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無名サイトのつづき

ホテルニュー

日本三大ホテルニューと言えば、もちろんホテルニューアワジ・ホテルニュー岡部・ホテルニュー塩原のことである。これらはいずれもCMにより人々に強いインパクトを残している。

ただ、ホテルニューは非常に幅広い概念のため、これらとは雰囲気を異にするホテルニューも存在している。例えばシティホテルの雄であるホテルニューオータニであったり、かつては同様にシティホテルの雄でありながら悲劇的結末に至ったホテルニュージャパン、またクラシックホテルとして名高いホテルニューグランドなどが代表的なところであろう。この辺りに関しては数あるホテルニューの中でも知名度・品格共にトップクラスにある(あるいはあった)と言って良いだろう。

また、地方に目を移してみればほぼ全都道府県においてその土地に応じたローカルなホテルニューが存在しており、こうしたホテルニューの存在は駐車場業界における一大勢力である月極と双璧を成すものである。

さて、こうしたホテルニューの数々であるが、実のところ本当にニューであるかというのはわりと怪しい。というか、現存するホテルニューはいずれも老舗であり、少なくとも2021年における「ニュー」ではない。こうした「ニュー○○」については、一般的には元になる何かがあり、それに対する新しいものとして命名されている。

既存に対するニューの例としては、家電量販店のコジマの例がある。往時のコジマは競合店の登場や既存店舗が手狭になると、近隣により大型のNew○○店を出店することが多かった。この場合は既存店舗に対するNewとなるので、まさしく既存に対して新しいのである。

とはいえ、この店名についてはビックカメラへの傘下入りとそれに伴うコジマ×ビックカメラ業態の展開により現在はほぼ消滅している。そして2021年現在においてNew○○店という命名の店舗が残っているのはむしろ同社の競合であるヤマダ電機の方だったりする。また、北関東YKKの中で残るケーズデンキにおいては類似の概念としてパワフル館が存在したが、これも現在は著しく数を減らしている。

このように、例に挙げた家電量販店においてはNewというのは概ね既存店舗に対するニューを意味していた。ではホテルニューもそうかというと、実は必ずしもそうとは言えない。

ホテルニューの中でも特に歴史の古いホテルニューグランドにおいては「かつて近隣に存在したグランドホテルの事実上の後継(経営者は異なる)としての命名という説があり、かつてのグランドホテルに対してのニューではあるものの、ホテルニューオータニやホテルニュージャパンに関しては(レトロニムとしての)ホテルオータニやホテルジャパンが存在したというわけではない。

こうしたニューに対するオールド(?)の不在というのは、日本三大ホテルニューにおいては下記のようになる。

ホテルニューアワジ → 前身となる旅館水月荘が同地に存在。

・ホテルニュー岡部 → 前身となる鬼怒川観光ホテルが近隣地に存在。

・ホテルニュー塩原 → 前身となる塩原東京ホテルが同地に存在。

……このように、実は日本三大ホテルニューにおいてはいずれも前身が存在したものの、いずれも旧称はそのものズバリのネーミングではない。

また、各地方に存在するローカルなホテルニューについては調査しきれていないが、こうしたオールドの存在しないニューにおいては設立時点において最先端という意味でニューと付けられていたのではないかと思われる。いわば新時代の施設としてのニューというわけで、ニューオータニやニュージャパンはこちらの用法と言えるだろう。

そしてこうした命名法についてはどこかクラシックな香りが漂っており、あまり現代的とは感じない。どことなく高度経済成長期というか、少なくともバブルくらいまでの昭和の雰囲気を感じてしまう方が多いのではないだろうか。

これにはバブル以降は横文字の名前が増えてくるというのもあるが、ことさらに新時代をアピールするような空気ではなくなったというのもあるのだろう。

こうした命名に一定の時代性を感じてしまう例は、何もホテルニューだけではないようで、同様の例としてアニメにおける「新○○」について書かれた記事を挙げておく。

rrr-lang.hatenablog.com

こちらに関しても用法が一定ではない(続編型とリスタート型と分類している)ものの、その「新」という言葉から受ける印象には懐かしさが感じられるとしている。

いわばネーミングにも時代感というか空気みたいなものが現れているのだ。とはいえ、実際のホテルニューは単一のチェーンではなく運営もクラスも形態も異なるし、それはアニメにしたって同様で、全然別の作品群である。

それなのにネーミングだけが同じルールに従っていて、一定の枠組みの存在や時代性まで感じてしまうのだから、なんとも面白い出来事ではないだろうか。