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無名サイトのつづき

ペヤング綴りという概念

本稿は当ブログの過去記事「ゆめタウン読みという概念」の精神的続編となっている。このため、当該記事をお読みになっていない方はまずご一読頂くことをお勧めする。

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……さて、毎月のように数多の新製品が登場しては消えてゆくカップラーメンにおいて、カップ焼きそばという製品は比較的地域性が残っているジャンルであるように感じられる。有名どころでは北海道におけるやきそば弁当や東北におけるバゴーンのように、その土地で深く愛される製品が存在しているからである。

関東におけるペヤングソース焼きそばもまた、そうした「ややローカル」の香りを残す製品の一つであると言えるだろ。現在では全国発売となっているが、かつては東日本を中心に流通していたため、現在でも知名度は西低東高(?)となっている。

こうした地域性の存在がインターネット普及期においては面白がりの対象となり、また各社がフィルム式湯切りに移行する中で頑なにプラ蓋を続けていたことで「だばぁ」は一種のネットミームにもなった。しかし異物混入がそのインターネットで拡散することにより存続の危機に見舞われたのもまた記憶に新しい(なお、このトラブルからの復活時に包装仕様の見直しにより遂に湯切りがフィルム式となり、だばぁも発生しなくなった)。

そして復活以降は根強いファンに支えられつつも、新たにバズりを意識したかのようなサイズ・バリエーション、そして辛さといったちょっと頭のネジが外れたかのようなメニューを連発して現在も話題を振りまいている。

特に激辛シリーズなどは一種のベンチマーク的に機能しており、各所のレビューを見る限り美味しさというよりは純粋な辛さを追求した製品のようで、絶賛よりも怨嗟の声の方を多く見かけるほどだ。そういう意味では、数あるインスタント食品の中でもトップクラスにインターネットと親和性の高い食品だと言えるだろう。

さて、そんなペヤングの名前の由来は公式サイトにある通り、発売当時カップ麺が袋麺に比べて高価だったことから「若い人にも分け合って食べてほしい」という願いを込めてペヤング(ペア+ヤング)という名前になったとのことである。最近はもうペアでも食べ切れないだろみたいなのたくさんあるけど。

というわけで、語源の綴りはは"Pair"+"Young"ということになる。ここまではいい。

ところが、製造元であるまるか食品の公式サイトのドメインは「http://www.peyoung.co.jp」なのである。そう、語源は"Pa..."なのだが、表記は公式に"Pe"なのだ。

しかし、ここで一つの疑問が生じる。

読みを重視して"Pe"+"Young"にするのであれば、いっそのこと"Pe"+"Yangu"でもいいのでは? ということである。つまり、読みを活かして両方ローマ字綴りにすればいいという話である。ただでさえ”Pe”が異彩を放っているのだから、むしろ続くYoungが英字綴りである必要はないようにも思える。しかし実際にはそうなってはいない。

ここで出てくるのが冒頭の「ゆめタウン読み」である。あちらは"You"+"me"という英語の二単語を「ユー(英語読み)」「メ(ローマ字読み)」と読ませるもので、このチャンポン読みに違和感と特異性があった。

翻って今回のペヤングは"Pair"+"Young"が「ぺ(英語の発音)」「ヤング(英語の発音)」であるにも関わらず、その綴りが発音に引っ張られて"Pe(ローマ字)"になってしまい、一方で"Young"はそのまま残されたのである。もちろん、既にペヤングはこの組み合わせで一語の商標となっており、その綴りが(たとえ英語のPairが語源に存在しているとしても)"Pe"であろうとなんの問題もない。

しかしそうであったとしても尚、この"Pe"+"Young"という組み合わせにはゆめタウン読みに通じる違和感が存在していると言っていいだろう。

これらを表にまとめるとこのようになる。

つまり、ゆめタウン「表記が全て英語ベースだが読み方が一部ローマ字ベースになったもの」であり、ペヤング「発音が全て英語ベースだが表記が一部ローマ字ベースになったもの」なのである。これはゆめタウン読みではないが、ある意味でゆめタウン読みに対抗する(?)概念が生まれたと考えられる。

かくして、前回記事において「類例が思いつかない」と述べたゆめタウン読みに対して、その概要は酷似しているもののゆめタウン読みとは異なる概念───言うなればペヤング綴り──の概念が生まれたのである。なんだこれ。

※なお現在のまるか食品にはペヤングのサブブランドとして自社パロディ(?)とでも言うべきペヨングが存在しており、これは"Pe"-"Young"をペヨングと読ませており結果としてゆめタウン読みに近くなっている。もうわけがわからんなこれ。