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無名サイトのつづき

世界のバランスを取るということ

日常会話や雑談において、よほど親しい仲でもなければ避けなければならない話題というものが存在する。代表的なものが政治・宗教・野球の話題である。

これもググってみると枕詞に「顧客としてはいけない」「友人としてはいけない」「バーで話題にしてはいけない」などのバリエーションがあり結局のところどういう状況でなら許されるのかイマイチ不明瞭なところがあるのだが、おそらく真意としてはいずれも「何処に地雷があるのか分からない話題なので、避けておいた方が無難」といったところだろう。

いずれの話題もライトなものであればそれほどタブー視されてはいないが、一方でそれによって話が盛り上がった先の意外なところに地雷が埋まっている可能性がある。万一その地雷を踏んでしまった場合喧嘩となり会話どころではなくなってしまう。こうした軋轢を避ける為に予め避けておいた方が無難ということである。

またこれには、話している相手が必ずしも多数派の支持者ではないにも関わらず、一方でそれを話題にしようとするものはたいてい圧倒的多数派であるというねじれの結果、暗黙のうちに多数派の常識を押しつけ、その結果無自覚に少数派をDisる態度が表れてしまう(そしてそれがすれ違いをもたらす)という戒めでもないかと思っている。

話題は変わるが、皆様は近年アニメ・ゲーム等の女性キャラクターの胸が盛られる傾向にあると感じてはいないだろうか。これはまったくの肌感覚でありエビデンスは存在しないのだが、例えばソーシャルゲームなどにおいては基本的に胸のサイズは盛られる方向にあると感じている。

また、そうした原作が存在するキャラクターに対して更に二次創作的にイラストや漫画が描かれる場合に、さらにその作者の嗜好によってアレンジ要素として胸が盛られる場合がある。こうした場合、あまりにも原作と異なる見た目となったりキャラ設定を破壊するもの(設定年齢に対して異常など)については特に巨乳化などの明示的タグが付けられる場合もあるが「多少盛った」くらいでは改めて言及されることもなく、また見る側からことさらに指摘されることもない。つまり、基本的には乳を盛る行為については自然に受け入れられているのである。

もちろん、現実社会に目を向けてみればこの数十年で日本人女性のバストサイズは拡大の一途にあるというデータも存在しており、そうした傾向を踏まえれば基本的にはサイズアップが自然であり、また大きいことは良いことだという価値観が存在するのも理解は出来る。

だが、陰と陽、プラスとマイナス、それらのバランスによってこの世界が成立していると考えると話は変わってくる。というのは、これほどまでに広く受け入れられた「胸を盛る」という行為に対して対になる概念の「胸を削る」という行為は拮抗する勢力たり得ていないからである。プラス方向(盛る方向)への圧力が圧倒的なのだ。

本来であれば貧乳キャラに胸を盛ることに対して逆方向の動きもあってしかるべきだが、それらは勢力としてはあまりにも小さい。例えば2021年10月9日時点のPixivでは「巨乳化」タグ10,989作品に対して「貧乳化」タグ710作品とケタが二つ異なっている。

事実上の貧乳化──胸を削る要素──としてロリ化(低年齢化)の概念があるが、胸を盛る行為については必ずしもバストサイズ以外の改変を伴わないので、乳を盛る行為に対するカウンターパートではなく別の概念であると考えた方がよいだろう。

そして先にも述べた通り「ちょっと乳を盛る」程度でタグ付けのないサイレントな巨乳化はあまりにも自然に行われており、こうした暗数まで数えれば、胸を盛る行為と削る行為の差はおそらくもっと広がるのではないかと思われる。

つまり、このままでは世界は無限に胸が盛られ続け、際限なく基準のバストは拡大していき、やがて世界は巨乳に覆い尽くされてしまうかもしれないのである。

……そこまで急進的ではなくとも、基準点(?)が年々上方にシフトしていることはなんとなく感じられるのは先に述べた通りである。

そして、胸を削る行為は胸を盛る行為ほどポジティブに考えられていない節がある。例えば貧乳化においては「元々胸に対して自負を持っていた巨乳キャラに対する罰や戒めとしての貧乳化」という概念が存在しており、これは胸を削っているようでいて、実のところ胸は盛られるべきであるという考えの現れである。

こうした現状を鑑みるにこれは多数派の常識が押しつけられた結果であり、世界のバランスが崩れているのではないかと言える。プラス方向への圧力のみが存在するのは健全ではない。よって新たな新世界秩序構築の為に巨乳キャラの胸を削り続けるレジスタンスが現れるべきなのではないかと考える次第である。

なお、怒られそうなので最後に取って付けたように胸に優劣はない旨書き添えておく。胸だけに。

お後がよろしいようで。