インターネット

無名サイトのつづき

コミケ撮影覚え書き改訂版:撮り方と撮影モードについて

久々に撮影に行って思うところがあったので、コミケ撮影覚え書きシリーズについて補足しておく。過去のシリーズは下記の通り。

 コミケ撮影覚え書き1:序論というかきっかけ
 コミケ撮影覚え書き2:必要なものを準備しよう1(ストロボについて)
 コミケ撮影覚え書き2:必要なものを準備しよう2(ストロボ以外の機材について)
 コミケ撮影覚え書き3:撮影しよう

毎年夏前と冬前はそれなりにアクセス数が上がるので、初めて撮影をするという方に対してある程度の参考にはなっているのではないかと思っている。が、これらを書いた当初とは考え方が異なっている部分や、書き漏らしたと思っている部分も多い。なので今回はそうした部分について追記していきたい。

以前の記事では全体として機材の話に終始してしまい、実際に現場に行って何をすればいいのかという部分についてはだいぶおざなりになっていた感がある。また、コミケでのコスについて作例を上げているサイトは結構あるのだが、どうやってそれを撮っているのかという部分について子細に解説しているサイトはさほど多くないように思える。なので、あくまでも一例としてだが、自分がどのように撮っているにかについて書いておきたい。

※なお、主たる機材はずっとα900と85/1.4Gとストロボで変化がないので、以降この機材セットを基本に解説している。自分の装備と異なる部分などは適宜自分の環境に置き換えて読み替えて欲しい。また、この解説は当初の想定通り「ある程度カメラについては分かっているが人は撮ったことないor本格的なコス撮影はしたことない」人向けである。知ってる人には釈迦に説法な内容も多々あろうが、予めご承知おき頂きたい。

1.会場に行こう
何はなくとも、会場に行かなくてはならない。そこから話するのかよってツッコミが聞こえてきそうだが、ちゃんと意味がある。それは会場入りする時間のことで、出来ればAM中のなるべく早く会場に入れるような時間帯に向かうのがベストである。

これは何故かというと、当たり前だが会場は混むので、落ち着いて撮影に慣れるにはなるべく人がいない時間帯に行くのが良いという話である。また、開始から一時間くらいであれば、囲みでしか撮れないような人でも案外並びで撮れたりする。

ここで「囲み」と「並び」について解説しておきたい。なおコレは便宜上の名称である。

囲みというのはレイヤーさんに対してカメコが複数同時に撮影する(取り囲むので「囲み」)スタイルで、コミケでの撮影と聞いてよくイメージされる撮影方法である。たいてい後述する「並び」で処理出来なくなると囲みに移行するので、人数としては数名~数十名で構成される。ほっとくといつまでも終わらないので、ある程度タイミングを見てレイヤーさんやスタッフからカウントダウンが行われて、カウントがゼロになったら終了となる。(散らすとか言われる。なお散らされたら一旦撮影は終了で皆解散となる)

一方の「並び」はレイヤーさんとカメコが基本的に1:1で対応し、同時に撮影は行わず順番を待つ人は後ろで「並んで」いる。なので「並び」。だいたい一人当たり数カット~多くても10数カット程度で順繰りに回っていく。つまり、ごく短時間ではあるがレイヤーさんを占有(?)するスタイルである。ただ、この並びもあまり列が長くなりすぎると邪魔になるので適宜囲みに移行したりする。

個人的には、コミケの華は囲みにあるとは思うが、撮ってて歩留まりがいいのは圧倒的に並びなので並びで撮ることが多かったりする。理由はあとで説明する。

2.撮影の準備
さて、会場入りしたら早速機材を組み立てて撮影開始である(ブラケット等を仕込んでる場合はその場で組み立てることになるので)。ちなみにコスプレ会場は複数あり、場所により開く時間が異なることからか混み具合が異なる。また当然光線状況も異なるのだが、何処が会場として開放されるかは毎回微妙に違ったりするのでカタログや案内等で事前に調べておくとよいだろう。

また、カメラを組み立てるついでに事前にある程度の設定を詰めておくと具合が良い。AEモードは意図したモードになっているか? 連写モードは? 感度はどうか……etc ちなみに朝イチの失敗で割と多いのがストロボの電源入れ忘れだったりする。

過去何年かの試行錯誤の結果、現在の撮影モードはだいたい下記の通りになっている。

 露出モード:A
 F値:1.4~5.6(場合に応じて変更 基本2.8程度)
 露出補正:常時+1.0固定
 ISO:100or200
 WB:オートもしくは太陽光固定
 クリエイティブスタイル:ポートレート
 DRO:オフ
 ストロボモード:TTLオート
 ストロボ調光補正:0
 連写モード:低速
 測光モード:押す間スポット測光

この辺りの設定がある程度固まったら、早速会場をうろついて撮りたいレイヤーさんを探そう。初めのうちは、ある程度多からず少なからず列が出来ているレイヤーさんのところに並んで、前の人がどのような撮り方をしているか見るのもいいと思う。結構人によってスタイルも機材も違うので、その違いを見比べているだけでも面白いものである。

3.撮影してみよう
さて、そうこうしているうちに順番が来たとしよう。ここからは自分の撮り方と、撮っている最中に考えていることなどについて解説していく。

※以下、あくまでも自分の撮り方の一例

まずは撮らせてもらうレイヤーさんへ挨拶として「お願いします」と一声かけるのがマナーである。並びの時はともかく、囲みの時は内心聞こえてんのかなと思ったりもするのだが、無断での撮影はマナー違反である。

並びで撮る方が性に合っていることは先に述べた通りだが、一つの理由としては、ポーズや立ち位置にある程度自由度が生まれることと、目線がある程度計算出来ることにある。やはり人物撮影で目線が入っているか入っていないかは大きい。目線なしで成立する人物写真は確かに存在するが、混み合った会場で、ほんの数分、数カットという制限の中でそれを狙うのはかなり難しいことである。

また、最初に立ち位置である程度光源の当たりを付けておけると楽でよい。逆光なのか順光なのかそれとも日陰なのか、逆光気味であれば髪のハイライトが綺麗に当たり、かつ顔が影にならない為にはどの辺に立てばいいか……など。まぁ、ぶっちゃけるとたいていそこまでは考えてない。余裕があれば是非やっておきたいところだ。

さて、撮影方法についてだが、以前は多分割測光のままでカメラ任せの露出を基本としていたが、どうにも暗めに写ってしまうので最近は肌の露出最優先で決めている。

具体的には、スポット測光で肌(顔)を計ってその+1EVで撮るというやり方である。この時ストロボはオートにしておき、特に調光補正などはしていない。この時、Mモードで露出固定してしまいストロボで調整するというやり方もあるが、今のところは絞り優先オートでF2.8辺りを基本としていることが多い。背景が煩雑なのでなるべく絞りを開き気味にして飛ばしたいのだが、以前のように何が何でも開放で撮るというのはやめた。あまりに歩留まりが悪すぎるからだ。

ピントについては速写性重視でAFを使っている。が、結構AFロックしてから構図を振ることが多いのでそのたびにズレるのを直すためお守り程度にDMFモードにして微調整出来るようにしている。

一枚目はアイレベルの高さで、縦位置でややアップ気味に狙うことが多い。85mmだとちょうどバストアップを狙う感じである。一旦顔をど真ん中にフレーミングして、AEロックボタンでスポット測光を取る。露出補正は予め+1EVにセットしているので、AELは押しっぱなしでそのまま端の方のAFフレームを使って目に合わせてAFし、フレーミングを微調整する。よいと思ったところでシャッターを切る。基本的にはこの繰り返しである。

並びだとだいたい数枚は撮れるので、なるべくその間に各カットに変化を付けられるように考えなくてはならない。とはいえ、後ろに並んでる人のことを考えるとあまり長い時間もかけられないので、自分の場合はだいたい3~5カットくらい撮って次に交代することが多い。

二枚目以降のカットは膝立ちになってやや低めのアングルから見上げる構図を取ったり、横位置で寄りの構図を取ったりする。カメラの操作についてはだいたい同じである。もし光が当たっている状況で、周囲に余裕があれば光源からの向きを変えてみるのもいいだろう。(実際は混み合ってるのであまり立ち位置に自由度がないことも多いが……) 半逆光気味で上手くハイライトが入るように撮れるとわりと格好がつく。

また、仕切りポールやパイロン・周囲の人など背景が写り込んでどうしても雑多になってしまう場合は、レイヤーさんにお願いして座りのポーズを取ってもらって見下ろしの構図にするというのも一つの手である。ただ、衣装の都合とかで特定のポージングはしない方針の人もいるのでくれぐれも強要などはなきよう。

この辺りはレイヤーさんと上手くコミュニケーションが取れると非常によいのだが、慣れないうちはポーズはレイヤーさんにおまかせで撮ってみるといいと思う。その場合でも、カットごとに一声掛けて次にこちらが何をしようとしているのかある程度明らかにすると撮られる側も動きの付けようがあるのではないかと思う。その上で、作品に対して造詣があればポーズのリクエストをしてみるのもいいだろう。

……以上のような方法で撮影したのが下記の写真である。(今回は珍しくちゃんと作例が付いているのだ)

f:id:seek_3511:20141230111726j:plain
SONY α900 + MINOLTA AF 85mm F1.4G + SONY HVL-F60M
レイヤー:ぽちさん(艦隊これくしょん:天津風)

f:id:seek_3511:20141230111740j:plain
SONY α900 + MINOLTA AF 85mm F1.4G + SONY HVL-F60M
レイヤー:ぽちさん(艦隊これくしょん:天津風)

背景は飛び気味のギリギリだが、概ね肌の露出としては問題ない程度に収まっているのではないかと思う。また、横構図は(この場合は天津風なので)こうして連装砲くんがいるのでまとまるが、小道具を持っていないキャラの場合は丸々抜けてしまうこともあるので各自構図に工夫の程を。

単焦点だとどうしても自分が動かないと写る範囲が変わらず、その余地も距離にして数歩分と撮る内容に変化が付け辛くてもどかしいのだが、まぁそれも楽しみのうちかと思っていつも85mmで撮っている。一時期28-70Gも試したがAFが遅すぎてぶち切れそうになったのでやめたというのもあるのだが。

一通り撮影が済んだら、レイヤーさんへのお礼の言葉を忘れずに。もし写真を公開する予定があるのであれば、このタイミングで掲載の許可を取っておくとよい。慣れると名刺交換なんかをしている人も多い。どうせ公開するつもりないからと思って名前も聞かないでおくとあとから気になってもどの人なのか特定出来なくなることはザラにあるのだ……。

なお、囲み撮影についての解説は省く。与えられた立ち位置と残り時間で死力を尽くせ。以上。

と、いうわけで、ここ数年撮影するようになってから得た経験などをまとめてみた。この記事がこれから撮影を始めようとする人達にとって、何かのお役に立てるようであれば幸いである。

追伸……ここまで書いといて何だけど、コミケ以外のコスイベントって(となコスとかも含めて)行ったことないな。どんな雰囲気なんだろう。