インターネット

無名サイトのつづき

インターネットは今でも誰かを救っているのだろうか、それとも

 

久しぶりにはてなブログのトップページを見て、ふとこんなものに気付いた。

blog.hatenablog.com

ここは元々日陰にあって、文学賞を含むキラキラしたイベントに参加するようなブログではない。だが、その一方でこのブログにはいつだってインターネットに対してのひねくれた気持ちをぶつけてきた。インターネットそのものがテーマだというのであれば、日陰から一言くらい書いてもバチは当たらないだろう。

なんせ当のサイト名がインターネットである。ちなみになんでこんな名前になっているのかというと、これは仮にサイト名がバレても一般名詞にしておけばそうそう検索に引っかからない(リアルとネットを分離する)という古のテクニックから生まれたものである。もっとも、今の世の中ではそんなことを気にする人の方が希かもしれない。この話に首をかしげる人は、かつてはそういう文化があったということだけ頭に置いて欲しい(これ以降文中の「インターネット」はサイト名ではなく一般名詞を指す)。

というわけで、インターネットについて書いていきたいのだが、自ずと内容は自分語りに近づいていく。自分語りというのはかつてのインターネットにおいて(ひょっとしたら現在でも)最大限に嫌われた行為の一つである。しかしインターネットがある意味で不定形で各々の捉えた姿が異なる以上、いろいろな視点からの思い出話も必要になってくはずだし、だからこそ上記のような「個々人のインターネットを振り返る」的な企画も成立するのだろう。

もちろん、インターネットの通史的なものは一応存在するのだが、実際の所個々人にとって年表に載っている出来事なんてのは割とどうでも良くて、その瞬間ごとに強く影響を受けた個人サイトやブログというのも皆同じではない。

そういうわけで、あくまでの個人の感想ではあるが、このブログや過去の記事を通したインターネット観といった形でインターネットについて綴ってみたい。以下の内容はいわゆるゼロ年代から現在に至るまでの内容となる。個々の認識は当時の感覚(それも個人の感想)と思っていただければ幸いである。

で、先の「ひねくれた気持ち」というのはこのブログ最初の記事で既に現れている。実際の所言いたいことの全ては既にそこで言い切ってたのかもしれないけど、こういうテーマなので改めて再掲しておく。

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この記事からはもう10年くらい経つのだけど、今でもこの気持ちはあまり変わっていない。先の通りインターネットの実名主義SNSの隆盛なんかも、この頃には既にハッキリしていた。ゼロ年代が終わり10年代が始まる頃には、インターネットもまた変化の時代を迎えていた。かつてのインターネットが持っていた「個人が全世界に直接繋がれる感覚」「匿名ベースによるフラットな価値観」なんてものは結局幻想に過ぎなかったのだけど、それが幻想だったということに苛立っていたのがここを立ち上げる切っ掛けだった。インターネットも現実になってしまったのだ。

ただ、こうしたブログ(や前身のはてなダイアリー)すら、かつて誰も見に来ない日記サイトの管理者だったものにとっては既に馴れ合いと内輪の象徴であった。いわゆるはてな界隈といったものがバチバチに喧嘩しているのもよく見たが、まぁそれも含めてはてなは限られた有名アカウントが馴れ合いを繰り広げる世界だし、トラックバックやコメントが実装されたブログというのもだいぶ軟派なものに感じられた。一方でそれ以前の個人サイトには反応なんてなくて当たり前だったのだ。そしてそれでも続けるというのがそうしたサイトにとっての矜持であった。

とはいえ、内輪というのはその内側に入ってしまえば本当に心地が良い。打てば響く相手がいるのならばそちらに向けて発信する方が気持ちがいいのは当たり前の話である。こうした認識はいずれインターネット全体に広がっていき、斯くしてある時期以降のインターネットはwebサイト主体から個人(アカウント)主体へと変化していった。

かつては特定の人を指すときに「○○というサイトの管理人XXさん」だったのが、いつしか「XXさん(○○というサイトもやってる)」という風に変化していったのである。インターネット上の主体は、モノ(サイト)ではなくヒト(アカウント)になったのだ。

このような変化の結果、コミュニケーションの主体はwebサイト同士のそれから中の人同士のそれへと変化した。こうした変化について綴ったのが下記の記事である。

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この記事ではかつて行われていたwebサイト同士のリンクといったものが消滅していった結果、webの名の通り相互に繋がり合うメッシュはもはや成立せず、現実的には個々のサイトに対して検索サイトだけが繋がるハブアンドスポークになっていると指摘した。そしてそれを代替する存在がおそらくはSNSであるということも。

実際、現在(インターネット上に存在する人格としての)ヒト同士をつなげているのはSNSであることは疑いようもないだろう。

しかし、SNSというのは先にも述べた通り、つまるところ内輪のコミュニケーションである。そして匿名性の薄れたSNS上では、現実世界での地位や功績といったものが補助呪文のような効果を持っている。ある意味で、現実をコピーしてペーストしたようなものなのだ。

そして、現実世界に疲れてインターネットを新天地とした者にとって、そこにまで現実世界がついて回るのは一種の地獄である。特に一時期のインターネットは匿名掲示板を代表とする匿名・殺伐・無頼の空気が色濃く残っており、そうした時代を生きた人にとってはインターネットとは現実とは無関係に身体一つで身を立てられる、ある意味実力主義な場所だった為、それに反する馴れ合いというのは最も嫌うものだった。

しかしこれもコインの表と裏で、適切な「内輪」に入ってしまえばこれほど心地よい場所もない。SNSはそうした「内輪」を上手く成立させるシステムであり、多くの人にとっても有効であった。それはかつて彼らが馴れ合いと呼んで嫌ったものであったとしても。

つまりは矛盾なのだが、しかしどちらもインターネットの一面である。

かくして矛盾した気持ちを抱えながらも、結局のところインターネットから離れることは出来なかった。SNSに活動の主体を移しながらも、矛盾に引き摺られる形でこのブログも続いてきた。なんせ完全に割り切れるのであれば、誰も見ていない/反応がもらえないブログなんかに書く必要は一切ないのだ。Twitterにでも書き散らして2つや3つのfavが付いたならそれで分かってもらえた感──いわゆる承認欲求──が満たされてそれで終わりである。現代ではそちらの方がずっと健康的かもしれない。

そして多くの人はもはやそうしているように感じる。今や個人サイトやブログというのは数を減らす一方だからである。なのに矛盾を抱えたままだから今でもここがある。徹頭徹尾、ひねくれたブログである。

そして実際、仕組みとしてのSNSには限界も感じる。かつてのmixi等がそうであったように、アカウントの取得を前提として半クローズドの仕組みはそこで生まれた知見を後から追いかけることが著しく困難だし、そもそもアカウントベースのサービスの場合、発言者のアカウントが失われてしまった場合はログすらも残らない(まぁこれは個人サイトも同じだが……)。また、SNSにおける話題はもはや流速が速すぎてその日のうちに鮮度が失われてしまうことも多く、これもまた残らない。

現代においては速報性・リアルタイム性を重視したメディアとしてのインターネットばかりが盛り上がっており、かつてあった資料性というか各自の知見の保管庫としてのインターネットは一時期よりも後退してしまったように思えてならないのである。

そう考えると、SNS以外に書かれてこそ輝く情報も存在すると思うし、SNSと既存の個人サイトは補完し合えるのではないかと思うのだ。

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とはいえ、個人サイトには反応が(SNSに比して)少ないor存在しないというのは続けるモチベーションを保つ上で大変難しい問題である。そこを考えると、やはりオールドスクールなインターネットは狂人のものなのだ。しかし、かつてのようなインターネットに救われた者の一人として、やはりインターネットは何処で使うのか分からない無茶苦茶な知見で溢れていて欲しいし、誰かを救う存在であり続けて欲しいと思っている。

インターネットも現実だが、しかしまったく現実そのものというわけでもない。現実の愉快なサブセットとして、はみ出し者を迎え入れたり、バカバカしいことばかり書いてあったり、あまりにもニッチな趣味で盛り上がったりしていて欲しいし、そうしたものを発見して驚いたりし続けたいのだ。それが今も昔もインターネットに求めるものであり、だからこそこのブログは続いている。

まぁ正直なところ個人サイトで無料で公開したところで反応もないし1円にもならないというのであれば、反応のあるSNSで発表したりn○teで有料公開した方がいいというのはまったくもってその通りである。それでもn○teとかに行かないのはかつての基本無料インターネット育ちで「ここから有料」という表示を見た瞬間に即戻るボタンをクリックするような人間だからである。かといって無料で公開するならあそこで書く意味なさそうだし。

……閑話休題。最後に、当ブログで過去最大のブクマ数を記録した記事を貼っておく。このような思いもよらないことがあるからインターネットというものはサイコーに面白かったのだ。そしてきっと、これからも面白い。たぶん。

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