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無名サイトのつづき

2015年買ったカメラとレンズ

毎年恒例のこのコーナー。今年は昨年に比べれば至って平和というか、ある程度目的意識を持って買う事が出来たんじゃないかな……とリストアップするまでは思っていたのだが、実際集計してみると全くそんなことはなかった。ただ、道楽がメインだった2014年に比べると実用的なものが多かったと言うことは出来るだろう。

さて、2015年の一発目はいきなりフジヤの初売りから始まった。

TAMRON SP 24-70mm F2.8 Di USD
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標準ズームはそれまで使っていたミノルタ28-70Gで(写りの面では)満足していたのだが、とにかく不満だったのが全域0.85mという最短撮影距離の長さであった。最近のズームはこの点を解決しているので買い換えればいい話だったのだが、Aマウントの大口径標準ズームなんてものは中古ではほとんど出てこないものである。まして純正Vario-sonnarなど高嶺の花であった。

そして、この時期はまだAマウント用のSIGMA 24-105/4が出ていない時期でもあり、ソニーからも同等スペックの純正ズームが出るのではないかという噂すらあった。よって、それらを待った方が得なのではないかという疑念がぬぐえず、ずっと身動きが取れずにいたのである。(結果としてSIGMAはここからさらに半年かかったし、純正に至っては噂でしかなかったわけだが)

……という状況の中で、初売りに行ったらちょうどタムロンの中古があったのでしばらく悩んだ末飛びついてしまった。写りについては全く不満なし。サイズや重量もVario-sonnarよりはマシと思えば許せるレベル。ただしこのレンズについてはピントリングがソニー純正とは向きが異なる。これが後述の事態を引き起こす遠因となろうとは、このとき考えてもいなかった。

・MAMIYA AF 45mm F2.8
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去年購入したマミヤ645AFDであったが、せっかくレンズ交換式を買ったのだからレンズを買わなきゃもったいないという余計な考えにより、28mm相当となるこのレンズを購入した。

中判のフィルムサイズで広角使ったら一体どんなすごいことになるんだろうとワクワクしながら買ったレンズではあったが、28mm相当というのはいろいろなフォーマットですでに慣れ親しんだ画角だったので撮る上での難しさもない代わりに思ったほどの驚きもなかった。

しかし、大サイズのポジが上がって来るとそうした理屈を吹っ飛ばして、やっぱりにやけてしまうものだ。在庫の120フィルムを使い切るまではしばらくこの45mmと80mmで頑張るつもりである。

・MINOLTA 1.4x TELE CONVERTER APO(D)
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ある日、普段は見ていないカメラ屋のサイトをチェックすると、ミノルタでは最終型となるD型のテレコンが1~2型と同じくらいのプライスで並んでいるのを発見してしまった。ミノルタテレコンは1型・2型・D型とあるのだが、超音波モーターに対応するD型は実質的にソニーの現行品と同じで、あまり出回っていないことから中古が出てもそれまでは高値安定であった。

すでに1型のテレコンは所有していたのだが、これはSSM非対応品で70-200GでAFが効かなくなるため、そのうち出物があれば買い換えようと思っていたのだった。当然即注文を入れた。

これでSSMレンズを買い足してもテレコンが使えて大満足……のはずだったのだが、実はこのテレコンα7系にアダプター経由で付けると使えないという重大な罠がある。昨今の価格下落もひょっとしたらその影響かもしれないと思うと内心複雑である。

なお、余談としてはα7系列にLA-EA3および4でAマウント純正テレコン付けると使えないのにメタボーンズとかのE-EFマウントアダプターでキヤノンのレンズとテレコンだと特に問題なくテレコンが使えるというEマウントの闇という話もある。ただでさえ望遠が足りないEマウントでこの仕打ちってバカなのアホなのという気分である。

SONY Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM
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本年度の迷走。前述のタムロンSP24-70にはピントリングの向き以外は満足していたのだが、そいつは突然やってきた。

新潟に出張する機会があり、新幹線の時間まではしばらくあったことからふと立ち寄ったビックカメラで、2型へのモデルチェンジによって入れ替え対象となった展示在庫の24-70ZAの処分品を見つけてしまったのだ。価格はなんと10万円を切っている。このレンズの当時の相場としては、中古ですら10万を切るモノはなく、間違いなく破格と言ってよかった。

しかし、である。

タムロン24-70を買ってわずか数ヶ月、写りにたいした不満は無い。ほぼAFで使っている以上ピントリングの向きなど些末な事だ。その状態でいくら純正で(相対的には)安いとはいえ(絶対的には)こんなに高い買い物をしていいのだろうか……と。

本当に悩んだ。どのくらい悩んだかというと、新潟駅を挟んで反対側にあるビックカメラヨドバシカメラを三往復した上に、時間が足りなくなって新幹線の乗車変更を四回かけたくらいである。

そして下した結論として、いまどちらも手元に残っている。アホか……。

SONY α7(+LA-EA4)
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これについては購入の顛末記事なんかもあるのでサラッと流すことにする。なんだかんだで「α900の代わりにはならない」これは事実である。が、それ以外の面で大変便利なのもまた事実……というわけで、自分の中での評価については未だ定まらなかったりする。

実際、今日のこの記事のブツ撮りは上の写真を除いて全てα7で撮影している。ライブビューのないα900では出来ないことが出来るというわけで、これだけでもかなりありがたいことなのだ。

TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di USD
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密かに今期購入のベストレンズだと思っている。

ことの始まりは、某雑誌の企画でFSWキヤノン7D mk2と100-400L2でサーキット撮影が出来る体験会に当たったところまで遡る。これまで自分にとって車は、カメラに並ぶもう一つの趣味でありながら、レース撮影というのは未経験だった。

超望遠レンズが必要なこともあり、自分には縁が無いと思っていた分野だったのだが、最近になって望遠で飛行機なんかを撮り始めていたことから、この機会に撮影の幅を広げる為、チャレンジすることにしたのだ。

結果としては、主催者の意図通りキヤノンのシステムが優秀ということはよーーーーくわかったのだが、悲しいかなこれまでAマウントで揃えてきた以上、そこからは外れられない。

かくして、ミノルタ400/4.5Gやらソニー70-400Gやらを天秤にかけたり、いっそα77を買い足してみるなどの様々な算段の末、結果としてAマウント用としては最長にして最新となるこのズームを購入したのであった。

初陣となるFSWでのWECで雨の中酷使したせいで購入から一ヶ月もしないうちに中玉が結露したりいろいろあったが、そのWECでは確かな実力を伺うことが出来た。その後はこれも初となる航空祭に行ってみたりと、自分の撮影の幅を広げたという意味では今期のベストレンズである。

SONY Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM
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いまのところAマウント用純正としては最後に出た完全新規設計のレンズ。 恒例の「安かったから買った」枠に該当する。

ここ数年で各社がこの50単クラスに話題性のあるレンズを投入したことや、その中でソニーにおいてはEマウント用のSonnar 55/1.8がその写りからすっかり「定番」と化したこともあり、このレンズは煽りを食って、すっかり影の薄いレンズとなってしまった。本来であればダブルガウスを崩したAF Planarという素性だけでも、もっと注目されて良いのではと思うのだが……。

写りに関しては、まだこれと言って掴めていないが、思ったよりは歪曲があったりと、10万以上する高級50単として賛否両論があるのも頷けるところはある。が、おそらくこのレンズの真価はそこにはないであろうことも理解しているつもりだ。

……以上、2015年の買い物としてはざっとこんなところであった。個人的に今年の撮影で最も大きかったのは、飛行機やレースなどの動きモノを多少なりとも撮れるようになったことだと思っている。

そもそもこのコーナーというのはもともと「安かったから買った」の記録であり、それは今年においても大枠では変わらなかったのだが、タムロン150-600に関しては明確な「コレが撮りたい!」という気持ちが先にあり、その結果としてのレンズ購入であった。

本来なら機材購入というのはそういうもんであり、そういう意味では初心に返れたのかもしれない。さんざん無茶してきて初心もクソもないかもしれないが、それがとりあえずの結論ということで。

続フードマニア!

以前「このレンズには実はこのフードが使い回せる」という記事を書いた。

その際はミノルタ時代のフィルタ径72mm三本爪バヨネットのことだとか、70-200Gレンズのことだったりしたのだが、基本的には同じメーカーの間で使い回す話だった。

今回はその続編として、禁断の(?)他メーカーフード使い回しについてお伝えしたいと思う。

ここで使うのは、以前28-70G用のフード作成でも登場したキヤノン製フードであるところのEW-78B2である。元々このフードはフィルム中級機とのマッチングを考えた28-135mm用のフードとして用意されたせいか、中古市場でも比較的見かけるフードの一つである。レンズ自体もまだ現行品のため、新品でも問題なく販売されている。

このフード、先述の通り切った貼ったの加工で28-70Gのフードに作り替えることが出来るのだが、実は加工しなくても最近のソニー製レンズにはそのまま使用することが出来る。というのも、キヤノンが標準的に採用している二本爪バヨネットが、何故か最近のソニー用レンズ用のバヨネットに嵌まるのである。

ミノルタ時代のレンズフードは三本爪のバヨネットが多かったのだが、ソニー時代になってからのαレンズは新規のものは概ね二本爪バヨネットに変更されている。正確に言えばミノルタ時代の最末期からその傾向はあったようだが、ソニーになってから決定的になったと言えるだろう。(例を挙げると、35/1.4Gはミノルタ時代は三本爪だったがソニーでは二本爪に変わっている。70-200Gなどはミノルタ時代最末期のSSMタイプからは二本爪になっていた)

この二本爪と三本爪の違いだが、三本爪は取り付け角度が小さくて済むが取り付け間違いの起こりうる構造(間違えると蹴られる)なのに対し、二本爪はそれが起こらない。故に最近は二本爪にしているのだと思われる。

さて、このフードが使えるレンズだが、検証した限りでは次の三つのレンズには正逆位置共に物理的に取り付けが可能で、おそらくは蹴られも起きていないということが確認出来ている。

 ・SONY Distagon T* 24mm F2 ZA SSM
 ・SONY Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM
 ・SONY Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA(これは店頭のレンズで試しただけ)

具体的に言うとフィルタ径が72mmの二本爪バヨネットならだいたい嵌まるのではないかということである。ただ、嵌まり具合については各レンズによって若干異なる。

50/1.4ZAは取り付け時のクリック感はあるがやや緩いので、衝撃などがあると外れてしまう懸念がある。遮光効果も標準の筒型フードからしたら(広角用なので当たり前だが)やや落ちると思われる。ただ、10万もする高級レンズの割には付属のフードが何の芸も無い筒型フードで、内側の植毛などもないくせに部品扱いで4000円以上するということを考えれば、こちらのフードも代用品として十分に検討の価値はあると言えよう。

24/2ZAはフィルタ枠側にクリック用のスチールボールが埋め込まれているのでこちらの方が装着感はしっかりしている。標準のフードよりも若干だけ深いようだが確認した限りでは蹴られは出ていない。こちらも部品扱いで取り寄せると結構高額なフードなので、紛失時の代替案としてなかなか良いと思われる。

なにしろこのEW-78B2というフードは数が出ているので中古でも豊富に見付かる。先日購入した際は450円だったが、おそらく1000円も出せばそこそこ程度の良いモノが見付かるのではないだろうか。

キヤノンのフード命名規則からすれば、おそらくES-78(標準用)やET-78(望遠用)にも使用出来るものがあるのではないと思われるが、中古フードを見かけないので未だに試してはいない。

もしかしたら誰かの役に立つかもしれないお役立ち情報でした。

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SONY α900 + SONY Planar 50mm F1.4 ZA SSM(with canon EW-78B2)

レンズについて[第11回] : TAMRON SP AF 14mm F2.8 Aspherical IF

ミノルタ時代、αマウントの純正最広角レンズは単焦点であれば20mm(魚眼を入れれば16mmフィッシュアイ)であり、ズームであれば前回紹介した17-35mmのワイド端の17mmであった。この状況はソニーになってもあまり変わらず、相変わらず16-35ZAの16mmが純正最広角である。

ではサードパーティ製レンズまで広げるとどうなるかというと、ここには言わずと知れたSIGMA 12-24mmが輝いており、これがαマウントで手に入る最広角ズームレンズということになる。というか、最近になってキヤノンEF 11-24mm F4L USMが出るまではどのマウントであってもあれが最広角ズームレンズであった。

では、αマウントにおいて社外も含めて「単焦点で」最広角レンズは何か? その答えが、今回取り上げるTAMRON SP AF 14mm F2.8Aspherical [IF]である。(同じ14mm F2.8のスペックはシグマにもあるけど) そういやこのコーナーでサードパーティー取り上げるの初めてだったりする。

超広角、それも単焦点となると、数あるレンズの中でもかなりマニアックな部類に入る。このレンズはタムロンの中では高性能シリーズに属するSPレンズだが、実売価格がどうだったかはともかく、当時のサードパーティーのレンズとしてはかなり強気のスペックと定価だったようだ。

※話は脇道に逸れるが、いつものケンコートキナーコニカミノルタレンズスペックリストといい、タムロンの旧製品情報といい、基本スペックだけでもいいのでweb上に残してくれているメーカーはとてもありがたい。この辺が最悪なのがシグマで、例えばEX銘の有無で光学系や外装すらガラッと変わっているものあるのに、まるで旧製品は忘れたい過去であったかのように一切の情報がない。このため中古でレンズを見かけてもどのような素性か公式な手がかりがweb上にはない。最近のモデルについては少し掲載されるようになったが、少し前はこれすらなかった覚えがある。

もちろんメーカーは新品売ってナンボなので、サポート以外の旧製品情報など必要なしというのもそれはそれで姿勢として有りだとは思うが、個人的には寂しいものである。

さて、例によってこれもハードオフでジャンク棚に並んでいるのを購入したものだが、このレンズに関してはジャンクとしてはそこそこの値段を支払ってしまった。だが、αマウントのこのレンズはその後も年に一度見かけるか見かけないかくらいのタマ数なので、探しても出てこないという意味では買える時に買うのは悪い判断ではなかったかなと思っている。

ちなみに購入時は専用の革製かぶせキャップがなかった。このまま持ち歩くのは怖すぎるし、かといって汎用キャップは使えそうにないのでダメ元でタムロンに問い合わせたところ、なんとまだ在庫があったので結局追加で購入した。かぶせて紐で縛るタイプなので速写性はよくないが仕方がない。

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α900TAMRON SP AF 14mm F2.8Aspherical [IF]

このレンズの見た目の特徴は一目で分かるその突出した前玉である。超広角レンズはどれも一目見ただけで「超広角!」と主張してくるスタイルのものが多いが、このレンズもそうしたレンズの一つだ。フードは超広角レンズとしてはわりと一般的な金属製の花形フードで、鏡筒一体型であり取り外すことは出来ない。これを取り外したらそれこそ前玉を守るものは何もないので、逆に固定式の方がありがたいくらいではある……。

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このせいで当然ながらねじ込み式のフィルターは使用出来ない。レンズ後玉側にシートフィルターのホルダーが付いているのて、なんらかのフィルターが必要であればそこに差し込むようになっている。

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ピントリングは前後スライド式で、AF/MFを瞬時に切り替えられるようになっているが、αマウントの場合はこのポジションにしてもボディ側フォーカスクラッチが切れないのでそれらのクラッチを切るボタンと併用することになる。そうしたキーのあるボディであればMFも操作自体はそこそこ快適だが、このような超広角はAFでバシバシ撮るのが個人的には楽でよいかと思う。AF時ピントリング非回転(フリーになる)は当時の純正レンズ以上であり鏡筒が短いこのレンズには必須の仕様と言えるだろう。

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吸い込まれそうな前玉である。フードが固定式なこともあって拭き掃除はしにくいが、実際恐くてブロワーでホコリを飛ばすくらいしか出来ない。ちなみにこの時期のタムロンレンズのお約束として、距離窓部分に貼ってある銘版シールはこの個体でもやっぱり浮き気味である。あまり耐久性のない粘着剤を使ってしまったようで、同時期の同社マクロレンズなどでも中古サイトで「銘版浮きアリ」といった注釈を見かける。

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さて、このレンズであるがタムロンではもうとっくに生産終了となっているが、実はよく似た光学系のレンズが某社にあり、しかもまだ現役で販売されている。このため、Lightroom等でそのレンズのプロファイルを当てると歪曲なんかが良い具合で補正されるので今回の作例はだいぶそれに頼っている。また、今回の作例についてはやや誇張気味なものも含めて、いつもよりもかなり現像で弄っているものが多い。

なにせデジタル時代以前の超広角である、正直に言って無理をしていると思われる部分は多々ある。ちょっとでも強い光源があればどこかしらにゴーストやフレアが出るし、下手すれば太陽が画面外でもちょっとした反射を拾うことすらある。そしてそれらも今時ちょっとないくらい見事な五角形だったりする。(このレンズはAFレンズとしては今時珍しい五枚羽根絞り) 一昔前の超広角レンズということで、たとえ直射日光がなかったとしても何らかのゴーストは出て当然というくらいの気持ちで付き合うべきだろう。なにせこの画角ではハレ切りしようとしたら指が写ったなんて笑い話も十分あり得る。やればやったでもちろん効果はあるが、神経質になりすぎるといつまで経っても撮れないので程々で諦める気持ちも肝心である。

歪曲はいわゆる陣笠歪曲というやつで、周辺部に直線を持ってくると真ん中からへの字に曲がる。最近の超広角レンズでは後補正のし易さから素直な樽形歪曲を残すのがトレンドのようなので、そこから見ると一種異様な写りである。

だが、これも歪み補正など存在しないフィルムカメラの時代になるべく光学的に歪みを補正した結果だと思えば仕方のない話である。強い樽形歪曲を残すよりも(完全にまっすぐには出来ないとしても)可能な限り補正するとなれば当時としてはこちらの選択が正解であろう。

もちろん周辺の流れもあるし光量も落ちる。流れについては絞ればマシにはなるが全域ガチガチにシャープになるというほどでもない。その辺りの許容範囲は人にもよるだろう。

というわけで、減点法でレンズを採点するのであればケチの付けようはいくらでもある。しかし、このレンズの楽しみはそうした減点法では味わえないところにある。とにかく視覚を超えたパースに驚きながら段々この画角を我が眼としていく、その瞬間にこそこのレンズを使う楽しみがあるのだ。

この使い方からすると、変に逃げ道(?)がない分単焦点の方がモアベターであるし、明るくて寄れるというのもプラスである。思いの外寄れるので前玉の激突に気をつけよう。

なお、超広角レンズ一般の決まり事として、パースがつきやすいので水平垂直およびカメラの向きには普段以上に気を使う必要がある。ピシッとシンメトリー構図を撮りたいのであれば、落ち着いて深呼吸してからでも遅くはないだろう。パースのせいであとから傾き補正をしてもいまいち不自然になったりするのだ。

作例の一部で感じて頂けると思うが、このレンズ青空を撮ると妙に映える。とにかく実際の天気以上にブルー系の色が綺麗なのである。故に空の露出を優先して、暗部はあとからRAWで起こすくらいの使い方もまた一つの手ではないかと思う。超広角というとHDRみたいな勝手なイメージもあるし。

……不自然で違和感のある強烈なパースも、慣れてくるとふとした瞬間に、突然コレで世界中全てを撮れるかのように感じることがある。その瞬間は後から考えたら単なる気のせいかもしれないのだけれど、そうした高揚感というか、これを使いこなしているんだ! という実感が湧く、ハイにさせてくれるレンズなのだ。

たまにはこんなのもいいでしょ?

レンズについて[第10回] : MINOLTA AF ZOOM 17-35mm F3.5 G

前回が標準ズームの話だったから……というわけでもないが、今回取り上げるのは、前回同様ミノルタ時代の高級レンズシリーズであったGレンズの広角側を担うレンズ、AF ZOOM 17-35mm F3.5 Gである。

このレンズ、ポジション的にはいわゆる大三元レンズの一角を担うレンズなのだが、開放値はF3.5に抑えられている。なんでも、設計者がF2.8での描写に納得が出来なかったのでこの開放値に落ち着いた……という逸話があるそうだ。結果としてこの半段のおかげ(?)で広角の高級ズームとしては比較的小型で軽量という特徴がある。その他のスペックについてはいつものところを参照のこと。

実際、ソニー時代になってからの同等ポジションのレンズとしてはVario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSMが挙げられるが、広角側1mmの広さと半段の明るさの代償として、重さは約1.5倍近く増えているのである。(17-35G:600g 16-35ZA:860g いずれもカタログ値) 故に、αマウントの広角として、今敢えて17-35Gを選ぶというのも選択肢としては大いにアリだろう。

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α900 + AF ZOOM 17-35mm F3.5 G

ミノルタ(コニカミノルタ)時代の広角レンズとしては、他にAF ZOOM 20-35mm F3.5-4.5とAF ZOOM 17-35mm F2.8-4 (D)が存在し、直接スペックが競合するのは後者であるが、このズームはコニカミノルタになってからα-7 Digitalと同時に発表され、APS-Cサイズのデジタル一眼レフに不足する広角側を補う為に登場したようなレンズなので、実際に併売されていた期間は非常に短く、また例によって某社によく似たスペックのズームレンズが存在している(いた)。

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外見は当時のGズームレンズに準じたもので、金属製鏡筒を持ち、Gレンズを表す金のラインが入っている。鏡筒にはフォーカスホールドボタンが装備されており、ズームにより鏡筒は伸び縮みしないが、前玉は鏡筒内で前後するいわゆるプロテクター鏡筒タイプである。

ミノルタロゴの入った金属製フードが付属しており、写真には写っていないがレンズキャップも専用デザインである。こうした専用フード&キャップはGレンズでも他に類を見ないので、このレンズに対する力の入れようを感じるところである。

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なお、レンズキャップの径自体は77mmで昔ながらの外側につまみのあるキャップなので、フードを正位置で使用していると付け外しが非常に難しい。このため、現在は使い勝手の面からソニー製の内つまみタイプに交換して使っている。一応現在は絶版のGレンズロゴ入りを使っているのは密かなこだわりである。また、広角ズームなので仕方のないところではあるが、薄枠でないフィルターを使用すると蹴られることがある。現在はハクバの薄枠フィルターを使っているが、これは蹴られていないようだ。

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AF28-70Gの反省(?)が存分に活かされているのか、このレンズについてはAFの速度は爆速ではないもののそこそこ軽快、比較的小型軽量、最短撮影距離も単焦点並の全域0.3mと使い勝手の面でストレスを感じることは少ない。そこそこの幅が確保されたピントリングを見るとフォーカスクラッチくらいは欲しかったところだが、実際にミノルタのレンズにフォーカスクラッチが採用されたのはAF85/1.4(D)やAF100/2.8macro(D)の時代であることを考えると仕方ないのかもしれない。

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作例はいつものFlickrにて公開である。気が付いたら遠景が多かったが、先に述べた通りきちんと寄れるのでそういった使い方でもあまり不満は出ないと思われる。

描写については広角レンズで気になる歪曲収差が少なく、抑え気味の開放F値から開放からでも安心して使えるという印象である。フルサイズながらワイド端10mm台前半のズームレンズが多数登場している今となっては、17-35mmというズーム域は凡庸なものであるが、それでも20mm以下でのパースペクティブは広角ならではのものと言えよう。流石にカットによっては周囲が流れるが、解像度の低下はなだらかなのであまり不自然には感じない。

いずれ書こうと思っているが、別の広角レンズで撮影した際に感じた特定の色が強いなどといった傾向もなく、発色は他のミノルタのレンズと同様にナチュラルめの印象である。

私事になるが、このレンズは今は亡き大阪の某店から中古で購入した。当初はこのレンズを買うつもりはなく、その店からは通販でAF80-200/2.8(Gではなく初代の黒鏡筒モデル)を購入したのだが、このレンズの初陣として旅行に持っていったら絞りが粘ってしまっており、ドオーバーを連発してしまい返品することになった。そして、その代わりに購入したのがこの17-35Gだったのだ。

※17-35Gの話からは一時脱線するが、どうもこの80-200/2.8というスペックのレンズとはあまり相性が良くないようで、何度か痛い目を見ている。最初にこのクラスのレンズを購入したのはKマウント用のTokina AT-X 80-200mm F2.8だったのだが、これは購入後に落下品だったことが判明しAF不良から保証修理→売却と相成った。次に買ったのは茨城のHOで見かけたAマウント用SIGMAのAF 70-210mm F2.8(ZEN塗装モデル)だったのが、これは当初快調だったのだが旅行に持ち出した段になって突如カメラエラー(SIGMAではよくあること)が発生し、たまたま旅行先も茨城だったので旅程を変更して文句言いに行ってそのまま返品になった。三本目が先ほどの80-200mmである。なおこれらの経緯の後四本目に手に入れた70-200Gでは目立ったトラブルはない。

閑話休題

その後もこの店にはだいぶお世話になったのだが、最近になって店を畳んでしまった。お世話になった店が消えるのは悲しいものである。

さて、このレンズはGレンズとしてはかなり末期の発売であったことからか、中古であまり値段が落ちていない。値段だけで言うならば16-35ZAと変わらない値段が付いていることすらある。

現行の16-35ZAは大きくて重いし、社外品としてもこのクラスの選択肢は少ないが、先に述べた通りこのレンズの価値はハイエンドのレンズとしてはコンパクトなことにある。その代わりとしての開放F3.5なわけだが、 相対的に手ブレが目立ちにくい広角であり、感度も自在になったデジタル機において、半段暗いというのはそう大きなデメリットにはならないであろう。

いわゆる大三元(F2.8通し)と小三元(F4通し)の両方を揃えられるメーカーならともかく、当時のラインナップはそうではなかったわけだし、このスペックには「広角でそんなにボケ量が必要か?」「そんなに明るさが必要か?」「それらを高画質で叶えるために大きく重くなってもいいのか?」という問いが隠されているようにも思える。

ただ、デジタルカメラでの使用が考えられている設計ではないので、その辺りの限界点については各自の判断で……というところになるであろう。

ここから先は余談になるのだが、とかくカメラのレンズにおいては明るいことが正義であり、明るいレンズ≒高いレンズ≒良いレンズの時代が長く続いた。そしてその信仰は根強く残っており、下手すれば以前よりも一層強化されていると言えるだろう。

しかし、デジタル機においてレンズの肥大化が進んでいるのは周知の通りだし、手ブレ補正などのギミックや特殊硝子の多用もあり、レンズの値段は上がる一方である。それでも明るいレンズには絶大な支持が集まっている。

一方で実用感度はもはや桁が大きすぎてよくわからないところまで進んでもいる。かつての大口径レンズには感度が低いフィルムでも撮影範囲を広げるという大義名分があったとしても、現在ではその意味も既に薄くなっており、もはや明るいレンズというのは単にスペックの為のスペックになっている一面もあるだろう。

そういった意味では、高くてしかも半段暗いこのレンズが投げかけている問いというのは現代でも通用するのではないかと思うのだ。

α7購入顛末記

そういうわけで、前回記事の通り、α7を買ってしまった。

なお、このサイトでカメラが増える理由は一つしかない。今回も購入理由は例外に漏れず「安かったから」である。

最近は知人からも「もういい加減諦めてα7系買えよ」とさんざん煽られてはいたのだが、実のところα900の保証が切れる10月末まではカメラを買い足すつもりは一切なかった。これはα7R2のこともあるし、あるいは未だ見ぬ9番台のためでもあった。

しかし、そんな考えは仕事の空き時間に寄った某リサイクルショップで、ジャンク棚に並んでいたα7を見て脆くも崩れ去ることになる。

中堅以下のフィルムカメラと安ズームばかりが居並ぶ、どこにでもあるジャンク棚の中で何故か不相応にα7が並んでいたのだ。デジタルカメラがジャンク棚に並ぶこと自体珍しいのに、現行機がジャンク棚にあるというのはただ事ではない。

値札を見ると64,800円。正直今まで見たα7の中ではダントツに安い。一体何故? と思って但し書きを見ると理由はすぐにわかった。海外版モデルなのだ。α7に限らず、ソニーの海外版モデルは、言語設定で日本語だけが選べないようになっている。つまり、日本語では使えないカメラというわけだ。

ううむ、と思いつつも次の仕事の時間が迫っているので買わずに立ち去ったが、結局気になってしまい仕事が終わってから再訪することにした。幸か不幸かまだ売れていなかったので、ガラスケースから出してもらう。

外装には角に小アタリが二カ所。底面には線傷も入っている。キャップもないのでCMOSにはホコリがつき放題だがこれはまぁ仕方がない。底面の銘板(索尼公司)から察するにどうやら中国版モデルのようだ。ただ、海外版モデルは日本語以外の言語にすることは可能なので、とりあえず英語設定にしてあちこち弄ってみる。α900である程度メニューの作りは理解しているのでほぼ使えそうだなとの確信を得る。

製造は13年11月とあるのでほぼ初期ロットだろう。付属品はバッテリー×2に充電器といったところ。充電器自体は中国規格品のようだが日本のコンセントに刺さる形状だし、そもそも実質的にはmicroUSB端子なので他の充電器が使用出来るので問題なしとした。

外装をチェックしたところ、ホットシューのシューキャップが妙に硬い。なんとかグリグリやって外したが、外したシュー上には白く粉を吹いたような痕跡と、電子接点周辺に緑青が出ていた。これはもしや水没品? と思ったが、電池ボックス等には特にそのような痕跡もなく、ファインダーも問題なく見えて切り替わる。とすると汗か何かだろうか、どちらにせよ接点への緑青はちょっと頂けない。

この件を店員に伝え値引きは出来ないかと問うと、消費税分カットの6万円ではどうかとのこと。普段の使い方を考えるに、このシュー端子に何か付ける可能性があるとしたらストロボだけだし、miシュー対応のストロボは一つしか持っていない。最悪それが動かなかったとしてもα900で使えばいいだけの話である。

……というわけで、水没品という疑念は捨てきれないが、ここは6万で現行機が買えるロマンを選ぶことにした。お買い上げである。

帰ってきてからアルコールで簡単にホットシュー部を清掃してHVL-F60Mを取り付けてみたが、特に問題なく通信して発光しているように見えた。超トップヘビーになるのでこのまま使うかはともかく、使えるというのは非常に心強い。つまり、今のところは正常品とみて良いようだ。(ただしレンズが一本もないのでちゃんと写るかどうかはまだ分からない。店頭では動いてたように見えたけど)

こうして、またカメラが増えてしまったのだった。

……いくらα7R2は高くて買えないといっても、まさかこうなるとは、である。