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無名サイトのつづき

繰り返すばかりの毎日だから

スポーツというのものがあまり得意ではない……というか、ぶっちゃけ苦手である。

いや、もっと言えばスポーツに限らず、生きる上での基本動作だいたいが苦手であって生きているだけでMPが減るような感覚さえ背負っているのだが、とりあえずはその中でもスポーツが苦手である。

あるときふと、何故スポーツが苦手なのか考えてみた。こうした話題では往々にしていわゆる運動神経の問題にすり替えがちだが、では運動神経の問題というのは何の問題をもって「運動神経が悪い」なのだろうか。そういうことについて考えてみたのが、ここから述べる話である。

結論から先に言えば、問題は「繰り返し動作の下手さ」に起因している。

ありとあらゆるスポーツにはあるべき姿や目指すべき姿というのが規定されている。それはより多く点を取ることだったり、より速くゴールを通過することである。相手が居る場合もあれば、一人だけのこともあったり、或いは同時にはプレーしていないが最終的にランク付けされる場合もあるが、概ねどのようなスポーツでもよりよい姿に向けて努力することが求められている。

さて、例えば野球を例にして考えてみると、このスポーツの基本動作として「ボールを所定の位置に投げる」「ボールが来たら捕球する」「バットでボールを打ち返す」あたりがプレーのための前提になるだろう。「スポーツが苦手」「運動神経が悪い」とされている人はもうこの辺りで早々に躓くことになる。例えば「バットに当たらない」とか「望んだ方向に投げられない」といった具合である。上手く打つとか速く投げるとか以前の問題である。

とはいえ人間誰しも最初は初心者であるし、バットやボールを握って生まれてくるわけでもないのだからゼロからのスタートというところは皆同じだろう。一般的には、そこら辺を誰かがキチンと教えた上で何度もトライ……つまり練習すれば上達するものだと認識されている。スポーツが苦手という人に対してまずは基礎をみっちりと教え込むというのも、こうした「練習すれば上手くなる」という指針に従ったものだと言って良いだろう。

そしてここで「繰り返し動作」の概念の登場である。

上手い人(ここではそれなりについていける人まで含む)というのは、こうした練習における繰り返しの中でのトライアンドエラーが上手い。例えばバットを振るときにどのくらいのタイミングで振ればいいのかというのをきちんと学習し、それにアジャストしている。だからこそ「何度も練習すれば上手くなる」のである。

しかし、これが「繰り返し動作が下手で、繰り返しの際の精度がまったく出ない」としたらどうだろうか。たとえばタメが長くて振り遅れているとしよう。毎回のスイングがまとまっていれば「もう少し速く振る」といったアドバイスで解決する可能性が高い。しかし毎回のスイングがバラバラ(≒繰り返し動作が下手)であれば、それはタイミングの問題とわかっていても結果はバラついてしまう。結果として、上手く行かないことになる。

となると、まずそのスイングの精度を揃えればいいのでは? と考えられるかもしれない。しかし「繰り返し動作が下手な者」にとってはいくら要素別に分解していっても、なかなか簡単なことではない。それは何故かと言えば、たまたまマグレ当たりで上手く行っても、次にそれを再現することが出来ないのである。「良いスイング」を精度良く再現出来ない。再現性のなさによって精度が出ない、その堂々巡りこそが繰り返しの下手さの原因なのだ。

言い換えれば繰り返し動作が下手な人というのは「成功を我が物に出来ない」のである。

学習というものはたいてい、トライアンドエラーに対する結果を受け止め、それを再現することで進んでいく。バットにボールが当たらないなら、タイミングを、振り方を、その他諸々を変えてみて、上手く行ったものを取り入れてそれを精度よく再現する、それの繰り返しと言えるのだ。

とはいえ、これは「個々の小さな成功は再現出来る(≒次回繰り返すことが出来る)」という前提に立っていることになる。ということは上手く繰り返せない人にとってはこれは死刑宣告にも等しい。

結果、繰り返し動作が下手な人は永久にアドリブを続けるか、精度の低い繰り返し動作を闇雲に続けることになる。もちろんそのうち何回かは良い当たりが出るかもしれないが、出たところで再度それを再現することが出来ないのだからどこまで行っても偶然どまりである。結果として、上達も感じられなければ楽しみもない、これをもって「苦手」の一丁上がりである。

そして成功を我が物に出来ない……自らの努力によっては何一つとして変わらない、仮に成功してもそれが偶然であるということは、とてつもない無力感を生むことにもなる。

というわけで案外日常におけるスポーツ以外の苦手意識もこれに起因しているのかもしれない。繰り返すばかりの毎日なんだから。