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無名サイトのつづき

電動キックボードを考える(2) 電動キックボードに乗ってみよう・車体編

前回記事では、電動キックボードを試してみるまでの経緯と、そこに存在する欺瞞について書いた。第二回の今回はいよいよ乗車することとする。

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さて、せっかく電動キックボードを使うのだからということで、一つ目標を立てた。普段電車では行きづらい中古カメラ屋への訪問である。東京の山手線から西側は、東西に伸びる路線はあるものの南北方向に伸びる路線がないことから南北方向には移動がしづらい。こういった鉄道移動が不便な地帯を電動キックボードで補完することが出来るのであれば便利だろうし、想定されるユースケースの一つとしてアリなのではないかと考えたのである。

というわけで、事前に考えていたルートとしては下記のようなものであった。

渋谷駅前のステーション発→笹塚(最近開店した中古カメラ店)→中野(有名中古カメラ店)→練馬(サービスエリアの端・中古カメラ店)→最寄りのステーションへ返却

これでだいたい片道十数キロくらいになりそうなので、航続距離に制限がある電動キックボードがどのくらい行けるものなのかも含めて良いテストになるのではないかと考えたのである。

というわけで電車で渋谷駅に降り立って、昼食を取ったら行動を開始することとした。昼食を取るまでの間に15分ほど渋谷駅前を歩いてみたが、その間に3~4人ほど電動キックボードに乗車しているのを見たので、この辺りでは比較的メジャーなサービスなのかもしれない。これだけ走っているなら珍しい乗り物に乗っているという一種の小っ恥ずかしさも薄れるだろう。なんとなくこういうのが沢山走ってそうな渋谷からスタートしたのはやはり正解だったようだ。

で、渋谷駅前にはそれこそ数百メートル以内に何カ所もステーションがあったので、現在地のなるべく近くで満充電の貸出機があるステーションを探しそちらへ向かった。現状試験的なサービスであるにも関わらずステーションの数は十分すぎるほどで、少なくとも借りられなくて困るということはなかった。

サービスの詳細というか、まじまじと見たのは今回が初めてだったので意外だったのは、ステーションが本当に置き場だけであり、シェアサイクルのほとんどにあるようなゴツい駐車スペースがないことだった。自転車の場合はそういった場所に整然と止めておく必要があるが、ある程度の自重とスタンドがある電動キックボードにおいては不要ということなのだろうか(シェアサイクルの場合はステーションへの施錠設備も兼ねているケースが多い)。

また、ステーションには充電設備等があるのかと思ったがそれもないので、純粋に置いておく場所というくらいの感覚らしい。もし全てのステーションに充電や管理の機能が必須だったとすれば都内の一等地にこれほど短期間かつ大量にステーションを配備するのは難しいと思われるので、これは賢いやり方だなと感じた次第である。気になる充電については後日回収して行っているのだろうか。

先行して電動キックボードが広まった中国等ではステーションすらなく乗り捨て型のサービスが普及しているのでそれらをトラックで回収しているらしいが、LUUPがどういう仕組みなのかは実際のところよく分からない。ただ、近隣のステーションを見る限りでは電池切れになっているものはほとんどなかったので、それなりに充電が上手く成されているのだろう。

車体はバージョン違いがいくつかあるようで、当日乗った二台は微妙に仕様が異なっていた。

まず、一台目に乗ったもの(渋谷→笹塚の移動で使用)については、今写真を見返したらナンバーに自賠責のシールが貼ってなかった。単純な貼り忘れミスなのかそれとも悪戯で剥がされたのかは知らないが、この状態で走ってるのは原付なり小型特殊登録の乗り物としてどうなんだろうという話だが、実のところ気付いたのは乗車後のことだった。まぁ、他の個体については自賠責のシールが貼ってあったのでおそらくは問題ないだろう。

この写真でも分かる通り、そもそもテールランプやナンバーはとても低い位置にあり、おそらく後続車からの視認性は良くない。またこのモデルに関してはリアウィンカーはなく(ステーションに泊まっていた車両の中にはリアウィンカー付きもあった)、ハンドルバーエンドの白い部分がウィンカーとして光る。ただし光量は日中だと微妙なところで、12VバッテリーレスのXR50Mのウィンカーでさえもう少し気合いの入った光り方をするのではないかというレベルである。正直これ周りの車から見えてるんだろうかと不安になったが、しかし手信号を行うわけにも行かないので見えていることを祈るばかりであった(手信号の為に片手運転しようものならその場で転倒していただろう)。

ステップボードには足を揃えて置く程度の幅があり、この範囲内でポジションが自由に取れることもあって窮屈な感じはしない。ステップボードに電池でも詰めているのか重心は低めである。ただし当然のごとく搭乗中は立ちっぱなしになる。

タイヤサイズは10インチと、思っていたよりは大きい。原付一種スクーターの多くが(幅は異なるが)10インチタイヤなので、それを考えれば原付並の装備にはなっているということになる。ちなみに保有している乗り物のタイヤサイズで言うと、折り畳み自転車のパシフィック キャリーミーが8インチ、原付一種のホンダ XR50Mが12インチといったところなのでこいつは両者の中間ということになる。ただ、乗り味的にはやはり小径車という感覚であった(ただし、LUUPの初期モデルは8.5インチだったらしく、これでも大径化しているそうだ)。

ブレーキはドラム式で、その最高速(15km/h)にしては十分な効きだった。下り坂等で瞬間的に20km/hを超えるようなシーンでもブレーキに不安は感じなかったので、そういう意味ではよく出来ていると感じた。前後ブレーキは左右レバーになっており、いわゆる普通の自転車と同じである(非電動キックボードによくあった後輪を踏んで止めるタイプのブレーキではないし、バイクのようにペダル式というわけでもない)。これは利用するユーザー層を考えれば妥当なところだろう。

サスペンションは一応テレスコピックのものが付いているが、ストロークは見ての通り短く、そこそこ地面の凹凸を拾うものだった。まぁ速度的にもこれで必要十分ということなのだろう。

右手側にはスロットルがあり、これは押し下げ式となっている。バーエンドの白い部分が先に述べた通りウィンカーの発光部である。またミラーは片側だけに付いている。走行性能的にもミラーを見る機会が多い乗り物なのだが、この部分は大いに不満だった。

分かりづらいかもしれないが、このミラー、いわゆるガラスミラーではなくプラスチックミラーであり、この画像だとそこそこ綺麗に見えているが、走行中は歪んでしまって使い物にならない。後方確認が常に必要な乗り物なのに、その後方確認が困難なのである。この点においては明確に最悪だったと感じる。繰り返しになるが、こいつはその走行性能の低さとドライバーからの視認性の悪さから、下手な原付以上に後方確認が必要な乗り物である。歪んでしまって後方に車が居るかも分からないようなミラーでは明らかに危険であり、ここは改善の余地があると言って良いだろう。

もう一つ最悪な点について述べると、速度及び電池残量を表示する液晶メーターは輝度が低すぎて晴天下では使い物にならないと感じた。特に電池残量については電動車両の命だけにそれが確認出来ないというのは不安で仕方がない。更に言えば、一台目に借りた車両はウィンカー動作時にブザーが鳴らない仕様(これが仕様なのか故障なのかは不明)だった為、動作については主にメーターの表示をアテにするしかなかった。でも見えづらいのである。

左手側のこのウィンカーについても左右ボタンと真ん中にボタン(押すとクリック感がある)が配置されているのでてっきりバイク等でよくあるセンタープッシュキャンセル式かと思っていたのだが、実際はセンターボタンにはなんの意味もなく、実際はプッシュ-プッシュキャンセル方式だった。一台目についてはウィンカー動作時にブザーが鳴らず、メーターの表示も見づらく、当初はウィンカーがバーエンドに付いていると思っていなかったので動作しているのかも確認しづらかった。ブザーについては二台目に借りた方では鳴ったのでおそらく鳴るのが正しいものと思われる。

スマホホルダーは金属製のガッシリとしたもので、ネジで締め付けるのだがどういうわけか走行中に振動で段々スマホがズレていく(クランプネジが緩んだわけではない)症状があった。スマホを押し込んでも入らない程度にはクランプされているのに、細かな振動でだんだんズレていくのである。

このホルダーはバネ式ではなく完全にネジでクランプしてるので、要するに万力と同じ仕組みである。このためスマホに行き当たったところでネジを止めるのだが、それだと微妙にクランプ力が足りないらしかった。こうなるとバネ+ゴムパッドで補助した方が良いのではと思えるのだが、屋外放置が基本の車両だけに耐久性重視でこうなっているのだろうか。

全体的に見て不満も多少あるが、一方で事前に予想していた動力付き車両としての危なっかしさというものは意外に少ないと感じた。もちろん小径なりの乗り物ではあるのだが、少なくとも単独での走る曲がる止まるに関しては思った以上によく出来てるというのが正直な感想である。

もちろん、これは車両単独での話で、車道に出て交通の一部となった際にどう思うかというのはまた別の話なのだが。もちろん言いたいことはたくさんある。

というわけで、次回公道編でようやく車道に出ることになる。今回も走るとこまで行かなかったな……。