコツがあるとすれば被写体に寄ってみることと、遠景を撮るのであればカメラの向きとアングルに気をつけることだと思う。

どういうことかというと、魚眼レンズに限らず画角が広すぎる広角レンズでは適当にアイレベルで引きの画を撮ると、被写体は米粒のようにしか写らず、周囲のどうでもいい光景も丸ごと写し込んでしまう為散漫な感じになることが多いのだ。幸い、このレンズの最短撮影距離は20cmなのでとにかく寄って撮ると被写体が強調しやすい。

次にカメラの向きとアングルだが、実は魚眼レンズでも単なる超広角っぽく撮る術はある。端の方に直線を入れないようにしつつ、被写体が水平になるように写ると案外魚眼っぽくない写りになる。作例では清水寺の作例などがそれに当たる。また、最後の伏見稲荷の社殿の写真では鳥居は大きく歪んでいるが、中央部の社殿は実はほとんど歪んでいない。このためここだけ切り出すと標準で撮ったようにも見えるのだ。なんだか嘘っぽいけどホントの話。

このため、画面上に直線を入れ込んだ上でカメラを斜めにしたり水平からずらすと魚眼っぽさが強調されて、水平に構え被写体と正対した上で画面上から水平線も含めた直線を消すと魚眼っぽさが薄れる。

なお、魚眼レンズではシンメトリー構図を取ることも多いのだが、超広角レンズではパースが付くので被写体にきちんと正対していないとトリミングや傾き補正で直そうとしても違和感のある仕上がりになることが多い。

以上は魚眼レンズ一般の話になってしまったので、このレンズならではの注意点があるとすれば、逆光には意外と弱い。とはいえこの画角で画面内に光源が入らないように撮れというのも無理のある話ではある。手でハレ切り出来ればよいのだが、たいてい指が映り込むのがオチである。また、被写界深度やボケを云々するレンズではないので基本的にはAFで絞り込んで撮ればいいのではないかと思う。

また、これだけの画角があると必然的に空が映り込むことも多くなるので、DROやHDRとかで被写体を起こし気味にしてあげるといい。そのまま空に露出を合わせるだけでは主要被写体が真っ暗なんてことも往々にしてありうるので。そういう意味ではすぐにプレビューが出来るデジタル向けのレンズである。

楽しいがすぐ飽きる、というのが魚眼レンズに対しての一般的な評価のようである。実際にその可能性は高いと言わざるを得ないし、特殊すぎて他のレンズとは異なる心構えを要求される。しかし逆に言えば、それはこのレンズでしか撮れないものがあるということでもある。もし安価に見かけた際は、この世界に飛び込んでみるのもいいのではないだろうか。