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無名サイトのつづき

ポルシェでラーメンを食いに行く男達 -実録変なレンタカーを借りに行く-

当サイトで意外と人気がある記事の一つに以前思い立って一覧にしてみた「2014年版 変なレンタカー大全[関東近郊版]」がある。元々はMT車のレンタカーを借りようと調べているうちに、思ったよりも色々なのが見つかったので個人的に備忘録的にまとめたものである。

そして、当時の記事では触れなかったが、現在タイムズカーレンタルがService Xという名称で同様の方向性というか、あまり普通ではないレンタカーの貸し出しを行っている。とはいえ、価格が少々お高めなことと、短時間貸し出し限定なこともあってこれまであまり検討してこなかった。

しかし、キャンペーン期間ということで国産車(S30型 フェアレディZとFC型 RX-7カブリオレ)のみ3時間で3240円・延長は1080円/hで乗れるということなので、この度予約して乗ってみることにした。せっかくなので他と被らないセレクトかつMTをということで、車種はS30を選んだ。

……なので、本来であればここにはZの感想が書かれるべきだったのだが、諸事情でこのようなタイトルになっている。

さて、予約前日になって店舗から電話が入っていたようなのだが、電池が切れていて出られなかった。当日(ちなみに、この記事は前回の中央防波堤訪問記の翌日の話である)になって有楽町の店舗を目指したところ、移動中に電話がかかってきた。曰く、S30は故障箇所が見つかって貸し出しが出来なくなった為、他の日に変えられないかということである。

それはそれで仕方のないことなのだが、こちらとしてももう出発してしまった。というわけで他の車に空きはないかと聞いてみたところ、ボクスターSであれば空いているとのこと。当初の意図とは違ってATではあるが、ポルシェに乗れるならということでこちらを代車にしてもらうことで手を打った。せっかくのオープンなのに当日は雨のち曇りの空模様だが、そこまで望むのは贅沢すぎるというものだろう。

というわけで、中央防波堤に同行した物好きな知人と二日続けて合流し、いざ有楽町イトシア地下にあるタイムズの店舗へ。

どうやらS30は、燃料漏れのトラブルが疑われた為入院してしまったようだ。こうした趣味車は店員さん曰く「よく壊れる」そうだ。稼働率が上がらないとなかなかこうしたサービスを続けるのも難しいだろうが、なんとか頑張って欲しいものである。

さて、偶然から乗ることになったボクスターであるが、これも店員さん曰くこの季節乗るならエアコンなしのS30よりよっぽどオススメ、だそうである。実際ラインナップ中ではほぼ最新型と言っていい車なので快適装備はほぼフル装備。屋根だって電動である。ちなみにオープンカー自体はS2000,NB型ロードスター,現行コペン(いずれもレンタカー)に続いて4台目であるが、やっぱり電動トップは色々と便利でいい。コンビニ寄る度に屋根閉めるのは面倒だし。

問題は、これが初めて運転する外車だということである。初めての左ハンドルがポルシェ、しかも限定車。乗り始めてしばらくは感動や興奮とは違う意味で心臓が高鳴っているのがよくわかった。ちなみにぶつけた時の免責は50万円である。新車価格考えれば全損でも50万なら安いか……。

簡単なレクチャーを受けてから出発。とりあえずということで都心環状線道を間違えた為1.5周したところで、行き先は千葉をセレクト。慣れない左ハンドルに悪戦苦闘しつつも、アクアラインから海ほたるへ。

今回の目的は千葉のご当地ラーメンである竹岡式ラーメンを食べに行くことである。

せっかくなので明確な折り返しの目的地が欲しかったし、ドライブも楽しみたかったのだが、片道3時間で確実に帰ってこれて、行き帰りでルートのバリエーションを付けようと欲張るとなかなか難しい。その結果として、ポルシェでラーメンを食いに行くというシュールな旅程が決まったのだった。

竹岡まではアクアラインと館山道で小一時間半といったところだろうか。一般道に降りてからというもの沿線の観光地案内のほとんど全てがマザー牧場東京湾フェリーの二種類であることについて千葉県の観光産業に一抹の不安が生じ始めたころ、目的の店である梅の家に到着した。店構えからは駐車場があるか不安だったのだが、人気店ということもあり少し離れた場所に駐車場完備だったので助かった。なんせ今日に限っては路駐という選択肢はあり得ない。

完全にピークタイムを外しての来店だったのですぐに座れたのだが、退店時には行列も出来ていたのでただ運が良かっただけのようだ。特徴なんかについては他の詳しいサイトを当たって欲しいが、これがまたシンプルながら非常に美味しいラーメンであった。特徴的な作り方からするともっと特殊な風味なのかと思ったのだが、紛れもない醤油ラーメンだし、きちんと(?)うまい。そして薬味のタマネギと厚手のチャーシューがまた素晴らしくマッチしている。

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RICOH GR

ちなみにチャーシューがわりとたくさん乗っているが、これは普通のラーメンである。訪問時はチャーシューを切るヒマがないという理由でチャーシューメンはオーダー不可だったのだが、これを見ていると一体チャーシューメンにしたらどんなことになってしまうのだろうかという興味をそそられる。そのうち再訪して確かめてみたい所存である。

さて、飯は食ったので折り返しである。空は降ったりやんだりだが、この際自棄なので積極的にオープンを楽しむことにして屋根を開ける。やはりオープンカーは屋根開けてナンボである。停車しなければ意外に雨も吹き込まない。行きは高速を中心に走り回ったが、オープンカーとは思えない剛性感はド素人でもわかる。ダラダラ走っても、ちょっと飛ばしても(試す度胸はなかったがおそらく本気で飛ばしても)、至って素直ないい車という感じであった。

行きがアクアライン経由だったので、帰りは内陸部のワインディングを挟みつつ湾岸周りで帰ることにした。そしてこの車の真価はワインディングにこそあるのではないかと知る。そういえばミッドシップの車も初めて──ホンダバモスをMRに含めていいのであれば二台目──だったのだが、とにかく鼻先が軽い。NAでよく回るということもあってそこそこの曲率のコーナーを駆け抜けていくのが本当に楽しいのだ。

水平対向エンジンで同程度の出力を持つオートマ車ということで、普段乗ってるインプレッサ(GRF)との共通点も多少あるのだが、どちらもワインディングを走る程度では一切危なげないのは同様ながら、操作感はかなり異なる感じであった。ボクスターはNAかつMRということもあってか、全てが軽快。それも十二分な剛性を備えた上で軽く動くという感じで、不安感が全くない。対するインプレッサはガッシリした箱がある程度の重さを持って走っているようなイメージである。

スポーツATとしては定評のあるティプトロも、国産のそれらと比べると回転数を高めにキープすることを厭わないようで、燃費とかはともかく軽めのスポーツ走行では意図にマッチしたギアをセレクトしてくれる。そしてスイッチ一つでスポーツモードに入ると瞬時にサスは締め上げられ、排気音はより甲高く音色を変える。わざとらしいくらいの演出だが、求めていたものがこういうわかりやすさなのもまた事実である。

というわけで、ワインディングを十分に堪能したところで時間切れが迫ってきたのでそのまま高速に乗り、湾岸線を抜けてレインボーブリッジ周りで再び都心へ。給油の後なんとか時間通りに有楽町の店舗への返却を終えた。

さんざん乗り回した結果、6時間で200km以上メーターが進んでしまった。まぁドライブというとやはりこのくらい走らないと……という感じである。

レンタカーとしてのサービスの感想は、キャンペーン価格であれば興味がある人が全員一度は体験すべきだと思うくらいだが、一般価格だと少々高いように感じる。何故なら、有楽町出発ということで1-2時間では都心から出られず、自由に走り回るのには不便ということがある。ガラガラであれば都心環状線を流すのも楽しいとは思うが、営業時間内となるとノロノロ運転の首都高を流していたらもう返却時間ということも十分あり得る。

制限速度以上でぶっ飛ばせとは言わんが、このような車を借りたからにはせめて自分のペースで走れるところに行きたいものだし、そのようなルートは都心にはほとんど存在しないだろう。故に、半日程度のパック料金で多少値引きが入るのであれば再度利用したいなーと思っている。こうしたスポーツカーを購入して維持するのは大変なことなので、普段は普通の車に乗っていても、年に数回こうした車に乗って気分転換するというのも十分アリだと思うのだ。

車種としての感想は、まとめるならカメラ趣味でも感じる舶来モノの絶対性能の素晴らしさと、国産モノの相対性能の素晴らしさといったところだろうか。確かにもうポルシェはホント素晴らしかった。金があれば欲しい。そりゃ世界中のメーカーがお手本にもするわ、と納得である。ただ、この車限定車ということもあるがお値段は1000万である。

それに比べると、国産車はとりあえず出力が同等なら半額から1/3の値段である。例えばの話だがニュルブルクリンクのタイムで同等とかでもいい。実際GRBとかならたぶん良い勝負するだろう。そんで400万くらいである。

仮に官能性とかそういった部分も含めて舶来モノの性能が100だったとして、国産モノの性能は80くらいかもしれないが、それが半額や1/3で手に入る。これって、カメラ趣味でライカとかに対して思っていたこととほとんど同じである。そう考えてみると+20を埋める為に支払う金額というのが「趣味」の実態なのかもしれない。ともかく、そういう感想を抱いた。

ちなみに、ポルシェ乗ってから急に自分の車が色褪せてしまったような気がしたので今週になってインプレッサ乗り回してきたが、やっぱりいい車だった。少なくとも今の自分にはこれ以上は要らんかな。

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RICOH GR

シリーズ東京の島とかを往く:中央防波堤訪問記

最近は気が付けば、色々な東京湾の島々を歩き回っている。一部はこのサイトでも記事化したが、それ以外にも記事になっていないだけでうろつき回ったり写真を撮ったりしている。

そんな東京湾内の島々の中には、到達難易度が比較的高いものも含まれる。先日このサイトでお伝えした城南島も、日曜日は一時間に一本のバスに乗らなければ到達出来なかったりするのだが、距離のことを無視すれば、一応はバスがなくても徒歩で行くことが出来る。

一方で、京浜島訪問時にチラっと触れた中央防波堤は、現在接続道路の規制によって、自動車や原付以上の二輪車でしか訪問することが出来ない。ただ、バスは運行しており本数も(行き先に娯楽施設は何もないことを考えれば)思ったよりも多い。ちなみに、埋め立て地として成立したためまだどの区に属するか決まっていなかったりもする。

というわけで、今回は東京湾島嶼部シリーズ最新作として、中央防波堤に行ってきた編をお届けする。

……と、見せかけておいて話は中央防波堤と全く関係ないところから始まる。

現在、富士フイルムの東京サービスセンターでは富士の最新機種であるところのXシリーズを当日返却ならば無償で貸し出してくれるサービスをしている。私事になるが、ここのところもうAマウントの新機種も望めそうにないので最近は乗り換え先も含めて色々考えており、この際だし別に必ずしもα7買わんでもいいよなと思っているため、このサービスを利用して最新ミラーレスカメラとやらを試してみることにした。というわけで、以下の写真はX-T1によって撮影されている。

実を言うとこのサービスを使ってX-T1を借りるのは二度目なのだが、前回は16-55を借りて写りはともかく重さに辟易したため、今回は14mmと23mmのコンビにした。一度にカメラボディ1台・レンズ2本まで借りられるため、システムとしての実力を試せる大変ありがたいサービスである。要するに購入候補カメラが自分の用途に耐えうるかどうかというのもこの小さな旅の目的に含まれているわけだ。

というわけで、六本木で物好きの知人(こちらも同様にX-T1を借りている)と合流し、寄り道しつつも中央防波堤を目指した。

現在、中央防波堤へ自前の車・バイク以外で行く手段は都営バスを使うほかにない。利用するのは「波01系統」になるのだが、この系統、普通に調べると品川発がヒットする。だが、品川から行けるのは東京テレポート駅前までで、そこから先は同名だが別のバスだし料金も個別に発生する。当初我々はこのことを知らず品川からバスで一本だと思い込んでいたのだが、実際は東京テレポート駅前で途方に暮れることとなった。まぁ、品川~東京テレポート間はもはや都営ではこの路線以外にないというレインボーブリッジをバスで渡るルートだったので、乗りごたえ(?)自体はあったのだが。

改めて東京テレポートから二本目のバスに乗り、終点が中央防波堤である。

中央防波堤には「内側埋め立て地」「外側埋め立て地」「新海面処分場」の三区域があり、このうちバス停があるのは内側埋め立て地区域である。バスを降りると、いきなり剥き出しの配管類を備えるイカした景色が出迎えてくれる。ここは元々埋め立て地であり、ゴミの処分場に類する建物が多く、この光景もその一つだ。

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Fujifilm X-T1 + XF 23mm F1.4R

なお、写真がオーバー気味なのは単純にX-T1の使い方に慣れてなくて設定をミスっただけのことなので気にしないように。この写真しか状況説明に使えそうなのがなかったのだ。

さて、これまでの話で中央防波堤は「一般人の訪問を拒むような交通の便」「帰属が決まっていない埋め立て地」「娯楽施設は何もない」そして何より「既に島として完成しているにもかかわらず防波堤という無機質な名前」から、かつてのお台場やみなとみらい地区のような、区割りと幅の広い道路だけが完成しただだっ広い無人の空き地地帯を想像する人も多いのではないかと思う。

実際、訪問する前の我々もどこかそんな感じを期待して来たのだが、実際に訪問してみるとその予想はまったくハズレであった。元々がゴミ処分場であり、その機能は今も現役であることからか内側埋め立て地に関しては写真の通りゴミ処分場関係の巨大な施設が各種作られており、もちろん人がいない空き地というわけではない。周辺の道路は土曜日にも関わらず活発にトラックが行き来し、徒歩での人の行き来こそほとんどないものの、想像していたような無人地帯とはかけ離れていた。

そして、防波堤のほとんどは未だに現役の埋め立て地ということもあり、内側埋め立て地の半分ほどは一般人立ち入り禁止のスペースである。埋め立て地方面には土曜日だというのにトラックが活発に出入りし、奥には重機が忙しなく動いているのも見える。

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Fujifilm X-T1 + XF 14mm F2.8 

海が見えたのでそちらに向かってみると、対岸はお台場である。先ほど通り過ぎてきたそこは、方や週末で賑わう喧噪の島。一方のこちらは、先ほどからトラックと重機の轟音しか聞こえてこない別の意味で喧噪の島である。あとたまに飛行機の轟音も聞こえる。ここは羽田への通り道でもあるのだ。

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Fujifilm X-T1 + XF 14mm F2.8 
それにしてもX-T1のフィルムシミュレーションをベルビアにしていただけあって、見事な記憶色寄りの鮮やかな青である。もちろん天気も良かったのだが。

ぐるりと回って、今度は外側埋め立て地の方を目指す。内側埋め立て地は結局のところゴミ処分施設と、トラック(コンテナ)ヤードの島であった。前者は埋め立て地の、後者は埠頭に近いという理由からであろう。その他には娯楽施設はもちろん、コンビニもない。一般に公開された公園もいまのところないので水分補給やトイレ等にはこの時期少し困るかもしれない。幸い、一部のトラックヤードには自販機が据え付けてあったのを確認出来たので少なくとも干涸らびる心配はなさそうだ。

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Fujifilm X-T1 + XF 23mm F1.4R
見ての通り、コンテナ地帯を轟音とともに飛行機が掠めて行く。考えて見れば城南島の東側にあるのだからそれなりの大きさで飛行機が見えるのは当たり前なのだが、この日我々の他に飛行機を撮影する人は見かけなかった。なお、飛行機を狙うのであれば城南島から狙った方がアクセス・周囲の環境ともに良いというのは今更言うまでも無い。

しいて言うなら、自動車用信号機と飛行機を絡めて撮れるあんまり他に思いつかないスポットだというくらいだろうか。このシチュエーションに果たして価値があるのかとかそういう細かいことは気にしてはならない。

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Fujifilm X-T1 + XF 23mm F1.4R

なお、地図上では内側埋め立て地と外側埋め立て地を繋ぐ橋は二本あるが、東側の橋はゴミ処理のトラック専用のようで徒歩では渡れない。徒歩の場合は西側の中防大橋を渡る他にない。

しかし、外側埋め立て地に渡ったところで、訪問時点で徒歩の行動可能範囲はほとんどなかった。メインストリートとでも言うべきゲートブリッジ方面への道路はゲートブリッジが徒歩通行禁止な為通行禁止。城南島へと繋がる海底トンネル方面も同様に徒歩で通行出来ないため通行禁止。そして、新海面処分場は今まさに埋め立てつつあるため、ここももちろん一般人は立ち入り禁止、である。

島のサイズ自体はかなり大きいのであるが、現時点で徒歩で巡ろうとすると、実際に立ち入れる面積は思いの外少なく、また何か目標となるような施設があるわけでもない。そして逆説的だが、「何もない場所」である新海面処分場には立ち入れないので、そういうものを求めて来ても消化不良になる可能性すらあるのだ。今回は物好き二人組であったので特に問題は無かったが、ただ歩くのが好きな人でもないと目標物のなさにめげてしまうかもしれない。

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Fujifilm X-T1 + XF 14mm F2.8 
防大橋の突き当たりからメインストリートを望む。富士は各露出モードでパノラマが選べるのがいいところだと思う。初めてこの手の連写合成が付いたSONY DSC-WX1を昔使ってたこともあり、この手のパノラマモードけっこう好きなのである。

結局、この辺りを軽く撮影したのち、再び内側埋め立て地へ戻りバスで帰ることにした。

先ほど横目に見ていたお台場に戻ると、再び観光地らしい喧噪に包まれた。すれ違う人もおらず、トラックと重機と飛行機の轟音だけが聞こえたあの埋め立て地も、いつかこんな喧噪で溢れるような観光施設が林立する日が来るのだろうか、来るとしたらいったい何年後になるのだろうと思ったりする。

その後、二人してmegawebに立ち寄りTS-010(丁度ルマン終了直後だったのだ)を見てひとしきりテンションを上げたりクラシックカーの展示を見たり撮ったりしたところでX-T1の電池は空になった。約400枚。正直物足りない電池持ちだが、まぁ今のミラーレス機というのはこんなものだろう。

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RICOH GR

仕方ないのでGRで撮ってお茶を濁す。なんだかんだでGRはバックアップのカメラとして最高であるというのが結論だろうか。もちろんメインにして使ったって大変いいカメラである。

というわけで、六本木に戻ってカメラを返却後、更に別の無料イベントでドリンクや軽食を補給して解散となった。一日中歩き回ったにも関わらず、ショールームや無料イベントをハシゴしていたせいで交通費以外ほとんど使っていないという、よくわからない休日になった。

とはいえこんなのもたまには良いだろう。ミラーレス機を買うかどうかは当面保留。

失われた社会性を求めて

学生時代は、どうして大人がことあるごとに「飲み」に行くのか全く分からなかった。

集まるにしてももっと他の口実はいくらでもありそうなものだし、そもそも友人同士であれば、何か話をする時に必ずしもアルコールが必要であるとも思えない。(これはファミレスのドリンクバーで何時間でも粘っていられた学生の感覚かもしれない) まして金銭的にも時間的にも決して安くはないコストを払って、時には体調を崩すまで飲み続けるのだから、これはもう理解の範疇外だった。

個人的に、アルコールを受け付けない体質なこともあって、社会人になってしばらく経ってからもずっと疑問に思い続けていたのだが、ある時に気が付いた

「成人男子が集まる大義名分は、『飲み』しかない」

そう、例えば共通の趣味があるなら、とにかく共に趣味を楽しもうという点で誘い合えるであろう。旅行でもスポーツでも音楽でも何でもいい。共通の話題というのがわかりきっているのだから。しかし、趣味以外がベースでのコミュニティではそうもいかない。そんな時、共通の趣味や嗜好によって繋がるコミュニティの前段階として、そうしたものをお互いに見出そうという時に使われるのが「飲み」なのだ。

また、共通の趣味や嗜好を持っていたとしても、大人というものはお互いに忙しいものであるということになっている。そうした中で時間を割く理由として公に認められた大義名分として「飲み」が存在しているのだ。

実際はアルコールを飲むことではなく与太話が目的だとしても、そしてその辺のコンビニの駐車場で立ち話で与太話「だけ」をすることは可能であっても、大人になるとそのきっかけは「飲み」になる。

つまり、大人としてのコミュニケーションの最低段階にこの「飲み」が存在しているわけで、これに対して恐怖感を抱いていたり、理解が出来ないというのは社会性が失われた状態であるといっても過言ではない。

そう考えると、アルコールに弱くて「飲み」というだけで半歩どころか三歩は腰が退けるうちは、当面社会性が失われたままなのであろう。アルコール弱者の立場からすればこれは飲める人間の横暴そのものであるので、アルコールを含まない別の大義名分の確立が急務とされるのだが、小一時間考えてもいい代替案は出てこなかった。飲めなくても楽しい会はあるとかそういう意見は一切聞いてないし聞くつもりもない。

ちなみにこの「飲み」の女性版が「お茶」であるように男性側からは見えるのだが、実際の精神性の違いなどについては知見を持ち得ていないので他に譲ることとする。 

未来が通り過ぎた鏡 -α二桁とTLM-

α7系列について書いてみたので、勢い余ってα二桁機におけるTLMについても書いてみたりする。例によって個人の主観が多々含まれているので予めご了承の程。

α二桁機から導入されたTLM(トランスルーセントミラー)という機構はAマウント機がOVFと決別する直接の原因になったこともあり、ことOVFの出来を評価してきたかつてのユーザーにはすこぶる評判が悪い。

ではTLMとはなんぞや? いったい何のメリットがあるのか? 何故採用され続けているのだろうか? という話になると、実際のところよくわからないという人も多いのではないだろうかと思う。実際のところ、TLM=EVF機であることから、OVFをやめてEVF化に舵を切る為の機構であったと解釈されていることも多い。というわけで、少し考えてみたい。
まず、トランスルーセントという名前が示すとおりこの機構のキモは一眼レフにおけるクイックリターンミラーの代わりに据えられた半透明ミラーにある。ただ、クイックリターンミラーを半透明ミラーに置き換える考え自体はそれほど突飛なものではない。古くはキヤノンのペリックスシリーズやEOS RT及びEOS-1n RSと、ニコンF3H高速モードラ仕様などにも前例がある。
これらのフィルム時代の半透明ミラー機の特徴は、半透明ミラーによって常時レンズからの光をファインダーとシャッターに振り分けていることにある。なお、通常の一眼レフでは通常時はミラーによってファインダー及びAF機ならばAFセンサーへ光を送っており、露光の瞬間だけミラーを跳ね上げてシャッターへと導いている。先述したとおり、一眼レフのミラーを半透明ミラーに置き換えたという意味では、これらとTLM機は共通といえる。
つまり、要素としては先行する半透明ミラー機と似たようなものなのだが、かつての半透明ミラー機が追い求めたのは一眼レフ最大の欠点であるレリーズ中の像消失の打破とシャッターショックの低減であったのに対し、TLMは(撮像素子で撮影とEVFへのスルー画を両方出力する以上)撮像の直後はスルー画が途切れるなど、必ずしも像消失の問題に対応するための機構ではない。むしろ構造的に像消失が避けられない機構である。この点が似たような機構を持ちつつもかつての半透明ミラー機とは一線を画している。
さて、過去の半透明ミラー機が目指したのは、先に挙げた通り(クイックリターンミラーを装備した一眼レフでは構造上避けようのない)レリーズした瞬間のブラックアウトの撲滅であった。
また、像消失がないことから、連写中も常に被写体……つまりピントを追えるというメリットも持つ。 この機構の副産物として可動するミラーが存在しない分、ミラー動作のショックがなく、また各種動作シーケンスを詰めやすいこともあり超が付くほどの高速連写機に活用されるようになった。
一方で、この方式でAFを実現したEOS R系にはこの利点と相反するような性質も持つ。それは、レリーズ時にAFセンサーへの光路がキャンセルされることから、CAF(EOSだとサーボAF)が効かない事である。超高速で連写が出来てピントも目で追えるのに、AFは追随出来ないのである。もっとも、ミラーが存在しない分シャッターラグも最低限に抑えているので、意図する1コマ目にAFが合ってることを目指したスペックと言えるかもしれない。なお、EOS R系以外の半透明ミラー機は皆MF機なのでこの問題はそもそも存在しない。
また、通常のクイックリターンミラー搭載一眼レフのCAFはAFが追随しながら連写が出来ているように見えるが、あくまでも予測駆動AFであり、シャッターを押してからミラーが上がり、先幕が走り始めるまでの間、AFセンサーに光が当たっていない瞬間は「このくらい被写体は動くだろうからこのくらいAFを駆動させればいいだろう」という予測に基づいてレンズを動かしている。故に不規則な動きをする被写体では予測が外れてしまうこともままある。
……ここで話はTLM機に戻る。TLM機の半透明ミラーは「像消失のないファインダー」を実現するためにあるのではない、ということは先に述べた通りであるが、では何を実現しようとしたのか。よくある論としては「コストのかかるOVFをやめる為にEVFにした」というものだが、どうやらこれは「結果としてEVFにせざるを得なかった」が正しいようだ。
先に挙げたCAFの問題というのは、つまるところAFセンサーに光が当たっていない瞬間に対しての問題なので、仮に常時AFセンサーに光を当て続けることが出来れば解決が出来る。常時AFが駆動し、その間にシャッターが開けばいいわけだ。通常はミラーに遮られてしまうというのであれば、ミラーを廃して常時AFセンサーに光を届ければよい。これが基本の考え方である。
そして、この機構はOVFでは実現が出来ない。しかし、OVFを諦めてファインダー表示は常時ライブビューとしてEVFに表示する形を取れば半透明ミラーを一枚入れるだけで済む。
つまり、α二桁におけるOVF→EVFの転換というものは、必ずしもEVFが先にあったわけではない……のではないかというわけだ。
だが、静止画の場合、既存一眼レフではAFが効かない時間があると言ってもせいぜいコンマ数秒のミラー消失時間だけの話であるし、そもそも先に述べたような不規則に動き回る被写体でもない限りは予測駆動AFがあるため、なかなか常時AFの恩恵を感じにくい。そして動きモノを撮らない人にTLMのメリットがあるかと言えば正直なところ思いつかない。EVF化したこと自体に何かメリットはあるとしても、だ。
実はTLMのわかりやすいメリットというのは、どちらかというと静止画よりも動画にある。
何故なら、通常の一眼レフで動画を撮影する場合、ミラーが邪魔なので跳ね上げてシャッターを全開にするわけだが、この時ミラーは跳ね上げられている。当然AFセンサーへの光は遮断される。そうなると一眼レフであっても動画中のAFは基本的に撮像素子を使用したコントラストAFオンリーとなる。
コントラストAFはコントラストが最大になる領域をピントを動かしながら探っていく仕組みなので、それらに最適化されていない通常の一眼レフ用レンズでは非常にAFが遅い。昨今のミラーレス機であればこうした部分も予め織り込み済みであるが、静止画撮影を念頭に置いたレンズ(というか、カメラシステム)ではそうもいかないので、既存一眼レフ用レンズを使ったAFでの動画撮影というのは静止画ほどキビキビとは動かない。
だが、ここにTLMを挟むことで、通常静止画で使用している位相差AFセンサーが動画でも使用出来るとなれば話は別である。位相差センサーの特徴として、「どちらに」「どのくらい」動かすとピントが合うかが判断出来るという点がある。つまり、コントラストAFのようにピントピークを探りながらAFする必要がないのだ。
これにより、TLM機は動画でも高速なAFを手に入れた……のだが、実際問題として一眼レフの動画というのはどのくらい使われているものなのだろうか。α900にはそのような機能が付いていないので実際よく分からないのだが、少なくとも一眼レフにおいて動画を最重要視するユーザーは、静止画のそれと比べて圧倒的少数派であるように思える。
また、一眼レフ動画用途を強く意識したα99/77自体、一眼レフ動画のハイエンドユーザーは既にEOSで一通りシステムを揃えたのではと思わせる時期に登場したので、そうしたユーザーの取り込みについてもあまり芳しい結果が出たとは思えない。そしてそれらのユーザーがAFを気にするかというと、その答えもNOだろう。
だいたい、ソニー自身だって並行してEマウントで動画カメラを作っているわけだから、わざわざAマウントを使う意味自体存在しないという見方も出来るわけである。
そして今、像面位相差AFが実用になりつつあり、そうした機構を持つ他社一眼レフとの競争はもちろん、コントラストAFに最適化されたレンズを備えるEマウントとも戦わなければならない現状を考えると、もはや動画においてさえ「Aマウントのカメラで」TLMを採用するメリットはなく、それは先のAFの件と合わせて、TLMを採用するメリットがゼロに近いと言っても良いだろう。
だが、そんなTLMだがLA-EA4を始めとするマウントアダプターに使用すると途端に輝きを増す。
先に述べたとおり、既存一眼レフのシステムというのは位相差センサーを使用したAFを前提としてこれまで発展してきた。このためEマウント機を始めとしたミラーレス機にアダプターを使って装着しても、一眼レフ同等のAFスピードは望めない。 また、旧来のAマウントはボディ内モーターを前提としたシステムなのでそもそもAFが動かないというのもある。
そこで一眼レフのAFセンサーとモーター周り一式をくっつけてしまおうという豪快な回答がLA-EA4なのだが、これは半透明ミラーによって常時スルー画を出しつつAFセンサーにも光を回すことが出来るから実現出来ることであり、数少ない「TLMでなければ出来ないこと」の一つと言えよう。
そして現時点で、ミラーレス機に既存一眼レフ用レンズをAFで可能なアダプターは他メーカーでも用意されているが、コントラストAFを前提としないレンズをAFで快適に使用出来るアダプターは他に存在しないと言っても良いだろう。
機構としての素性はともかく、TLMにとっての不幸は多々存在すると思っている。──「常時AFの価値を訴求出来なかった」「動画ユーザーが思ったほどいなかった」「像面位相差AFが思いの外早く実用になった」「OVFと違いEVFなら同性能をEマウント機でも実現出来るので差異化が出来なくなる」「そのOVFを評価して付いてきたユーザーを切り捨てる結果となった」「αに求められていたのは連写や高速AF性能だったのか」等々……。
そんな中で、既存一眼レフ用レンズをミラーレス機に使っても高速AFが可能という点において、A&Eマウントは他社の同様な関係を持つシステムと比較して頭一つ抜け出している。そう考えると、最初からAマウントとEマウントのブリッジのためのテクノロジーとして登場していれば、TLMという技術自体に対しての評価は180度変わっていたのではないかとさえ思うのである。
……と、このような内容を書き綴っている最中に、海外で像面位相差センサー搭載の裏面照射撮像素子を持つα7R2が発表された。新たな機能として、像面位相差センサーとボディ側の改良により、レンズ内モーター搭載レンズであればボディ側の像面位相差センサーで高速AFが可能になるという話も出てきたようなので、これはもしかしたらα二桁機やAマウントどころか、TLMというテクノロジー自体に対するトドメになってしまうかもしれない。
こうしたことは過渡期のテクノロジーにありがちと言ってしまえばそれまでだが、もしそうであれば、このままだとAマウントはTLMのせいで滅びたという印象を残してしまうだろう。
思い描いていた未来は、気が付いたらTLMを通り過ぎて更にその先へ行ってしまったのかもしれない。